ある日ジョシュアは道端で、「ざんねん」を拾ってしまった。
まだ寒かった頃のこと。
落ちてるのは少し前から判ってた。
他の人たちは気づいてないのか無視してるのか、「ざんねん」を見向きもせずに通り過ぎていく。
ジョシュアだって無視して通り過ぎようと思ったのに、ついつい「ざんねん」を拾ってしまったのは、なんだかポツンと佇んでるその姿に、弟たちの誰かを重ねたからかもしれない。
っていうのに、「ぅわぁ、シュアヒョンなんで「ざんねん」なんて持ってんの。俺に近づかないでよ」と言ってミンギュが逃げていく。
時々自分は「うっかり」にまとわりつかれているくせに。
まぁでもそのせいで、自分が頼んだ料理だけ出てくるのが遅かったり、貰うプレゼントのリボンは曲がっていたり、サインを書かなきゃいけないのにジョシュアのペンだけ途中で出なくなったり。
多少「ざんねん」なことは続いたけれど、ジョシュアは笑ってやり過ごしてた。
まぁ母親との旅行では「ざんねん」すぎることが次々と起きたけど、それでも楽しく暮らしてたってのに、エスクプスがツカツカ近づいてきたと思ったら、「ヤー、シュアや、お前そろそろそれ止めれ」とか言って、「ざんねん」を払い落としてしまった。
「あ」
「お前が優しくしすぎるから、増長しはじめてただろ」
最後のコンサートで、大雨が過ぎたからかもしれない。
そう思ってたら、目の前を「雨男マックス」にまとわりつかれたホシが通り過ぎてったけど。
でも「ざんねん」がいたって、いつも以上に楽しかった今年。
「あ? お前「ざんねん」は?」
目ざといジョンハンがすぐに気づいて聞いてきた。
エスクプスに払い落とされたって言ったら、なんでか「チッ」って舌打ちされたけど。それもまた楽しくて、思わず笑ってしまった。
「お前は「ざんねん」ぐらいで丁度いいのに」とジョンハンは言うけれど、「ざんねん」がいなくなったからか、日本に向かう飛行機では今年一番居心地が良く、無くしたと思ってたものをカバンの中で見つけ、出されたワインは自分が生まれた年のものだった。
The END
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