ドギョムだって時々は、物凄くヒョンっぽいことをしたくなることがある。
しかし宿舎の中にも楽屋の中にも、弟らしい弟がいない。
1コ下のスングァンもバーノンも、可愛い弟ではあるが、いつの間にかドギョムよりしっかりしてるというか、賢いというか、ちゃっかりしてるというか。
気づけば助けて貰ったりフォローして貰ったりすることの方が多い。物凄い愛おしいし大好きな弟たちだけれども、ヒョンっぽいことをしたい時には不向きだったりする。
唯一のマンネのディノが、長らくドギョムにとってはちゃんとした弟だったというのに、成人を迎えてからこっち、大人な男を目指してるのか、弟扱いはまだしも、可愛がろうとすると微妙な反応をするようになったし、大分後からカトクで「ヒョン、あぁいうことは、人前では言わないでよ」とか注意されるに至っては、なかなかヒョンっぽいこともできない。
それに弟たちは、ドギョムがいつだって財布を持ってこないとか、まるでケチみたいなことを言う。言っておくけど、財布は持っている。ただタイミングとかがあるし、何よりドギョムの上にはたくさんのヒョンがいて、ドギョムだって財布持ってても出すタイミングがそれでなくてもないってだけで......。
本当は弟たちとご飯を食べた後に、支払いはすませといたから......とかだって、やってみたい。ただそれをするにはその場を楽しみすぎてしまうドギョムには不向きで、気づけばもう誰かが先にそれをやってしまってるだけのこと。
やっぱり人数が多いから......。
ということで最近ドギョムは、新しい新社屋の中で会う年下のグループの子たちを見つけると、ニコヤカに挨拶しつつ近づいていく。謎に最初は丁寧な感じで、相手を逆に緊張させているけれど、気づいてないのは本人だけ。
本当はコーヒーでもカッコよく驕ってあげたいけれど、新社屋には勝手にコーヒーが入れられる場所がある。しょうがないからドギョムはそこで、後輩たちや後輩のマネヒョンたちに、親切にコーヒーを入れてあげる。
当然後輩たちも後輩のマネヒョンたちも、「いやいやいやいや」「そんなそんなそんな」と謙遜もするし、コーヒーが飲みたい訳でもないのに「自分たちでやりますから」と必死になっているけれど、ドギョムが頑張ってコーヒーを入れるもんだから、きっと有難迷惑とはこういうことを言うんだろう............っていう感じの状態だった。
なんでかボタンを押すだけなのに、ドギョムの入れたコーヒーは謎に薄い時もあれば粉っぽい時もあったから特に......。
苦肉の策として編み出されたのが、「ジョンハンさんすみません。今、7階休憩室で、ソクさんがヒョンしてるって連絡入りました」とマネヒョンを通して連絡が寄こされるようになったこと。
当然のように回収に向かうジョンハンにしてみれば偉い迷惑だが、他のグループに迷惑をかけ続ける訳にも行かないからしょうがない。
そんな日は慌てたようにスングァンもバーノンもディノも、ドギョムのもとに「ヒョン」と声を掛けにいく............。
そうするとドギョムは嬉しそうに笑う。
あちこちでそうやって笑うんだろう。決してどこからも苦情は入って来ないから。
まぁでも「コーヒー、どうやって入れても不味いですよね」とか後輩たちに言われるようになったら、ドギョムは可愛い弟を探す旅にでるのかもしれないけれど............。
The END
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