誕生日になった瞬間に、グループのカトクではおめでとうの嵐で、帰ってきたら渡すプレゼントって言いながら、皆が写真をあげてくれた。中身は帰ってからの秘密で、宿舎のディエイトの部屋のベッドの上に増えて行くプレゼントの写真に、思わず泣かされそうになったけど、泣かなかった。
プレゼントは帰ってからだけど、美味いもんを食って飲めって、エスクプスはなんでかカトクで送金してくれたけど、お金なら自分だって持ってるよって言えば、俺の金で飲んで食べて欲しいんだってと言うから、やっぱり泣かされそうになった。
でも泣かなかったけど。
弟たちは会いたいといつも言ってくれるし、ヒョンたちは健康を気遣ってくれる。
それからチングたちは、お前なら大丈夫って笑ってくれる。
韓国に渡って事務所に所属してから考えると、1人きりの誕生日ははじめてだった。
家族と久しぶりに会えた喜びだって本物で、母国での仕事三昧な日々も嬉しくて、毎日のように届くカトクに、テレビ電話に、weverseを通してのやりとりに、寂しいなんて言ってる時間もないのに、誕生日のvliveも終わって1人になってみれば、1人だってことにちょっとだけしみじみした。
自分のところにも、ジュンのところにも、新しい仕事のオファーが来てるとも聞いている。
新しい仕事に入る時の緊張感と、やり遂げた時の達成感に、まだ世界中自由に行き来ができる訳でもないから、いつも以上に時間がない状態で、それでも毎日が楽しくて、きっとあっという間に過ぎて行く。年末なんてすぐなはずで、またきっと、あの宿舎とスタジオで、みんなで笑いながら汗をかいているはずの未来が見えるってのに、なんでか誕生日に1人ってことが、ちょっとだけ辛いかも。
きっとカトクで呟けば、12人から一斉に返信があるって判ってるのに。
ギュって目を強く閉じて、少しの時間だけ耐えて眠れば朝が来て、朝早くから明日だって撮影があって............。
思わずベッドの上で膝を抱えそうになったっていうのに、ホテルの部屋のチャイムが鳴った。
スタッフの誰かが何かを伝えに来たのかとドアを開けてみれば、見慣れたはずの男前がいた。
「な、なんで、ここにいるんだよ」
だって今どこで、撮影してるか知ってるのに。
会えるはずのない距離が、2人の間にはあるはずなのに。
「あぁ、0時過ぎた。ごめん。誕生日にギリギリ間に合わなかった」
そう言って、ジュンが抱きしめてくる。
それからまだ驚いてるディエイトに「ごめん。俺もう行かなきゃ明日の撮影間に合わないから」って、一瞬で消えてった。
去り際にカッコよく笑って、「青春映画みたいだろ」って言いながらホテルの廊下を猛ダッシュしていく男は、確かに映画を撮ってる人みたいでカッコ良かったけど......。
一緒に帰ってきたけど、仕事の都合で一緒にいることは少なくて、お互い撮影中で拘束時間だって長くて、今いる場所は簡単には行き来できないはずなのに......。
違う意味で泣きそうになった夜だった。でも、1人でも笑ったけど。
カトクがどうしたって、鳴りやまないから。
とりあえずホテルで、高いワインを飲んでみたけど、エスクプスが送金してくれた金額じゃ足りなくて、ディエイトはカトクで「ヒョン、お金足りなかった」って送れば、夜中だっていうのにやっぱりカトクは賑やかで、笑うもの、驚くもの、怒るもの、囃し立てるもの。
もちろんエスクプスは追加で送金してくれたけど、『来年は、歌うだけだからな』とも言っていたけど......。
The END
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