妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

27時がすぎていく

 

練習終わりに全員で集まってミーティングする。昔からの習慣。

今はもう成長したディノが司会をやってくれたりするけれど、ずっとずっと昔はエスクプスの仕事だった。

今ではもう15分もかからない。気になる箇所や、やりたいことを確認する程度だから。新しい曲を始めた時や、カムバ前には時々紛糾したりして、時間がかかることもあるけれど。

もうすぐ27時になろうかって時、隣りに座ってたジョンハンが、クスクスと笑い始めた。両隣りにいるエスクプスとジョシュアにだけ聞こえるぐらいの声で。

疲れ過ぎてる時と27時が重なる時、そしてこのミーティングが重なると、ジョンハンはよくこの笑い方をする。

付き合いが長いから、今ジョンハンが何を思い出して笑ってるかは判る。何度もその話を聞いたからってのもあるけれど。

よくいつまでも同じことで笑えるなと思うけれど、ジョンハンとジョシュアが参加しはじめたばかりのことだったから、衝撃的で忘れられない出来事なのかもしれない。

緑の壁の練習室で、あの頃も毎日必死に踊ってた。でも、エスクプスにとってはみんなをまとめる立場がまだまだ負担だった頃のこと。新しいメンバーも増えてやる事が多くて、年下のメンバーたちの様子をあまり見てやれてなかったりもして。みんな少しずつ不満が溜まっていたのかもしれない。

「そろそろ最後〜」

そう言えば、スングァンが物凄く勢いよく手をあげてきた。必死すぎて唇を突き出している。よく誰かに文句を言う時と同じ勢いと顔つきだから、何か言いたいことがあるんだろう。

あぁしまった......と、みんなの話しを聞いてやれてなかったことを後悔しつつも「ブスングァン」と名前を呼んでやれば......。

「ボノニにもっと、俺のこと大事にしてほしい」

スングァンは手をあげた時の勢いのまま必死な顔で言い切った。バーノンはディノを挟んですぐ隣りにいたというのに、何故か全員に向かって言い切ったスングァンだった。

今日のミーティングでそのことを、いつから言おうと思っていたかは知らないが、今思いついた訳ではないようだった。

だけど、その思いは二人の時に言って欲しいし、二人の時に言った方が良いんじゃないか......と思わなくもない。

エスクプスが頭を抱えそうになっていた時、ホシが黙って、でもスングァンに負けないぐらいの勢いで手をあげた。一人しかあげてないからそんなにアピールはいらないのに、何度も何度も手を突き上げて、珍しく笑ってもなくて真剣な感じ。

あぁきっと、ここでそんなこと言うなよ......って言ってくれるんだな......と思いつつ、「クォンスニョン」と名前を呼んでみれば......。

「俺はジフニに優しくしてほしい」

いや、お前もか.........。エスクプスがクラクラしてたら、スングァンがまたしても手をあげてきた。
謎に真面目に挙手制が守られているが、いや、お前まだ何か言うつもりなのかよ......って感じ。

ちょっとどうやって収束させようかと考えていたというのに、「ブスングァン」と勝手に名前を呼んだのはウジだった。

無表情な感じで真面目な顔を装ってはいるけれど、これはもう完璧に面白がっている時のウジだった。

「ボノニは俺に、最近ひどすぎると思う」

いやだから、そんなことは二人の時に......と言いたかったけれど、ホシがまた手を必死にあげていて、ウジが自分に言われてるってのに何も気にせず「クォンスニョン」と名前を呼んでしまう。

「ウジなんていつもいつもいつも、俺にひどすぎると思う」

スングァンもまた手をあげてるし、ホシも何故か発言したばかりだというのに手をあげるし、それならまとめて喋っとけよって感じ。しかし気づけば謎にジュンも手をあげてきた。

「ムンジュンフィ」

ウジがジュンの名前を呼ぶ。

「俺も誰かを愛したい」

......いや、そんなことを手をあげて言われても......って感じだろう。

だけどジュンもきっとウジ同様、楽しくなってきたんだろう。そしてウォヌまで手をあげてきた。てんでバラバラに見えて、96ラインの4人はそういうとこがある。

しかし次に名前を呼ばれたのは「チェハンソル」、こんな時に手をあげることは珍しいのに、いつのまにか小さく手をあげていたようで......。

「全然ひどくないし、優しいだろ」

どうやらバーノンは反論のために手をあげたらしい。
スングァンはそれを聞いて、物凄く必死に手をあげる。なんなら少し前のめり。ホシも必死だけど、スングァンの勢いには負けたらしい。

