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SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

Black Eye


VERNON 'Black Eye' Official MV

[17:terview] EP. VERNON : 'Black Eye'


[SPECIAL VIDEO] VERNON - 'Black Eye' Band Live Session

 



Black Eye

恋も愛も正直判らない。でも、誰にも見せてないけど、自分の中には確かに独占欲がある。
妹のことは愛してる。
でもその気持ちと同じかと言われると、大分違う。
一緒に暮らしたいって真正面から言われて、「嫌だよ」って言ったら物凄い凹まれた。
でもアイツが誰かと暮らすのは許せないってのに............。

「一緒に暮らしてやれよ」って簡単に言って来るミンギュには「ヒョン、無責任なこと言わないでよ」と言っておいた。
猫だって、拾っちゃったら一生大切にしてやらなきゃいけないのに。

呟きを聞かれたのか、「凄いなお前」と言われたけれど、何が凄いのかは判らない。
バーノンにしてみれば、さっさと2人で宿舎を出てったミンギュとウォヌの方が、よっぽど凄かった。

ほとんどのことはミンギュがやったと聞いて、「大変じゃなかった?」って聞いたら、「大変だった。だけど全部が楽しかった」と笑う姿は眩しすぎて凹んだだけで終わった。
本当はその苦労話とかも聞いて、心の準備だってしたかったけど、何もかもを楽しめてしまえる人の意見は役には立たないかもしれない。

春には悩んでた。
なのにそのまま夏が過ぎた。
一緒に暮らしたいとは、もう言わなくなったけど、時々チラチラとこっちを見てるのは知ってた。

ウジの作業部屋は新しい会社のビルの中にできて、広くなったし明るくなったし、座り心地の良い大きめなソファもあって、時折バーノンも訪れた。

「ウジヒョン、ちょっとハグしていい?」

そう聞けば、ウジは忙しいのか「勝手にしろよ」と言ってくる。
だから勝手に後ろからハグしてみる。
ウジは何も言わずにそのままパソコンのキーボードを打ち続けてる。

「やっぱり、ウジヒョンには欲情しない」

そう言ってもウジは別に何も言わなかった。
後ろにいたホシは、飲んでたコーラを盛大に噴き出していたけど。
それでウジに怒られたのは、バーノンじゃなくてホシだった。

「俺がなんで怒られるんだよ」

ホシはそう言って怒っていたけど、「お前のせいでベタベタになったからだろ」とウジに言われ、「ホシヒョンがコーラ吹いたんじゃん」とバーノンにも言われ、ホシは不貞腐れながらも雑巾を手に拭き始める。

「そりゃそうだろ。俺はスングァニじゃねぇもん」

突然ウジが話題を無理やり戻したことに、バーノンは別に違和感も抱かなかったっていうのに、雑巾を手にしてたホシは何に驚いたのか、全然関係ない場所に雑巾を持ったまま突っ込んでいた。

「お前、何悩んでんの? やることやったんだろ?」

ウジが言う。そうしたらホシが今度は盛大に転んでた。そんなホシのことは、ウジもバーノンも無視した。

「ずっと一緒にいるのに、ウジヒョンは嫌じゃないの? ホシヒョンのこと」
「そりゃ嫌な時もあるに決まってるじゃん」
「だから一緒に暮らさないの?」

ホシが時折ウジに向かって、一緒に暮らそうと誘っていることは知っていた。でもウジは首を縦には振らなかった。だからバーノンは、ウジに聞けば何か答えが見つかるかもしれないと思ったのかもしれない。

「いや、一緒に暮らさない理由はそんなんじゃねぇけど」

今でさえ宿舎には寝に帰るだけで、忙しくなれば作業部屋と練習室とスタジオと現場ばかりで一切帰らなくなることもある。最近では作業部屋にスーツケースも置いてあるから、海外に出る前でも宿舎に帰らないことだってあるのに.........とウジが教えてくれた。

