丁寧に暮らそうとか、ステキな毎日を送ろうとか。そんなことを考えて生きてきた訳じゃない。
アイドルで今や結構な金だって持ってるのに、着古した部屋着は相変わらずだし、多少見た目が小汚くなったって、ちゃんと働くなら何も問題ないと、いつか誰かに貰った時計とかがトイレの中にあったりする。変なライトグリーンだけど。
「スングァナ? ヒョンの時計知らない?」
「知らない。でも部屋にないなら洗面所でしょ? 顔洗う時にでも外したんじゃないの?」
スングァンは適当に言ったというのに、「お、そうかも」とジョンハンは嬉しそうに洗面所に向かう。
それから少ししてから、「あったー」って声も聞こえてきてたから、スングァンの言う通りだったのかもしれない。
「スングァナ? ヒョンのスマホ知らない?」
少ししたら今度はそんなことを言うジョンハンがいた。
「最後に使ったのいつ? 寝る前とかだったら、ベットの横とかに落ちてるんじゃない?」
なるほどなるほどって言いながらジョンハンが消えていく。次に見かけた時には手にちゃんとスマホを持っていたから、無事に見つけたんだろう。
「スングァナ〜」
またしばらくしたらジョンハンが呼ぶ。
「なに〜?」
それほど大きなマンションでもないから、ちょっと声を張れば聞こえる。
面白おかしく暮らすことを目指してた訳でもないけれど、バカみたいなことも起きるし、2人して笑うことも多い。
「ヒョンのスマホ、とうとう壊れたみたい。全然動かない」
ジョンハンがそう言ってスングァンにスマホを見せてきたけれど、「機内モードにしてるからじゃん」とスングァンがそれを解除する。
「え? 誰がしたの?」
「そんなのヒョンに決まってるじゃん。ヒョンが間違って触ったんだよ、そんなの」
2人しかいない宿舎なんだからってスングァンが言うのに、「誰かが忍び込んでるわコリャ」とか、ジョンハンは適当なことを言う。
「怖いこと言わないでよ、もぉ」
スングァンはプンスカしながらも、玄関の暗証番号を変えようかとか言い出す。
セキュリティを考えたら、それは別に悪いことでもないからと時々2人で新しい番号を決めてマネヒョンたちにも連絡するけど、それで後から怒って「入れないんだけど」って連絡を寄越すのはエスクプスぐらいだった。
花を貰って帰ることはあっても、それがキレイに飾られることは少ない。大抵洗面所や台所の水場に放置されてたりする。
時々は料理だってするけど大抵出前で、しかも時間はめちゃくちゃで。それでもいつだって少し多めに頼んでしまうのは、一緒に暮らす人間がいるからかもしれない。
丁寧に暮らしているかと言われれば、年相応な男の暮らしな気はする。まぁ、金はあるけど。
時々誰かが遊びにくる。
メンバーだったり、家族だったり、別グルの誰かだったり。そしてそんな誰かが連れてきたまた別グルの誰かだったり。
メンバーも家族も慣れたものだけど、はじめてくる別グルの誰かたちは、大抵この家の普通さに驚いて帰っていく。
「いや芸能人ぽいものを求めるならディエイトの家とかじゃない? ミンギュとウォヌのとこも小綺麗だけど、あそこは絶対入れてくれないし」
「ただの広さで言うならホシヒョンとこだってあるじゃん」
人が来るたびに家の中から椅子を集めてくる。テーブルには普通に家にあるものが並ぶ。でも居心地はいい。
いつだって誰かは、「一度でいいから宇宙工房に行きたい」とか言うけれど、「居心地の悪さ半端ないぞ」と言えば、皆、仕事てピリピリしてるウジでも想像するのか、そうですよねと諦めていたけれど......。
実際には誰かがくると謎に居座るホシに威嚇されるだけだ。仲良くなれば当然マシにはなるけれど、その代わり気軽に「もう帰れば」って言われるようになるだけだけど......。
話したことも、話さなかったことも。でもお互い同じことを考えたのか目があって笑うことも。
日々、そこには普通に、幸せがある。
The END
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