誕生日が来るたびに、ジョンハンはそう言う。
言われるたびにディノが「ぇえ〜い、ヒョン」と、またそんなこと言って......みたいな声を出すけれど、ジョンハンにしてみれば、最初に会った頃とディノは変わらないんだからしょうがない。
嫌がるから最近は口にしなくなったけど、油断したらどうしたって「ディノ、ヌグエギ？」って言いそうにもなる。
頑張ってることも、負けたくない気持ちも、焦りや不安や体調不良さえも、ディノはいつだってありのままにさらけ出して、あの緑の練習室の中にいた。
それだけ素直に育ってきたんだろう。だからこそ夢を見続けられたともいう。
誰かがディノに、「お前はいつまで頑張るつもりなんだ？」って聞いた時、「いなくなるなら黙っていなくなれよ。チャニの足まで引っ張るな」と珍しくウジがキレてディノも含めた練習室にその時いたほぼ全員をビビらせていたけれど、その後ディノは教えてくれた。
「あのね。俺、勉強あんまりできないんだ。踊りは覚えられるんだけど、計算も苦手だし」
バカだけど、踊るのは大好きだからって言ったディノはちょっとだけ情けない顔をしていたけれど、幼かったディノをはじめて尊敬したかもしれない出来事だった。
一緒に育ってきたけれど、育ててきたような気にすらなる。
面倒を見てきたってほどのことはしてないけれど、気にかけていたのは事実で、それは今となっても変わらなくて。
エスクプスは家ではマンネだし、ジョシュアはひとりっ子だし。下がいるのはジョンハンだけで、しかも妹で。だから当然誰よりも何よりも妹は可愛い。
でもなんでかディノはいつまでたっても可愛いって話になれば、「きっとちょっと抜けてるから、いつまでも可愛いんだよ」とジョシュアが笑顔でひどいことを言う。
あぁでも判る。それは判ると、エスクプスとジョンハンだってその意見に乗ってしまう。
最近はチングもできたようで、テレビ局とかに入ると嬉しそうに遊びに行ってしまう。ヒョンたちが来たらみんなが緊張するから来ないでよとか言いながら。でも結局なかなか帰ってこなくて、ミンギュあたりが呼びに行くことになるけど。
それはまるで、遊びに夢中で家に帰ることを忘れた子どものようで、エスクプスなんて「気をつけろよ」とは言うものの、95ラインの中ではやっぱり可愛すぎるだろうって話しになる。
最近ではプレディスからTWSがデビューして、ホシに続いてディノもチャレンジ動画を撮っていた。それを聞いた時にはさすがにディノが一番しっかり見えて、ちゃんとヒョンもしてて、あぁ逞しく育ったよな......と言えると思っていたのに......。
「いや、ウリマンネがなんで一番可愛いんだ？」って言ったのはエスクプスで。
「身長の問題じゃない？」って言ったのはジョシュアで。
「あいつがヒョンっぽくないからじゃないか？」って言ったのはジョンハンで。
結局年下と一緒にいても、ディノは自分たちから見たらマンネ以外のナニモノでもないからだろうって話で落ち着いた。
「俺、チャレンジの時にチキンとかたくさん差し入れしたんだ」
そうディノが嬉しそうに自慢するのに、偉かったなと皆から褒められて、それでまた嬉しそうに笑うから......。やっぱりウリマンネが～って話になってしまう。
「いやでもチャニは、リアルではちゃんとヒョンじゃん」
そんな話題も出るには出る。結構毎度。
しかし幼い頃から離れて暮らしてるのもあるし、弟の方が今ではディノよりもデカイ。
いやそう思うと幼かった頃にもっと食べさせてやれば良かったと反省することにもなるんだけれど、弟も何故かバーノンの方によく懐いてる。だからやっぱりディノは幼く見えて、結果毎年誕生日を迎えるたびに、「で、ディノは幾つになったの？」って聞いてしまう。
「ぇえ～いヒョン」
そういうその顔だってやっぱり可愛いから......。
The END
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