妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

枯れて咲く花 -MYMY 5-

このおはなしについて......

MYMY5。
2024年になったから? めでたいことの1つも世の中に出さねばと思ったから?
まぁただ書きたかったから......。

いつ終わるかも、どんなおはなしになるかも、全然わかってないけれど、書き始めてみることに。nanatourがはじまるから、空を旅する彼らのおはなしもはじめてみました。

ということで、「MYMY」contentsページです。

sevmin.hateblo.jp

 

枯れて咲く花 -MYMY 5-

船の中だから、探さなくても絶対にどこかにはいる。
それが判ってても時々は全員が揃ってることを確認してしまうのは、95ラインの癖だったかもしれない。
大抵は呼べば「いるよ~」とどこかから返事が返ってくるのに、いつもは楽しそうに笑ってる97ラインが黙ったままだった。
「ウォヌや、ミンギュは?」
図体がデカイだけあって目立つはずなのに、ミンギュすら見つからない。だからジョンハンはウォヌに声をかけた。
「なんか珍しく不機嫌で、船の上でふて寝するって言ってたよ」
指を真上に向けながらウォヌが苦笑する。
「ジュナッ! ミョンホは?」
大抵はジュンに声をかければ、船を操りながらもジュンは目の前にある伝声管に手を伸ばしてエンジン室にいるディエイトに話しかけ、そこからはすぐに「いるよ~」って返事がくるはずなのに......。
「いや、エンジン室にはいないよ。ハオも珍しく不機嫌で、外の風に当たるって言って、裏に出たから」
ジュンは船の後ろを指差しながら笑ってた。
不機嫌になることはあっても、それが長く続くことは滅多にない2人の姿が見えなくなってから、結構な時間が経っていた。だから相当揉めたのかもしれない。
もう一人不在の、97ラインのドギョムと......。
「なに? ドギョミのことは探してやらないの?」
珍しくホシが船の中にいて、そんなことを聞いてきたけれど、ドギョムのいる場所は判ってる。
朝からずっとジョンハンの部屋の隅っこにいるから。正確には1人一部屋なんて無理だから、そこはエスクプスとジョンハンの部屋だった。時々はマンネラインも一緒になって寝てたりする。
エスクプスと大事な話をしてたってのに、何も言わずにやってきて、今はちょっと無理だからって言ってるのに何も言わずに部屋の隅っこに座ったと思ったら、『無下に扱ったら泣くからな』みたいな顔で黙り込んでいた。

ドギョムは拗ねると長い。そして鬱陶しい。だけど傷ついてもいることが判ってるから、話を聞いてやらなきゃいけない。それでも話を聞くだけならどうにかなるのに、「俺の話だけ聞くなんてダメだよ」とドギョム本人が言うんだから、めんどくさいことこの上ない。
「ハニヒョン今俺の事めんどくさいって思ったでしょ」
「思ってない思ってない」
「ちゃんとミンギュとミョンホからも話を聞いて、俺が間違ってないってわかってから、俺の話を聞いてよ」
「........................」
「ハニヒョン今絶対、俺の事めんどくさいって思ったでしょ」
「思ってない思ってない」
いや絶対めんどくさい。だけどそう言えばドギョムはさらに拗ねるから......。
ジョンハンは決して広くはない船の中で、2人を探して外に出た。

船の最後尾で、雲しかない空を見てたのはディエイトで、「ミョンホや〜」って言いながらジョンハンが近づけば、「俺は謝らないよ」と言ったきり、振り返りもしない。
その声は案外かたくて、怒ってるっていうよりは、ほだされないぞって思ってる感じだった。
「ヒョンは、謝れなんていいに来たんじゃないよ」
そう言えばディエイトが驚いて振り向く。
謝らそうと思ってないことを知って驚くことに、悪くなくても謝ることが当然だった暮らしが垣間見える。でも同情はしないけど。
「ミョンホや。ヒョンはちゃんと、お前からも話を聞くよ。それでも何がダメだったとか、誰がダメだったとかは判らないかもしれないけど、この狭い船の中で顔をあわさずに過ごせないだろ」
風が強くなれば、船の外でずっとはいられない。
エンジン室にこもってしまえば最悪顔は合わせずにすむかもしれないが、誰かが揉めてると船の中はそれだけでザワザワする。なによりマンネラインたちが不安な顔をするはずだから。
「どうしても話したくないなら、少しだけ時間を置くよ。先にミンギュのとこに行ってくる。いいか?」
振り向きもせずにミョンホが頷くから、後ろから後頭部を撫でてやる。
強気だけれど、我が儘ではない。
負けん気も強いくせに、勝ち方はよく判ってない。
そして最終的には自分を強く律しようとする。
「仲直りするなら、喧嘩なんて、山ほどしたっていいんだからな」
それだけ言って、船の上をジョンハンは目指した。
でっかい図体で不貞寝してるだろうミンギュを目指して。

