いつもセブチのメンバーの誕生日ケーキを用意してくれるスタッフヌナと、会社のヒョンが結婚することになって、ディノは大忙しだった。
結婚式のあれやこれやをプランニングするところから、参加することになったから。
きっかけは、忙しいからもう写真だけでと言ってた当事者2人の前で、「そんなのダメだよ絶対」ってディノが言ったから。
それから有志で集まって、色々準備することになって、当然ながら仕事もしつつ、ダンスの練習もしつつ、個人的に取りたい映像の準備もしつつ......だったから時間はなかったけれど、それでもディノはディノなりに頑張っていた。
でもウェディングケーキ1つとっても、悩むことは多かったけど。
「気持ちなんだし、そこまで悩むことないだろ」
そう言ったのはミンギュで、あれこれと色んなものを見ては時間ばかりかけているディノをフォローしたつもりだろうが、「気持ちだからこそ悩むんじゃん」とディノが言えばなるほどって頷いてはいたものの、手伝う素振りは見せなかった。
95ラインのヒョンたちは、キッパリ金は出すという。
96ラインのヒョンたちは、役に立たないけど応援はするという。
97ラインのヒョンたちは、時折近づいてきてワイワイ一緒に騒いでくれるけど飽きたら去っていく。時々邪魔だけど時々はありがたい。
98ラインのバーノンはふ〜んって感じ。でもってスングァンは、手伝ってくれる雰囲気は醸し出しつつも、結局は「俺はこれがいい」と自分のものを選び出すからやっぱり役には立たなかった。
ディノはだからちょっとだけ焦ってた。
ワールドツアー中だし、95ラインのヒョンたちがいなくなってしまう前にはっていう仕事も多い。それなのに花より青春があって......。
スケジュールなんて元からギチギチなのに、どうやってそこに空きを作ったのかは世界七不思議なぐらい謎だった。
だからとにかく忙しくて、でも考えることも多くて、そうしたらパフォチの中で1人だけ遅れを取ったりして......。
ホシもジュンもディエイトも、文句なんて一言も言わない。でも当然ディノは少しだけ自分が情けなくて落ち込んだ。
ちょっと前までなら、そんなディノのことは絶対に放っておかなかったヒョンたちだったのに、最近では放置されることの方が多い。
それぐらいが丁度いいとディノだって思ってたはずだけど、ちょっとだけ、本当にちょっとだけ、今日はもうしんどいって日があっただけ。
「酷いよヒョンたち。もうちょっと真剣に手伝ってくれてもいいじゃん。俺の結婚式だと思ってもうちょっと助けてよ」
ちょっと不貞腐れたような感じで口にしたディノは、それでヒョンたちが少しだけ積極的に手伝ってくれたらありがたい程度だったっていうのに......。
全体的に積極的にはなった。でも、手伝いになったかというと、それは微妙だった。
何せ「その結婚は俺反対」とか真剣な顔して手をあげて発言したウォヌがいたりしたから......。
ディノが意味も理解できずに「は?」って言ってる間にも、「ヤー、なんでお前の結婚式が先なんだよ。一番は俺らだろうが」と何故かエスクプスが真剣な顔でそう言い出して、「ディノのアッパの次でいいから、俺、ディノとバージンロード歩きたいかも」とジョシュアが言い出して、「シュアヒョン、バージンロードは花嫁さんじゃん」と珍しくまともなことを言ったホシに「あ? そんなの誰が決めたんだよ」とジョシュアが反論して。
「ルールや常識は破るためにある」とか、堂々と言ったのは確かジュンで。「絶対ディノの方が美人だと思う」とか、親バカならぬ兄バカな発言をしたのはミンギュで。
「え? じゃぁ俺ら余興やる必要ないじゃん。ディノの結婚式なら身内だし」と、どうやら余興で悩んでたらしいドギョムはそう言って安心したと笑ってた。
そこら辺でディノは、自分が口にした言葉が不味かったことに気がついたけど、何も聞いてないバーノンと、全部聞いてたけど素知らぬ顔をしてるウジ以外の全員が、何かしらの発言をして何かしらのアクションをして、結局のところディノの助けには全然なってなかった。
「衣装を揃えようよ」って言ったのはディエイトで、ディノだけ白で、後は全員黒でって、なんでか衣装デザインを簡単に書いた紙を皆んなに見せ始めた。
当然そんな中でも、「でも俺は反対、その結婚は」と、なんでか結婚を認めてくれないウォヌがいて、「いや、俺の結婚じゃないから。あれはものの例えというか、それくらい親身になってよってことだから。衣装なんて揃えないから。ヒョンたち、ちょっと、聞いてる?」ってディノが言っても誰も聞いてなかった。
きっと鼻で笑ってるだろうってスングァンのことを見たって、そんなスングァンですら結構真剣な顔で、「ご両親への手紙コーナーで、12人分のヒョンたちへの手紙もやってくれるかなぁ。俺のとこなんて、ちょびっとになりそうなんだけど」って心配してた。
いや、12人分のヒョンたちへの手紙コーナーなんて絶対やらないと思ったけれど、話はもっとそれていきそうなので黙ってたけど......。
いつもならもっとトンチキなことを言って場をめちゃくちゃにするユンジョンハンが静かで、それはそれで不気味だからと見てみれば、なんでか胃の辺りを押さえて「ダメだ。ディノの結婚式なんて、考えるだけで緊張する」とか真剣に言っていた。
それから黙ってそんな話をフル無視してたはずのウジが、ディノの結婚式用にと曲をつくりはじめていたけれど、当然ディノはそれを知らなかった。
そして結局のところ、ディノを助けてくれたのはマネヒョンやらスタッフヌナたちで、ただただ騒がしかったセブチの面々はほとんど役には立たなかった。
数日たってもなんでかウォヌだけは「俺は反対」って言い続けてたし............。
The END