「いや、俺はそれでもいいって思ったんだけど、それなら今は金を貯めて、いつかスタジオと作業部屋のある家を持とうって話になったんだよ」

ホシがそう言う。なんだか壮大な話に聞こえるけれど2人なら叶えそうな気もする。

「お前さ、アイツがバカみたいに俺なんか何もないのにって言った時にはちゃんと怒ってやるじゃん」

ウジが言う。
それは事実だからバーノンは頷いた。
だってあんなに才能豊かで努力家で、それでも自分ではただ好きなだけだよとか言うけれど、好きで居続けることだって才能の一つだって言うのに。

「同じだろ。一緒に暮らすのに踏み切れない理由だって、ちゃんと言ってやれよ。理由も聞かされずに待つのと、それを知ってもなお待つのじゃ、大分違うだろ」

ウジの言葉に、ちょっとだけ考える。でも、その理由が「2人のこれからが想像できない」なんだから、言える訳がない。
男としてはなんて無責任で、もしも妹が付き合おうとしてる男がそんなことを言おうもんなら、絶対に反対するはずなのに。

「だって、スングァニはキラキラしすぎてるから」

大切なのに、大切にできそうにない。
守りたいのに、傷つけるのはいつも自分だったりする。
そんな気持ちも込めてそう言ったのに、ウジは鼻で笑って、「いや、大概お前もキラキラしてるけどな」と言う。

「お前らに比べたら、俺らなんてキラキラのキの字もないわ」

ウジがそう言えば、少し離れた場所にいたホシが、「いや俺らだってアイドルだって」と言っていたけれど、ウジはさらに「お前らが金銀だとしたら、俺らは黒か茶色か鼠色だもん。頑張ってベージュとかだし」みたいな、髪の色の話でもしているかのように言った。

「でもスングァンのキラキラは、心が綺麗なキラキラなんだよ。澄んでるんだよ、どこもかしこも」
「それをお前が、汚しそうだって?」

ただ頷けば、「じゃぁそれも言ってやれよ」とウジは言う。
でも..................。
そうしたら自分の中にある、汚いものを曝け出さなきゃいけなくなる。
自分勝手で醜くて、酷い男の自分の部分は、きっと好きだと思って貰ってる部分とは違うはずで。

「恋愛ドラマみたいな、キラキラしてるだけの恋愛なんて、ないのはアイツも知ってるだろ。まぁ100歩譲って知らなかったとしても、お前と一緒に知っていけばいいだろ」

簡単に言ってくれる。
全然簡単じゃないことを、ほんとに簡単に言ってくれる。

「じゃぁ、アイツにはキラキラな俺を見せ続けるから、俺の真っ黒な部分はウジヒョンが引き受けてよ」

そう言ったら、「は? お前何言ってんの?」ってさっきまではちょっと離れた場所でバタバタしてたホシヒョンに本気の声で怒られて、作業部屋を追い出されたバーノンだった。

ウジの助言に従おうと思った訳でもないけれど、何度かは話そうとした。
一緒に暮らせない理由を。
歩き続ける未来がまだちゃんと見えてないって正直に。
カッコ悪くても、情けなくても、不甲斐なくても。
酷い男だと思われても、いつだってキラキラした目で見られるよりはずっと楽になるはずだから。

一緒に行かないかと誘われたジップラインはバンクーバーでの出来事で、警備の人間やマネヒョンは来るだろうとは思ってたけど、それでも2人きりの時間で色々話せると思ってたのに、カメラが着いてきてた。
だからカメラの前で、いつも通りに笑って楽しそうなスングァンとの温度差が、映像として残ってて、「お前なんであんなに不機嫌だったの?」ってそれを見たジョンハンに言われたほど。

一緒にいたら大抵のことはバレてしまうヒョンだけど、映像でもバレて、少しだけ凹む。

「あの時、ジップラインの死亡率を真剣に調べたんだよ。死ぬかもしれないなら、その前に全部、言いたいこととか言わなきゃいけないこととか、言えるかなって思って」

バーノンがそう言えば、「ははは。それで、スングァニには言えたのか? お前の気持ちを」とジョンハンは軽く言う。
それはまるで、バーノンの気持ちすら見透かしてるみたいで。でもきっと、本当に、ジョンハンはバーノンの気持ちも全部、判ってるのかもしれない。

