泣いていたら笑われる。当然慰めてもくれるけど。
ドギョムは泣いていた。
実は怒ってたのだけど、悔しいのか、悲しいのか、自分でも判らないけど泣けてきて、涙が出たら止まらなくなった。
「あぁ、もうほら、こいって」
そう言ってミンギュが抱きしめてくれる。
自分が抱きしめれば泣き止むとでも思っているのか......と言ってやりたかったけれど、とりあえず抱きしめられておく。だってあまりにも悲しいから。悔しいから。情けないから。
「なに? どうしたの? 仕返しする?」
そこにディエイトがやってきて、泣いてる原因によっては仕返ししてきてくれるという。
最初の最初は怒ってたけど、怒ってた相手は自分だったから、結局は泣いてる原因も自分てことになる。
昨日スタジオで、意気揚々と歌って、楽しい気持ちのままドギョムは宿舎に帰った。帰ってからも気持ちは高揚したままで、自分の部屋でも歌ってた。
今日になってスタジオに来たら、フラフラになってたウジヒョンがいて、潰れてるクプスヒョンたちがいて、その時にスタッフさんたちから話を聞いたのだ。ドギョムが帰った後にエスクプスからウジまでの7人で飲みにいった話しを。
でも一緒に行けなかったから泣いてる訳でもなくて、飲みにいった原因を聞いたから。
「昨日、ハニヒョンが泣いたって。俺、何も知らなくて」
ドギョムの目から、まだまだ涙が零れてくる。
「俺何もできなかった」
何が悔しいのかって言ったら、何もできなかった自分。知らなかったとはいえ、一人だけハッピーだった自分。
全然違う場所にいて、その日一日一度もすれ違ったりしてなかったなら、これほど辛くはならなかったかもしれない。
だけど昨日、ドギョムの前にブースに入ってたのはジョンハンで、「ごめんドギョマ、俺ちょっと休憩するから、先に入って」と途中で交代したのに、なんであの時に「大丈夫?」って、「どうしたの?」って、「調子悪い?」って言葉が出なかったんだろう。なんで本当にただの休憩だと思ったんだろう。なんで自分だけ意気揚々と歌って、ウジヒョンに褒められて喜んで、ルンルン気分で帰ってしまったんだろう。
「いつもハニヒョンは俺のこと心配してくれるのに、俺、何も言ってあげられなかった」
考えれば考えるほど、悲しくなってくる。
話しを聞いて慌ててジョンハンを探せば、「飲みすぎて頭痛いけど、スッキリした」と、いつものように笑ってた。
『ごめんヒョン。俺、何もできなかった』
あんまりにも悔しくて、そんな言葉すら言えなかった。ただドギョムが悲しんでいると知ったら、泣いたと知ったら、それでまたジョンハンを苦しめるかもしれない。そう思って誰もいない部屋に籠って一人泣いてたら、ミンギュが来て、ディエイトも来てくれたのだ。
きっと何も知らないって顔で来てくれたディエイトも、だいたいは察して来てくれたんだろう。
「その時一緒にいなかったからって、どうだってんだよ。ハニヒョンだって判ってるよ。お前がいつも、ハニヒョンのこと思ってるのは」
そう言ってくれたから。
「俺が中国にいる時も、毎日毎日連絡くれて、大丈夫かって言ってくれるだろ? だから俺は辛くてもしんどくても、一人でも頑張れるんだよ。お前の思いは国を超えたってちゃんと届いてるんだから」
慰めてもくれるけど、なんだかその言葉にも嬉しいからか泣けてくる。
「あぁ、もうほら、余計泣いてんじゃん」
そう言ってミンギュがまた抱きしめてくれる。それもまた嬉しくて、また泣いてしまうけど、ミンギュとディエイトが、「お前のせいでまた泣いた」「慰めてんだろ」と言い合いをはじめたから、少しだけ笑いそうになる。
「ごめん。もう大丈夫」
グズグズになった鼻をかんで、だいぶ赤くなった目をトイレで洗って。
三人で戻ってみれば、ジョンハンに捕まった。
「ヤー、ドギョマ。何泣いてんだよ。お前はほんとに......」
泣いてる原因が自分だなんて知らずに、ジョンハンがドギョムの顔を覗き込んでくる。
何もできなかったのに、自分には気遣ってくれるから、やっと治まった涙がまたあふれ出てきて......。
ミンギュとディエイトが呆れて笑ってた。
潰れてたはずのエスクプスも起きだしてきて、「どうした?」と聞いてきてくれるから、「だって、みんなが優しいんだもん」とまた泣いて......。
結局ジョンハンの涙の理由は判らないままだったけれど......。泣いて泣いて、しばらくしたら笑ってたドギョムだった。
The END
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