ホシの運転する車が事務所に辿り着いたのは、皆から送れること30分後ぐらい。
先に出たジョシュアとジュンとディエイトはもういなかったけれど、それ以外のメンバーは待っていてくれた。
簡単に全員で最後の撮影をして、それぞれ移動車に乗り込んだはずなのに、普段の癖なのかなんなのか、そこにはボカチの面々が揃ってた。まぁジョシュアはいなかったけど。
「いや、俺、今回一番ポッポしたかも」
車の中で、そんなことを言い出したのはドギョムで..................。
他の移動車では皆疲れて、ちょっとの移動だというのに全員が瞬殺で寝てたというのに、なんでかそのドギョムの一言に素早く反応したのはウジで、やっぱりボカチの移動車は騒がしかった。
「何が一番? 回数? 人数? それとも質?」
「なんだよ質ってヒョン。でも、どれも俺でしょ? 今回の一番は」
ドギョムが笑いながらも「俺が一番だって」って言うけれど、「いやお前だってホシ以外の誰とした? 人数なら俺が一番だわ」とウジが言い出した。
まぁ思い出せば、そうかもしれない。
通りがかりにジュンが、なんでかウジの頭にポッポしてた。
なんだか普段から顔がいいのに驚くほどにカッコよく、なんだそりゃって感じ。しかもそれを見てたのか、「ヒョン、俺もしていい?」って律儀にディノがウジに許可を取っていて、通りがかりのポッポを練習させてもらってた。当然のようにクプスもそれをやってのけ、なんでかディノに自慢顔を見せてもいたっけ。
酔っ払いたち相手に何を言っても無駄だと思ったのか、ウジはそんな仲間たちを気にせず肉を食べたりしていたけれど......。
ウジがなんでか指折り数えだし、「だって俺、片手じゃ足りないけど?」って言えば、ドギョムがなんでか悔しそうに、「じゃぁ人数は譲るよ」と。
「でもでもドギョマ。回数は俺かも」
ドギョムが笑いながらも、「回数と質は俺が一番だって」って言うのに、「回数は俺かも」とジョンハンが言い出した。
「は? ヒョン何言ってんの?」とドギョムがツッコんだけど、ジョンハンは意味深に笑うだけ。それだけで全員を納得させたジョンハンだった。
誰も「誰と?」とか、「いつ?」とか、「何回?」とか聞きもせず、ドギョムはまたもや悔しそうに、「じゃぁ回数は譲るよ」と。
「いやでもヒョンなんで、回数なの? ヒョンなら絶対『質』を取ると思ってたけど」
それは聞かなくてもいいんじゃないかってことをドギョムが普通に聞いていたけど、「だって俺ら、カメラはなかったけど、二人部屋じゃなかったし」ってこれまた口にしなくてもいいんじゃないかってことをジョンハンが普通に答えてて、当然のように全員がその言葉をスルーした............。
結局ドギョムに残った一番は「質」しかなかったけれど、酔っ払いのポッポに質も何もあったもんじゃない......。
それでも最後に残った「質」は手放したくなかったドギョムだったのに、なんでか「ヒョン、悪いけど、質なら俺が一番かも」とか言い出したのはスングァンで......。
「は? 誰と? いつ? どこで? どんな?」
助手席から思いっきり振り返ったのはジョンハンで、シートベルトさえしてなければ後部座席まで移ってきそうな勢いだった。
ウジは驚いて、口は開けど声は出ずって感じで固まっていた。まさかのスングァンからの「質なら俺が一番かも」なんて言葉が出るとは思ってなかったからだろう。
当然ドギョムだって「え? じゃぁ俺一番何もないの?」とちょっと悲しそうで、「俺、たくさんホシヒョンにポッポされたのに」と凹みかけてすらいた。いやでもしかし、問題はもうそこじゃなくて。
「ボノニじゃないだろ? それなら普通の顔して同じ車になんて乗れないはずだし」
冷静に分析したのはジョンハンで、「ボノニの訳ないじゃん」とスングァンも慌ててた。
「は? じゃぁスニョイと?」
それ以外なら、同じベッドで寝たホシしか思いつかないと、これまた瞬時に答えを見つけたのはウジで、思わずホシのことを本名呼び。
「あのホシヒョンと、質?」
疑わしいとばかりにドギョムが驚いていたけれど、なんでかスングァンがちょっと照れたように笑ってて、車内には微妙な沈黙が............。
宿舎だってそれほど遠くないから、そんな微妙な空気のままについてしまって、珍しく一番にウジが車から降りてった。
いや、メンバーとのキスは浮気じゃないんじゃないの......とは思うものの、残念ながらその話題を知るメンバーはそこにはいなかったから......。スングァンは多分覚えてないだろうし......。
The END
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