妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

けん玉ってなんだよ

 

ジョシュアがこの後のスケジュールの説明を聞きながら練習室に入ると、そこにはエスクプスとジョンハン以外の11人が揃っていた。
年上2人がいないから、全てはジョシュアの肩にかかっている......なんてことは、当然ない。
一応副副リーダーらしいが、そしてさっきから事務所の新人さんなのか、色んなスケジュールをジョシュアに説明してくれるスタッフもいるにはいたけれど、そんなの俺に言われても......な、ジョシュアだった。
自慢ではないが、セブチの95ラインは役には立たない。周知の事実だ。世界中のカラットたちだってそれは判っているはずなのに。
「シュアヒョン、何か挨拶する?」
ホシがそんなジョシュアと事務所スタッフさんに気を使ってか、そんなことを言ってきたけれど、当然ジョシュアは首を降ってパスってやった。
エスクプスとジョンハンの2人が抜けての、それでもって初の紅白だなんてちょっと気は重いけれど、それでもいつも通り練習していつも通り頑張って、なんなら96ラインの弟たちの言うままに流されていればなんとかなる......はずだったのに。
練習室の隅っこで、なにやらゴソゴソやってるバーノンを見つけた時に、ちょっとだけ嫌な予感はした。

東京で買ったリモコンのオモチャを練習室で走らせて、事務所のヌナたちに怒られてたのも懐かしいけれど、新しいパッケージを開けたと思ったら、そこから出てきたのはけん玉だった。赤い球がついた奴。
「ボノナ、お前、何してんの?」
「うん、俺もよく判んないけど、これで世界を目指すんだって」
「..................は?」
ジョシュアが何も理解できずにいる間にも、バーノンはけん玉のヒモを伸ばす。まっすぐに。ピンと。それからエイヤって玉を空中に浮かせて、当然ながらそれをケン玉の本体の玉の形状にあわせて引っ込んでる部分で受けようとする。
まぁ失敗してたけど。
けん玉なので、使い方なんてそんなもんだ。特別楽しいもんでもない。
そうこうしてる間にも、ホシが「一旦集合~」とか言ったのに、歩き始めたジョシュアの後ろで、バーノンはけん玉を続けてた。
いつもなら誰よりも先にスングァンがそんなバーノンに声をかけるはずだし、ミンギュだってバーノンのことはよく見てるはずで。なのにそんな2人が何も言わない。
頭の中で???が飛び交っていたけれど、とりあえずジョシュアは集合した。
そして「バーノン以外は」っていう、謎な練習スケジュールを聞く。
「え? ボノニは?」
当然ながらそう聞けば、ウォヌが「ボノニはけん玉で世界を目指すから」という、これまたさっきのバーノンとほぼ同じ言葉が返された。それとともに、ウォヌから手渡された1枚の紙には、確かにけん玉で世界を目指すって企画が書かれてた。
「は? なに? 誰これ? なにこれ? なんで年末にギネスに挑戦するの? いや勝手にしてくれていいけど、なんでうちのボノニが参加するの? え? 何番目に?」
頭がパニクったかのようなジョシュアの怒涛の言葉に、思わず「シュアヒョン、優しい感じの雰囲気が霧散してるよ」とドギョムが横から言ってきたけれど、優しさを意識してる場合ではない。
いやそれよりも、なんでこんな状況なのにスングァンが大人しいんだと聞いて見れば、ジョシュアが来るまでの小一時間、もっとスングァンは騒がしかったらしい。
「っていうかこのおっさん誰だよ」とまで口にして、ディノに怒られていたとか。

年末にギネスに挑戦するのも謎ながら、けん玉ってのも謎ながら、参加する人数も謎ながら、それにバーノンが巻き込まれるのも謎だった。
でも驚きが去ってみればちょっとだけ落ち着いて、「まぁ記念にはなるよな。謎すぎるけど」と言ったのに、「シュアヒョンそんなこと言ってる場合じゃないと思うけど」ってボソって呟いたのはウジで、「周りはなんでも緻密にこなす日本人なんだよ。もしかしたら全員プロ級の人が参加するのかもしれないし、ボノニだけが失敗する未来が今のところ見えるけど、誰か知らないおじさんに、日本語で謝りにいくのシュアヒョンだからね。副副だし」ときた............。

そりゃそうだ。95ラインは役には立たないなんて、カラットたちは知ってても、日本の歌手の方々まで知ってるはずもない。上2人がいない今、ジョシュアが弟たちの代わりに頭を下げる必要があるかもしれない。
ほぼ日本語担当と言えるジョンハンが不参加だってのに......。
「え、嘘だろ」
それからジョシュアは練習しつつも、端っこで全然上達しないバーノンのけん玉を見るたびにそう呟いた。
「いやだから、けん玉ってなんだよッ」
時折思い出したかのようにスングァンもそう叫ぶ。
「俺もやりたい」
謎にやりたがるのはホシで、「邪魔するなって」とウォヌやジュンに止められていた。
「ディエイトは? ディエイトの方が器用だろ? ほら、けん玉じゃなくて、ヌンチャクしたらいいじゃん」
なんでかミンギュが種目を変えようとしはじめて、「そんなの無理に決まってるって」とディノに諫められている。

いや俺ら、踊るだけでも結構真剣に大変だし。スケジュールは詰まってるし。はじめての紅白で失敗したくないのに、なんでけん玉? いやなにボノニは素直に練習してんの? いやでも一回も成功してないじゃん......。
踊りながらもあちこちから声があがる。
ジョシュアはとりあえず見知らぬおじさんに、日本語で謝罪をする練習をはじめることにした。けん玉ってなんだよ......って思いながら............。

The END
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