「ブスングァン」

ウジが名前を呼ぶのとほぼ同時か少し食い気味で、「どこがだよッ。昨日だって俺が待っててって言ってるのに、先に行っちゃったじゃん」と言う。
どうやらスングァンは昨日から怒っていたらしい。
バーノンも少しムッとしたように、また手をあげる。

しかし次に名前を呼ばれたのは「チョンウォヌ」。いや、お前はまだ手をあげてたのか......って感じ。

「いや、俺も誰かに」

どんな言葉を続けようとしたのかは判らない。何せウォヌの発言を遮って、ミンギュが「ヒョンのことは俺がしっかり大事にしてるじゃんッ」と言い出したから。
そしてホシやスングァンやディノやドギョムにまで、「ちゃんと手をあげろよッ」と怒られていた。

いや、そこじゃないだろ......。そこじゃない気がする......。

ジョンハンとジョシュアは二人して、ポカーンって感じで見てるだけ。

その間にもホシが必死に手をあげている。スングァンもバーノンも、何故かウジまで。
そして今度はジュンが、「イジフン」とウジの名前を呼んだ。

「キムミンギュはウォヌより俺を大事にしろ。俺に優しくなさすぎる。昨日も俺にご飯のおかわりをくれなかった」

「何言ってんだよ。自分の分はしっかり食べてたじゃんッ」

またもやミンギュがうっかり挙手を忘れて、皆に責められていた。それにしても謎に守られる挙手制を、褒めればいいのか、バカにすればいいのか。

なかなか自分の名前が呼ばれないスングァンは我慢ができなくなったのか、何故かバーノンとスングァンの間にいたディノに対して手をあげはじめた。そうしたらディノがそれに応えたくなったのか、「ブスングァン」と呼ぶもんだから、話はもっとややこしくなってきた。

「さっきだって一緒に帰ろって言ったのに、返事してくれなかった」

バーノンが手をあげる。ディノが「チェハンソル」と言う。

「さっきは頷いただろ。それに昨日の先に行ったっていうのだって、階段の下で待ってたじゃん」

「ブスングァン」

「そんなの、階段の下で待ってるなら玄関で待っててくれたらいいんじゃん。凄いショックだったもん」

「チェハンソル」

「玄関で待ってたら邪魔じゃん。それに待って欲しいならトロトロ準備してないで、さっさと出て来たらいいだろ」

「ブスングァン」

「なら一言、階段の下で待ってるからって言えばいいじゃん。それなら俺そこまでショックじゃなかったし」

「チェハンソル」「ブスングァン」「チェハンソル」「ブスングァン」

いやいやいやいや、それはもう間にいるディノが大変だろう。二人で話してこいよって感じ。

そしてそんな二人は置いといて、ホシが必死に手をあげてウジに対して何かしら訴えてるのに、ウジがふる無視してそれに対しての返事はせず。ウォヌの発言はミンギュがやっぱり挙手せず否定して怒られて、ドギョムは面白くなりすぎたのか笑い転げてる。

ジュンは謎な動きをしながらも、地味に手をあげてアピールしてた。

いつもならエスクプスを助けてくれるドユニがちょうど風邪をひいてていなくて、収拾がつかなくなってきて、エスクプス自身も諦めかけた頃、ウジの名がまた呼ばれたらしく、「おかわりだったからってなんだよ」とまだご飯をくれなかったミンギュに文句を言っていた。

そしてとうとうミンギュも学んだようで、手をあげて、何故かそれだけで皆から褒められていた。

「おかわりはおかわりでも、もう二回おかわりした後だったじゃん。なんでそんなに食べるんだよ」

ウジが手をあげる。「成長期だからだろ」
ミンギュが手をあげる。「成長なんて1ミリもしてないじゃん」
ウジが手をあげる。そしてそのままミンギュに殴り掛かった。

「殴らせろ。キムミンギュッ」

挙手制を守らなかったウジに非難の声もあがったけれど、もはや挙手制どころの話じゃない。何せ乱闘騒ぎになりかけていたから。ドギョムがウジを頑張っておさえこもうとしていたけれど、ウジの勢いに負けそうになっていた。ウォヌは誰を応援してるのか、ひとり「頑張れ頑張れ」と囃し立てている。楽しんでいるんだろう。ジュンは何故かミンギュの腕を後ろから押さえていて、これまた謎に楽しんでいる。そしてもっと謎なのがホシだった。何故かウジの前で両手を広げて立っているから。俺の胸に飛び込んで来いって感じで......。