船の上にはウジがいた。まぁ大抵ウジはいる。
「ミンギュは?」
そう聞けば、自分の足下を指さして、「超絶鬱陶しい」と言った。そうしたらミンギュの「酷いよウジヒョン」って声だけがした。
「下りてきて事情を話せよ」
そう言えば、ミンギュは座った状態まで起き上がって見下ろしてきた。でも下りてくる素振りは見せない。
「本気になるまでに、お前が止めなかったのかよ」
多分1番ミンギュがしっかりしてる。ディエイトのムッとする瞬間とか、ドギョムの傷つくラインとか。そういうのは全部把握してるはずで、いつもなら上手くやり過ごすはずなのに。
「ごめんハニヒョン。だって俺が1番ダメだったんだ」
珍しく1番カッとしたのは自分で、我慢できなかったんだとミンギュが謝った。

誕生日プレゼントをどうするか、考えていたという。毎月のように誰かの誕生日がやってくる。船の上じゃぁ特別な何かなんて用意できないことの方が多いから、おめでとうって言葉と歌と、それから願い事をする間、じっと一緒に待ってあげるぐらいしかできない。

「ミョンホの誕生日に、シュアヒョンはキレイな本をくれたんだって」

だからジョシュアの誕生日にはどうしても何かあげたいとディエイトが言い出したのが最初だった。
何がいいと思う?って相談が、どうして3人で揉めることになったのか......。
「だってアイツが、後に残らないものの方がいいって言ったんだ」
気持ちは込めたいけれど、消えてなくなるものがいいって。それはまるで、自分は長くこの旅に一緒にいないと言ってるように聞こえて、思わずミンギュは「なんでだよッ」とムカつきも隠さずに言ってしまったのが最初だったらしい。
「ドギョミは最初意味が判ってなくて、別に花とかでも、シュアヒョンは絶対喜んでくれるから大丈夫だよって言うから、俺、それにもムカついて」
怒ってるミンギュと、怒られたことに驚いて、でも頑なに「しょうがないだろ」って言い始めたディエイトの間で頑張っていたのに......。
「お前は黙ってろよ」
必死に2人の間で頑張ってくれてたドギョムにも、そう言ってしまったらしい。
でもドギョムが怒ったのはそんなミンギュにじゃなくて、「花だってなんだっていいよ。消えてなくなってくれるなら」と言ったディエイトの言葉にだった。
多分ドギョムも遅まきながら気づいたんだろう。
「俺ら、幸せな話し合いをはじめたはずなのに、なんでか大喧嘩になったんだ」
いつだって前向きで、いつだって明るくて、いつだって失敗しても笑ってて。そんなミンギュが珍しく肩を落としてる。
「でも俺、悪くないよね?」
悲しそうにそう聞いてくるミンギュに、さすがのジョンハンだって「いやお前が悪いだろ」とは言えなかった。
「とりあえず、全員からちゃんと聞いてから判断する。でもシュアは、何を貰ったって、何も貰わなかったって、気にしないのは判ってるだろ?」
それこそいつもありがとうの言葉だけでも十分で、言葉なんてそれこそ目に見えるものでもなんでもなくて、だから消え物といえば消え物だろう。
そんな特別な日の言葉じゃなくても、毎日毎日、色んなタイミングで聞く弟たちの言葉がジョンハンの中には大切なものとして残ってるってのに。
消えてなくなるものが目の前に差し出されても、それはきっと、心の中に大切に大切にしまわれるってのに。だからこそ逆に、それらは決して色褪せないだろう。もしかしたら勝手に時々はキラキラと、輝きだってするかもしれない。
「バカだな、お前ら」
だからジョンハンはそう言って、「じゃあ俺はふりだしに戻るよ」と笑ってみせた。
そして本当にふりだしに戻る。
船の隅っこで拗ねて膝を抱えて、ジトって目でジョンハンを見上げてくるドギョムに笑って「ちゃんと2人のとこも行って来たぞ」と言えば、「俺、悪くなかったよね?」って聞かれた。
「あぁ、お前は悪くなかった」
だからそう言って頭を撫でてやる。
「俺、花がいいって言ったんだ」
拗ねてたはずのドギョムが、それだけ言って今度は泣きそうな顔をした。
「シュアヒョンには花が似合うって言ったら、そうしたらミョンホが、それがいいって言ってくれたんだ。アイツはセンスがいいから、俺が言ったことに乗ってくれたって思ったら気分良かったのに、花は枯れるからいいんだろって、ミンギュが言ったんだ」
ジョシュアには花が似合うと言うドギョムの意見は、純粋な気持ちだったのに、そこに乗っかったディエイトの気持ちは不純だとミンギュは言い、それをディエイトも認めて、さらにドギョムは傷ついたらしい。
「やっぱり俺、悪くないだろ?」
そういうドギョムに、ジョンハンは「俺も、あいつには花が似合うと思う。豪華な花でも、素朴な花でも、あいつには似合うよ」とだけ答えた。
きっとジョシュアは、ただの草だって弟たちからプレゼントされたら喜んで受け取るだろう。