「まぁ判るよ。スングァニはお前のこと、恋愛ドラマに出てくる完璧彼氏みたいな目で見てるもんな。壁ドンとか床ドンとかでアイツは満足しそうだし」
「............ハニヒョン、有益なアドバイスがないなら、もう黙っててよ」

言うことが全部当たってる気がして思わずその発言を止める。
それ以上は落ち込みたくなかったから。

鮮やかな自然に、心地よい風。それからスングァンの楽しそうな声に、ジップラインをちょっと怖がるその姿に、いつの間にか不機嫌だったことも忘れて一緒に楽しみはしたけど、結局何も話せなかったその日の出来事は、映像として全部残ってる。
公開されたものと、公開されなかったけどスタッフから貰ったものとをスングァンはどちらも宝物だと言っていた。

スングァンの宝物は、日々刻々と増えていく。
それは本当に宝物で、スングァンからしてみれば輝いているんだろう。
2人で一緒に乗ったジップラインのチケットも、その後食べたレストランのコースターも。
嬉しそうに笑えばバーノンだって幸せで、何も悪いことなんてないはずなのに。

「白雪姫なんて、キスしたら目覚めるのにな」

ジョンハンは突然そう言って笑ってた。意味が判らなくて問いかけようとすれば、「やることやったのに、アイツは全然現実的じゃないなってはなし」とさらに笑われた。

同じ朝を迎えたら、2人して大人になるような気がしてた。
少なくともキラキラしたものが多少は生々しい何かに姿を変えると思ってたのに、スングァンはそれでもキラキラしてて、それまでと同じようにバーノンのことを見る。

「普通の男なら考えるような邪なこと、アイツ本気で考えないのかな? でもそれでお前、アイツにぶつけられない諸々を、別にどうにかしようとか思うなよ」

ジョンハンが好き勝手に言うことは、大抵当たってるから驚くし、そう言うことは、もっと早く言って欲しかった。

「それもう、俺、ウジヒョンに言った。俺の真っ黒な部分はウジヒョンが引き受けてよって」
「ホシには聞かれるなよ」
「ダメ。もう聞かれた。だって一緒にいたし」
「............お前、凄いな」

殴られたんじゃないかと心配するジョンハンに、殴られなかったけど真剣な顔で怒られたし追い出されたと言えば、それですんでラッキーだったとしみじみ言われたから、実際にそうなんだろう。

「いちかばちか、身体の関係だけがいいとか言ってみれば?」

ジョンハンが暴言を吐く。いやでもふざけてるのかと思って見てみれば、全然笑ってなかった。
だからそれは本気だったのかもしれない。
バカみたいに怖がって動けないでいるなら、暴言だってなんだって、言った方がいいってことなのかも。
でも、言えるはずがない。だってそんな関係だけじゃ、自分が満足できないから。

夏の終わり。バーノンのため息が増え始めた頃、たまたま控室で一緒になったディエイトが、「幸せ、逃げるよ」と言った。
「え?」って聞けば、「ため息」と言われて納得する。
13人もいるのにみんなどこに行ったのか、その時控室にいたのはディエイトと2人で、幸せが逃げて行ったと知ってもなお、バーノンの口から零れて行くのはため息ばかりだった。

「何をそんなにため息ついてるかは知らないけど、拗らせる前にヒョンたちに相談しなよ」

さらりと言ってくれるけど、「ウジヒョンとハニヒョンにはもう相談したけど、でも、役には立たなかった」と事実を述べたら笑われた。
なるほどと思ったのは、「ボノナお前、相談する相手間違ってるって」と言ったディエイトの、少し辛辣だけど的確な言葉だった。

「ウジヒョンなんて、なんでもかんでも理性と根性でどうにかするタイプだし、バックにいつも全肯定するホシヒョンがいて、本気だせば戦略的にだってなれるのに、あんな負け知らずな人に悩み相談したってダメだって。それにハニヒョンなんてさらに上行くじゃん。儚げに見える笑顔で全部なぎ倒して結果全部押し通して行くタイプなのに。悩み相談なんてしたって、2人とも気にすんなって言って終わりそうだよ」

