1人での仕事はあれど、事務所の中での撮影だったり、見知ったスタッフさんやマネヒョンや、メイクのヌナに囲まれてたら、全然1人な気はしない。
まだ子どもだったころ、ディノにとってそれは当たり前で、まだまだ自分が実力不足だからって思ってた。
でも最近、気づいたことがある。
12人もヒョンがいるから、どうしたってしょうがないけど、それにしても皆過保護だってことに。
ふざけてコーヒー買って来いとか、何かを取ってこいとか、カメラが回ってたら言われることはあっても、リアルではほとんどないし、本気でディノが動けば当然のように誰かがついてくる。そして当たり前のように支払ってもくれるから、ディノは結構お金持ちだと思う。
欲しいものは買って貰えるし、欲しくないものだって買って貰える。誕生日プレゼントという年に一度だけのスペシャルな感じは当然ながら、全然普通の日にも、「それやるよ」って感じの簡単な言い方でホイッと渡されるものも、結構な代物だったりする。
時々は本気で1人の仕事だってあるけど、1日もかからない仕事の現場にヒョンたちが遊びに来てくれたりもするから、やっぱりディノが1人ってこともない。
そんなある日、会社の中で「ディノだけ？ 本気で？」って言ってる誰かの声が聞こえてきた。
マネヒョンの、「いや無理無理無理無理」って言葉も聞こえてきて、ディノは何の仕事かも判らないまま、「無理じゃない無理じゃない無理じゃないよ。俺だって1人でも全然大丈夫だよ」って言ったら、まさかのフランス行きだった............。
自慢じゃないけど、1人で飛行機には乗ったことがない。絶対に誰かヒョンがいた。
Wi-Fiの担当になったことはあったけど、それだって1人で設定したことはない。いつだって隣りに誰かヒョンがいて、設定方法を教えてくれたはず。
ホテルだって、1人部屋だったとしても、隔離された時以外は絶対誰かの部屋に集まってご飯を食べていたのに。
ちょっとだけディノはパニックになったけど、それでも密かに覚悟を決めていたのに、蓋を開けてみればジョンハンが一緒だった。
実はウォヌだって、仕事の都合さえつけば一緒に行きたかったと言っていたし、ブソクスンさえなければ俺らも行ったのにと、ホシもドギョムもスングァンも言ってた。
ディノは知らなかったけど、『ディノ、1人、仕事、フランス』っていう謎に単語だけの内容がカトクを回ったらしい。
当然ディノ以外の全員が、「無理無理無理無理無理無理」となったらしい。
きっとディノ1人だけだったなら、仕事は流れていたかもしれない。それぐらいセブチのヒョンたちは、マンネなディノに過保護だったりするけれど、ディノはそんなこととは露知らず。
「ハニヒョンが一緒なら、怖いものなしだね」って喜んでいた。
でもなんでか「フランスって何語だったっけ？」とかも言っていたから、やっぱり1人では、無理だったかもしれない。
The END
1212moji