「ドギョマ」
「なに? 俺は謝らないよ」
「花って案外、高くないか?」
「え?」

時折船は陸地に下りて、食料やら生活に必要なものを買う。
優先されるのは生きるのに必要なものだったから、花を買ったことなんてほとんどなかったけれど、何度か花を売っているのは見たことがある。
船の上でも何か育てられないかとミンギュが言ったことがあったから、種を見に行った時だったか。
花はそのイメージ通り、見たことのない花も含めて全てが色とりどりで、明るくて、鮮やかで。でも簡単に手が出そうにないほど高かった。たまたま覗いた店がそうだっただけかもしれないけれど。

「きっと、時計につける革ひもとか。メガネにつける革ひもとか。いざとなったら靴紐にもなるかもしれない革ひもとかの方がいいんじゃないか?」
「なんでハニヒョンそんなに革ひも推しなんだよ。それに、シュアヒョン時計とかメガネとか持ってたっけ?」
「いや、今はないけど。それはいつかってことで、先に革ひもでいいだろ。腕にでも巻けばそれなりに見えるし」

革ひもでもいいけれど、それはショボイ気がする......。不機嫌だったはずなのに、ドギョムは不意に出てきた革ひもっていうワードに意識を持って行かれて、「なにハニヒョン、どこの回し者だよ」って言いながら笑ってしまった。