思わずバーノンが、いや、ちょっとは役立った気がする......って、フォローしそうになったほど。
でも納得はした。何かがあっても揺るがないと言えば揺るがない2人だし、何かあった時に自分が汚れることにも厭わない2人で、それを誰かに見られたって知られたって、本気で笑っていられる2人だから。
ある意味ではバーノンの悩みを、一番理解できない2人に相談したような気もする。

じゃぁ誰に相談すればいいんだ......って聞けば、ディエイトは「ムンジュニだけじゃないことは確実なんだけど......」と言って、長いこと悩んでくれた。

「うちのメンバー、よくよく考えると普通から結構かけ離れてるよね。一番まともに見えるシュアヒョンがあれだし......。でもまぁ、一番苦労してるクプスヒョンだと思う」

そう言われるとそんな気もするけれど、でも頭のどっかで絶対違うと警鐘も鳴る。
なんとなく、勝手に普通じゃないことは苦手なんじゃないかと思うから。だけどあのユンジョンハンと長く続いてるんだから、ある意味普通ではないかもしれない。

「クプスヒョン、ちょっといい? 相談があるんだけど」

思い切ってそう声をかけたのは、たまたまカトクでエスクプスが「誰か飯つきあう人」と言っていた時。
バーノンが個別に「相談がある」ってカトクしたら、エスクプスは早々に「はい締め切った」と言って、みんなから「早すぎる」とか「ケチくさい」とか色々言われていたけれど、「俺が言った時に瞬間手をあげないからだろッ」ってキレていた。
バーノンのことなんて、一言も言わなかったのは、気遣いなのか、たまたまなのか。

「ヒョンは、なかったの? 俺みたいに、アイツのこと、大事だけど、ぐちゃぐちゃにしたいとか思うこと」

バーノンの、ほぼぶっちゃけな感じの相談に、エスクプスは頭を抱えてた。
それから「え? お前これ、素面では無理だって」って言いながら、とりあえず飲むことになったけど、飲んだって解決するなんてバーノンには思えなかった。

適当に頼んだ料理が揃うまでに、焼酎が2本も空いた。でもエスクプスは全然酔ってるようには見えなくて、でも正直なところ、答えは期待してなかった。
自分だって相談してる内容が内容だとは思ってたから。

「グチャグチャにしてみたいって言ってもいいし、言わずにしてもいいと思う」

いやでも酔っていたのかもしれない。そんなことを言いだしたエスクプスも、ついでに自分も。だってなんだか、自分が言った癖に、不道徳なことを言うヒョンだなって酷いことを思ったから。

「それに絶対、お前だけじゃないって。1人じゃ恋愛もセックスも、できないんだって。相手だって同じぐらい、色々考えてるって」
「でも、俺の相手、ハニヒョンじゃないよ? アイツだよ?」

姑息な素振りを見せたりはする。でも実際はそんなこと全然なくて。
ディノとだってよく張り合って見せる。でも結局は譲ってあげてることも知ってる。
キレイなものを見て、キレイだと言えるその心に、震えることすらあるのに。

「ハニのこと、なんだと思ってんだよ。アイツだって、同じだって。俺らだって、最初から今みたいな関係じゃなかったもん。俺らがどんだけ歩み寄ったと思ってんだよ。バカみたいにお互い気遣って勝手に傷ついたことだってちゃんとあるって」

いつだって大人に見えてた。そんな2人にだって色々あったんだとしても、それでもやっぱり、自分たちとは違う。

「なぁ。言っとくけど、俺だって苦労したからな。相手はあのユンジョンハンなんだぞ? 本気で天使みたいな時もあるし、悪魔かっていう時もあるし、どうしたって皆んなのユンジョンハンだしな。だけどそれがどうしたって思うしかないんだって。自分じゃない誰かとアイツが付き合うとかは想像できないししたくもないし、それならどんな事があったって、自分たちでやってくしかないんだって」