全体的に謎だし、五月蠅いし、わちゃわちゃすぎるし。練習終わりの27時とは到底思えない。

諦めきったエスクプスの両隣りで、ポカンとしてたジョンハンとジョシュアが楽しそうに笑いはじめていたのが、唯一の救いだったかもしれない。

結局最後は、乱闘騒ぎに気づいたスングァンとディノが、「ケンカはダメだよッ」「ヒョンッ、ケンカはやめてよッ」と年下パワーで止めてくれたけれど、どう考えたって、原因はスングァンとバーノンだった気がしないでもない。

謎な挙手制も不思議だけれど、揉めた後に各自が反省点を述べていくのも変わってるかもしれない。

「ちゃんと待ってるし、場所を移動する時はちゃんと言うよ」

バーノンが手をあげながら次から気を付けると言えば、「俺もトロトロしないように頑張る」とスングァンが言う。

「俺はどんなジフニでも好きだ」

謎にそんなことを言ってるホシはやっぱりふる無視されていたけれど、各自「ごめん」だったり、「次から気をつける」だったり、「みんなで仲良くしよう」だったり、それぞれの思いを口にして、ミーティングはドタバタした割にはそれなりに平和に終わりを迎えた。

その後も定期的にミーティング終わりで謎な問題提起がされることがあったし、その度に驚かされたり、驚かされたり、驚かされたり......。

何せジョンハンとジョシュアが驚いていたのは最初の頃だけで、そのうち楽しみはじめて、わちゃわちゃにするのもいつのまにかお手の物で。

合流したばかりの頃はジュンに通訳してもらっていたディエイトも、カタコトで話しながらも時々「鬱陶しいよね」とかさらっと暴言を吐いて驚かせてくれた。今はまだカタコトだからだと結構信じていたのに、カタコトでなくなってからもディエイトはさらりと問題発言をすることがある。

「ホシヒョンとミンギュをトレードしよう」

ほら今も、何げにぶっこんでくる。
理由は、ホシが自分の部屋だけじゃなく、リビングにまで物を溢れさせているからだとか。
きちんとしてよ......とか。ダメじゃん......とか。そんなことを言うこともなくトレードを持ち出すあたり、ディエイトの性格が見てとれる。
けれど追い出されそうになってるっていうのにホシは手をあげて「賛成!賛成!」と喜んでいる。ミンギュとトレードなら、ウジと同室だからだろう。
ミンギュも成長したからか、手をあげて発言。

「ダメだよ。俺はどこでもいいけど、ウジヒョンは俺がいないと生きていけないもん」

ホシ以外の全員が納得。ウジ自身も頷いていて、ホシが一人でガビーンとなっていた。

結局ホシはリビングに自分の荷物を出さないこと。そして自分の部屋も片付けること。そうすれば時々ウジの部屋に泊まりに来てもいいと、なぜかミンギュに諭されていた。

楽しくなってきたから、エスクプスだって手をあげる。

「ハニが最近俺に冷たい」

エスクプス的にはぶっこんだつもりなのに、ジョシュアが静かに手をあげて......。

「俺はエスクプスをセクハラ事案で訴える」

逆にぶっこまれた......。

事情を知ってるジョンハンが大爆笑してて、みながキョトンとしてて。

だってジョンハンとジョシュアがまさか気分転換に部屋をトレードしてたなんて知らなくて、ジョンハンの部屋に忍び込んだつもりだったのに、眠ってたジョンハンをしっかり抱き込んで寝付いて気持ちよく朝を迎えたら、ものすごい不機嫌なジョシュアを抱きしめていたという......。

いやその時も土下座したけど、思わずまた土下座したエスクプスだった。これでも統括リーダーなのに......。

楽しくなったのか、ジュンもホシもウォヌもウジも手をあげている。この問題児揃いの96ラインめ......って感じ。いつだってどんな時だって、なんだってどうにかしてくれる頼りになる96ラインなんだけれど、ふざける時はもの凄くふざけるから......。

「ハオは最近俺を愛してくれない」と、誤解を生みそうなことをジュンが言う。
「ウジなんて最近、手も握らせてくれない」と、真剣な顔でホシが言う。
「俺なんて最近、全然ヤ」

残念ながらウォヌが何を言いたかったのかは判らない。何せミンギュが「ワァァァァァアァ」っと叫んだから。当然みなから怒られたけれど......。

そして最後にウジが、「あ、言い忘れてたけど、明日から新曲に取り掛かるから」とぶっこんできた。

全員が一瞬にして、「冗談だろ?」って顔。いや、やる気いっぱいのディノだけは喜んでいたけれど.........。

こうしてまた、27時がすぎていく。

 

The END
5458moji