「なんだよ。革ひもをバカにするのかよ」

ジョンハンがそう言えば、ドギョムはいつものように楽しそうに笑って、「ヒョンなんか、悪だくみしてそうな顔で笑ってるじゃん」とツッコんできた。
「謝らなくてもいいから。仲直りはしろよ」
だからそう言ってジョンハンはドギョムの頭を叩いてやった。
「ヒョンはまた、ディエイトんとこ、行ってくるからな。お前、戻って来た時には隅っこに座って拗ねてんのやめてないと、俺が拗ねるからな」
そう言えばドギョムは頷いた。
誰かに話して少しだけ気持ちが落ち着いたのか、それとも何かキッカケがあれば良かったのか。
でもドギョムは頷いたから、戻って来た時にはいつも通りとまではいかなくても、笑ってはいるだろう。照れたように。
そしてジョンハンはまた船の外に移動する。3周はしないぞと自分に誓いながら。
「ミョンホや〜」
いつもみたいにちょっと力が抜けた感じで声をかければ、僅かな時間でディエイトだって考えたんだろう。
さっきは頑なに謝らないって感じだったのに、今度はジョンハンを振り返って「俺、謝らないとダメかな?」って聞いてきたから。
「悪いことしてないなら、謝る必要なんてないだろ。それにミンギュもドギョミも、お前がごめんなさいって言わなくたって許してくれそうだけど。アイツら優しいし、ちょっとバカだから怒ってるのとかも楽しいことあったら忘れるじゃん」
そう言ってやれば、ディエイトが何かを考えた風で「そうかも」って同意した。
「97ラインはお前がしっかりしないと、すぐに騙されるだろうしな」
そう言ってやれば、今度はもっとしっかりと頷いたいた。
「あ、シュアへの誕生日プレゼントは、革ひもにすることに落ち着いたから」
だからさらっとそう言ってやれば、「え? なんで?」と食いついてくる。
プレゼントは後に残らないものがいい......。そう言ったディエイトだって、実際に何かモノをあげるとなると、その内容にこだわりたいんだろう。なにせセンスが自分にはあると自負してるから。
「なんにでも使えるし、邪魔にもならないし、あれなら何もあげてないのと一緒みたいなもんだからだろ。ドギョミはそれで手を打つって言ってたぞ」
勝手にそう言って、「じゃぁもうケンカのネタも無くなったことだし、誰が悪いって訳でもないみたいだから、もう少ししたら中に入れよ。謝らなくてもいいから、仲直りはしとけよ」とだけ言ってジョンハンはその場を立ち去った。
きっとディエイトのことだから、もう少しその場にとどまって、本当に仲直りできるかを考えるだろうが、でもそれ以上にプレゼントのことが気になって、そのうちそっちの方が大事になって戻ることになるだろう。
だからちょっとジョンハンはイヒヒヒって感じで笑いながら、今度はミンギュのもとに向かう。
「ウジや、バカデカミンギュはそこにまだいるのか?」
そう声をかければウジが答えるよりも早く、「悪口じゃないよね? デカイのは事実だし、バカは俺にかかってる訳じゃないし。悪口じゃないよね?」って言いながら覗き込んできたミンギュがいた。多分バカだ。
「ドギョミもディエイトも、謝らないけど仲直りはするってよ。お前だけ、ずっとそこにいるのか?」
「ハニヒョンほんとに? 2人とも? 仲直りするって?」
「あぁ、プレゼントは革ひもに決まったしな」
「え? 革ひもって何? なんで突然?」
「そりゃ何か送りたいドギョムと、消え物がいいっていうディエイトの、ちょうど間を取ったからだろ」
「は? ハニヒョン何言ってんの? ちょうど間を取ったらなんで革ひもになるんだよ」
ミンギュは大抵のことはなんでもできるのに、ジョンハンには弱い。本気でケンカをしたことはないが、きっと勝てないだろうって気はする。
そして今も謎に革ひもと言われてそれに口を挟もうとしたら「あ? お前らが揉めてるからだろうが。どんなゴミみたいなもんでも気持ち込めときゃプレゼントだし、革ひもなんて使ってたらいつの間にか勝手に消えてるようなもんなんだから。2人のちょうど間だろうが」とキレられていた。
「お前もさっさと戻れよ」
そう言ってジョンハンが去っていく。
「ウジヒョ〜ン。俺、悪くないよね?」
ミンギュは最初から最後まで、特に何も言わずに傍観してたウジに泣きついては見たけれど、ウジは俺が知るかよって感じで肩をすくめただけだった。

ジョンハンは船の中に戻ると、思い出したかのように今度はマンネラインを探しに行く。
「俺のことも探せよ~」と、途中エスクプスに捕まりそうになるけれど、「お前はもうそこにいるだろ」と逃げてやる。
ディノはいた。そこにはバーノンもスングァンもいて、3人でジョシュアから出された宿題をしてると言っていたけど、スングァンが丁寧に文字を書く横でディノは直線を引く練習をしてて、バーノンは丸を書く練習をしてた。
どんな宿題だよとジョンハンが笑えば、「真っ直ぐって難しいんだよ」とディノが、「丸だって難しいよ」とバーノンが言う。
「2人ともバカなんだよ。勉強も嫌いだし」
それじゃぁまるでスングァンは勉強が好きみたいな言い方だが、勉強って意味では3人とも似たり寄ったりなことは知っている。ただスングァンはジョシュアに字が丁寧にしっかり書けてると褒められてから、字を書くのが好きになっただけだった。
「バカでいいも〜ん」と、バーノンは気にしない。
「バカって言う方がバカなんだよ。バーカバーカバーカ」と、ディノは戦う姿勢を見せる。
「俺はバカじゃないから言い返さないも〜ん」と、スングァンはご機嫌だった。
マンネラインは揉めてても幸せそうで、ジョンハンはとりあえず真っ直ぐな線もただただ丸いだけの丸も、もちろんスングァンのちゃんとした文字も褒めた。
当然操縦席に座り続けるジュンのもとにも行った。
「ディエイトは大丈夫そうだったよ。すぐに仲直りするだろ」
そう言えば、「ありがとヒョン」とジュンが言う。
どこまで行っても空の上だから景色なんてほとんど変わらないのに、ジュンは前ばかりを見てる。
でも背中でいつも、ディエイトの気配を感じてるのを知っている。
困ってないか、うまくできてるか、不機嫌じゃないか、心から笑っているかって。
97ラインがそれなりに上手くやっていても、ジュンの心配は尽きないんだろう。でも自分があんまり関わらない方がいいと我慢してることだって、ジョンハンは気づいてた。
「俺がちゃんとしてやったから、な」
そうジョンハンは言ったけど、そのジョンハンのちゃんとしたことで、97ラインは新たに揉めはじめていたけれど............。