言いにくいことだろうに、それでも弟のために言うと決めてくれたからか、エスクプスはガンガンに自分で酒を注ぎながら、話してくれた。

「それにこれからだって、俺たちにも色々あるんだよ。ケンカだって仲直りだって、きっといっぱいするんだよ。それこそ色んな意味で失敗重ねてきてんだよ。セックスだって、簡単に気持ちよくなれるとか思ってたら蹴躓くんだって。一瞬で朝とかになってるドラマとは違うんだから。でもそういうのも、2人で試して頑張って失敗して謝って提案して宥めて踏ん張ってって、全部やっていくしかないんだって」

エスクプスだけじゃなく、バーノンだって飲んだ。だってやっぱりこんな話、素面じゃ無理だったから。
「それからお前、シュアんとこにも行けよ」
なんでかそう言われた。
素直に問い掛ければ、「だってお前まだ、俺の言葉だけじゃ半信半疑だろ? 背中なんて全然押されてないだろ?」って笑われた。
確かに、ヒョンたちも苦労がなかった訳じゃない。恋愛なんてそういうものかもしれない。判ったのはそれだけで、もちろんそれだけでも凄いことを話してくれたんだろうけど、バーノンの背中は多少押されたかもしれないけど、前につんのめるほどでもなかったから。

バーノンにとってジョシュアは、いつだって優しいヒョンだった。
困った時は当然のように助けてくれて、お前のペースでやって行けばいいよって、いつだって寄り添ってくれるヒョンだった。
だから今回だってきっと、背中を押すっていうよりは、その背に手を添えてくれて、優しく擦ってくれて、励ましてくれるんだろうって、勝手に思ってた。
でも一番、本気で背中を押されたかもしれない。というか、どちからというと吹っ飛ばされた感じ。

「は? お前何ふざけたこと言ってんの?」

滅多に見せない表情に、言葉使いに、キツイ言い方に。
怒られてるのは判っても、怒ってる理由なんて判らなかった。
でもすぐに、優しいからこそ怒ってるんだって判った。
優しいばかりの人なのに、ちゃんとしてる人でもある。何よりその優しさは常に弟たちに向いていて。

「ボノナ、どっかの知らない女が相手だって言うなら、俺はお前のことを慰めてたかもしれないけど、お前が悩んでる間、スングァニが傷ついてなかったとでも思ってるのか? あんな、感受性豊かで人の心に寄り添うことが自然にできる奴で、お前のことばかり見てるのに」

でも、でもそんなはずない。だってアイツはいつだって幸せそうで、恥ずかしそうで、一緒にいられるだけでいいみたいな空気を出して、アイスコーヒー一つで誕生日プレゼントを貰ったみたいに喜ぶような奴なのに。

「だってヒョン。アイツはいつもと変わらないよ。ずっと笑ってる」
「当たり前だろうが。やることやった後に相手に悩まれりゃ。どうでもいい相手なら見切りつけて次に行けばいいけど、スングァニにはお前しかいないのに」

幸せそうに笑うから、手が出せなかった。
全然出したかったし、油断したら移動車の中だってキスしそうになりそうで、サングラスにヘッドホンにニット帽で自分の視線も欲望も隠して我慢してたのに。

「お前が悩めば悩むだけ、スングァニは傷ついてる。お前が足掻けば足掻くだけ、スングァニは笑うしかなくなってる。お前がバカみたいにグダグダしてる間、スングァニはずっと心で泣きながら笑ってるんだぞ」

言われた言葉は全部ほんとのような気もした。でも、そんなはずはないって気もする。
だってそれなら、あんなに幸せそうに笑うやつなのに。俺にだけは何も隠せないみたいな顔をするのに、何もかも鮮やかに俺を騙してたってことになるから。
そんなことない。そんなことは絶対ない。そう思うのに、ジョシュアはバーノンに、嘘なんてつかないことも知っていて。

柔らかそうに見えて、伝えなきゃいけないって思ってることは絶対に言ってくれるヒョンで、もちろんその後もちゃんとフォローはしてくれるけど、ただ笑ってすべて誤魔化してしまうようなヒョンでは絶対なくて。