ミンギュが船の中に戻った時にはドギョムとディエイトはすでにそこにいて、「革ひも」について話してた。だからミンギュはごめんよりも前に「革ひもってなに? 俺に相談もなく決めたの?」って言ってしまった。
あれはハニヒョンが......ってドギョムが言えば話しはそこで終わりだったのに、ミンギュよりもひと足先に戻ってきたディエイトにも同じことを言われてムッとしてたのもあって、「なんでお前に相談がいるんだよ」って言ってしまったドギョムがいて。
「一人じゃ何にも決められないんだから、相談はいるだろ」
いつだってなんでも相談してくるドギョムのことが普段は愛おしいとすら思ってるはずのディエイトだって、つい口調はキツくなった。
結果、「革ひもってなんだよ」「革ひもだっていいだろ。どうせ消えてなくなるものがいいって言ってたんだし」「消えてなくなるにしてもプレゼントにはセンスが大事なんだよ」と3人がそれぞれ文句を言い出す始末。船の中は一気にうるさくなったし険悪な空気になったかもしれない。
「ハニヒョン、嘘でしょ?」
思わずそう言ったのは、「俺がちゃんとしてやった」っていうジョンハンの発言を聞いていたジュンだった。
「お前らまだやってるのか」ってエスクプスもやってきたし、「何が原因で揉めてるんだよ」ってジョシュアもやってきたし、「ヤー、俺がちゃんといいようにしてやっただろ」と怒りながらジョンハンもやってきて、さらに船の中は大騒ぎになったかもしれない。
船は広い。でも13人には狭いかもしれない。
いつもはくっついて楽しそうに笑ってても、時々はそういうこともある。
船の上で我関せずだったウジが、「ジュナッ、陸地が見えるかッ?」と言った時には、マンネラインまでやって来て、さらにとっ散らかっていた頃。
どんな陸地かは判らないけれど、それでも船をおろして、その場でバーベキューでもできれば気分も変わるだろう。
それに「陸地におりるぞッ」って言えば、全員の意識はいっときでもそっちに向くから。
揉めてたはずなのに、ミンギュは慌てて食材の残りを確認しに走る。ディエイトはエンジン室へと降りていく。
何があるか判らないからと、それぞれが不測の事態に備えようと動くなか、「ケンカばっかりするなら、次に飛び立つ時に捨ててくからなッ」とエスクプスが最後まで叫んでた。
山というほど山でもなく、かといって丘というには高い。でも緑はあまりなく、自然豊かという訳でもない。
降り立った陸地はそんな場所だった。たぶん近くに人が住んでる気配もない。立ち枯れたような状態の森とも呼べない木や、緑ですらない土地はきっと、人が生きていくほどの豊かさは持ち合わせてないんだろう。
「人がいないなら、まぁちょうどいいよ。さすがに寝るのは船の中だけど、盛大にバーベキューでもしようか」
多少は警戒したけれど、どこからも何もやって来ない。だから大丈夫だろうとジョシュアがそう言えば、「やったー。俺、燃やせそうな枝とか集めてくる」と、ドギョムが一番に飛び出してった。
「一緒に行ってくる」と続いたのはディエイトで、一人では危ないとでも思ったんだろう。
でもそれは正解だったけど。
だってドギョムがすぐに「ギャッ」ってバカデカ声で叫んだから。
「ドギョマッ」
「ハオッ」
ジョンハンとジュンがそれぞれ叫びながら船を飛び降りて行った。
エスクプスとジョシュアが武器になるものを持って後に続いた。ミンギュは船の上から警戒するようにあたりを見回して、「ホシヒョン、後ろお願い」と全体を把握することに努めたし、マンネラインは誰に言われずとも固まった。
トラブルでも危険でもなかったけれど、今度は「ぅわぁぁぁぁあ」ってディエイトが叫んだけど。
見れば、手にした枯れ枝だったはずのものが、ディエイトの腕の中で一瞬で生い茂るようにして育った。燃やしたかったのに、それを燃やそうと思ったらまずは切り倒す必要があるほど。
「なんか、引きちぎったら、こうなるみたい」
そう言いながらディエイトがまた一つ手にする。小さい草程度のものが、一瞬で育つ。
死んだように見えた土地は、ただ時を待つように眠っていただけなのかもしれない。
きっと最小の栄養でその時を待っているんだろう。
同じように枯れて咲く花を見つけたドギョムがそれに手を伸ばす。
今にも朽ちてしまいそうなそれが、一瞬で鮮やかに花開く。
「獲りすぎるなよ」
ジョンハンがそう言って、船に戻っていく。
「獲るなら食えそうなものにしろよ」
そう言ってエスクプスも戻っていく。
船の近場だけでも空き地を作ろうとしたのに、手にしたものがその場で育っていく。緑は生い茂り花は咲き、草木がその枝を伸ばす。最後の時に命を繋ぐためかもしれない。
結局だからバーベキューは諦めて、船はまた空へと飛び立った。
役立つものを船の中に持ち帰ろうとしたけれど、ドギョムが手にした花は船の中でまた枯れてしまった。今度はその命が本当に燃え尽きたようにして。
「ちょうどいいじゃん。シュアの誕生日プレゼント、その花で」
さっきまでは「革ひも」でケンカしてた3人が、ちょっとだけ戸惑う。まぁそれもそのはずで、その場には今度はジョシュアもいたから。
「あぁ、俺へのプレゼント? うん、それでもいいよ。枯れて咲く花だなんて、珍しかったしね」
なんでも構わないとジョシュアが笑うのに、「これはさっき拾っただけだから。誕生日プレゼントは、もうちょっと考える」とミンギュが言えば、「うん。俺たちまだ悩んでるとこ」とドギョムがそれに乗っかって、「花でも革ひもでもない」とディエイトが続けた。
ジョシュアにしてみればはじめて聞く「革ひも」って言葉に首を傾げていたけれど、3人はそそくさと逃げたった。さっきまではほんと、五月蠅いぐらいケンカしてたはずなのに......。
結局その場からは、それほど長居もせずに飛び立った。不思議な場所だった記録をウジが残してたけど、次に降り立った時には世界が変わってるだなんて、まだ知らなかった頃のはなし。
それ以来一度も、枯れて咲く花なんて見ていない。もしかしたら新しい主を迎えて、今はもう普通に緑豊かな土地になってたり、するのかもしれない。
揉めてたはずの3人も、船の中で固まって何やらまた相談をはじめてた。
次に降りれる場所をまた探そうとウジは船の上へとあがっていく。そして当然のようにホシがそれについていく。
ジュンは操縦席に座り、ウォヌは料理もできないくせにキッチンでウロウロしてた。マンネラインたちは不思議な景色を見たことに興奮して騒がしくて。
結局その日は95ラインとウォヌとで盛大に肉を焼いて食べた。後からミンギュに「肉ほんとに全部焼いたの?!」と驚かれたけれど、料理はしないくせに食材の場所はちゃんと判るウォヌと、料理はこれまたしないくせに豪快なジョンハンと、繊細に見えて全然そうじゃないジョシュアと、楽しいことに流されるエスクプスが「焼いちゃえ焼いちゃえ食っちゃえ食っちゃえ」と楽しそうに全部焼いてしまったから。

船が空を飛ぶ。
食材求めて陸地を探して。
帰りたい場所もあるけれど、ひとまず今は食い物だって感じで。

The END