「チンチャロ?」

バーノンがそう聞けば、ジョシュアがやっといつものように笑ってくれた。
「俺行かなきゃ」ってバーノンが呟くように言えば、「スングァニは最近、1人でスタジオに籠ることが増えたんだよ」と教えてくれた。
避けられているのを感じたくなくて、寂しそうなのがバレたくもなくて、歌の練習をしてると思っていてもらいたくて、1人でスタジオにいるという。そんなこともバーノンは知らなかった。
向かった先には果たして、アイスコーヒーを横に、スマホを手に、スタジオの隅に、誰かの歌を口ずさんでるスングァンがいた。

「わぁ、ボノナ、どうしたの?」

駆けこむような勢いでやって来たバーノンに、スングァンは驚きつつも喜んだ顔を見せてくれて、それはいつも通りのスングァンで、きっと昨日までの自分なら何も気づかなかったはず。

『お前、何してんの?』そう言いかけた言葉を飲み込んで、「迎えに来た」と言った。
笑ってるスングァンに手を伸ばして、そのまま抱きしめて、「ごめん、俺、迎えに来たんだ」ってもう一度言い直したら、笑ってたはずのスングァンが泣き出した。
それに驚いたのはバーノンよりも、本人の方だったかもしれない。

「か、悲しくないよ。こ、困ってもないよ。ちょっと驚いただけだよ」

そう言い訳のような言葉を口にして、その後は「大丈夫」とか「なんでもない」ばかりを繰り返してた。
だからそのたびに、抱きしめる力を強くした。
本当はたくさん、「ごめん」とか「愛してる」とか、言わなきゃいけない言葉は山とあったはずなのに。

「いつか、一緒に暮らそう」

いつものスングァンなら絶対に、「いつかっていつだよ」って言うはずなのに。
もう何も言えないっていうのは本当なのか、何度も頷くだけだった。
きっとそのいつかを、スングァンは待っていてくれるんだろう。

「いつだって、俺、お前のこと、押し倒したいよ」

それだって勇気を持って口にしたのに、泣いて抱き着いてきているスングァンに背中を結構強めに殴られた。

「俺のことが、負担なんだと思ってた」

謝る必要なんてないのに、スングァンが「ごめん、俺が重たいの判ってたから」と謝る。
違うのに。そんなこと、全然ないのに。バーノンが動けなくなってる間に、スングァンはどれだけ不安になって勝手に反省して、でも笑って毎日を過ごして1人で泣いてたんだろう。

「俺の方が、このままじゃ負担になると思ってた」

バーノンがそう言えば、スングァンは驚いたけど、でも、「ど、どこがだよ。お前のどこが負担なんだよ。全然だよ。負担のふの字も感じてないよ」と文句を言いながら泣くっていう器用な様子を見せていた。

「俺が好きすぎるからダメなんだと思ってた」とスングァンが言えば。
「俺の本音を知られたら嫌われると思ってた」とバーノンが言う。

でも正確には今もそう思ってる。そうも言ったら、スングァンは「嫌っても、また好きになる」と抱き着いてきてくれたけど。

隣りに座る。手を握る。時々その手に力を籠める。
バーノンはスングァンの横にいることが増えた。2人きりの時にはそのまま抱き寄せたりすることもある。傍目から見れば、何かが激しく変わったってこともないかもしれない。

でも2人のことを、2人でよく話すようにはなった。
時々、朝まで過ごすこともある。
大人過ぎる発言をしても、バカみたいなことを言っても、スングァンは嬉しそうに笑ってる。

持ってたはずのパスポートを気づけば持ってなくて飛行場でウロウロしてたら、物凄い顔で怒ってくるくせに、うっかり抱き潰したってなんでか怒りもせずに、やっぱりスングァンは嬉しそうに笑ってるけど............。

恋も愛も正直まだ判らない。でもきっと、スングァンはずっと横にいて、笑ってくれてれば嬉しい。それだけは判ってる。

The END
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