妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

ユンジョンハンの新しい日常

 

もっと劇的に変わると思った日常は、「ジョンハンさん、起きてください。ジョンハンさん」っていう、聞き慣れたマネヒョンの声からはじまった。
今から音楽番組に行く訳でも、スタジオに行く訳でもないのに、これまでと変わらず起こしてくれる人がいて、自分でつけておいた目覚ましで起きられなかった事実にさらに驚いた。
しかもスングァンは海外に出てるから、マネヒョンが来たのはジョンハンを起こすためだけ......。
「あれ? 俺の携帯は?」
部屋の1番奥にありましたよ。とマネヒョンがそれを手渡してくれる。
「着替え前にシャワーしますか? 車出すんで、まだ余裕ありますよ」
その言葉に甘えてシャワーした。出てきたらコンビニで何か買って来たからと言われて、車の中で朝食を取った。
「今日から俺には、誰もつかないんじゃなかったっけ?」
しっかり送ってもらいながらも思い出して聞いたら、「はい。そうですよ」とマネヒョンは笑って、「会社には内緒ですよ」とも言った。
でもどうしても気になったから来てくれたらしい。さすがに初日から遅刻はしないだろうと思っていたけれど、来たら爆睡してたから、やっぱり来て良かった......とも。
「お昼はどうしますか?」
そうも聞かれて、思わずいつもの調子で「なに?」って聞いてしまう。いつもは3つぐらいの選択肢から好きなものを選べるシステムだったから。
でもしばらくは、そのシステムから自分は外れるはずなのに......。
「今日から働く場所、最初の研修期間は別場所らしいんで、食堂とかないんですよ。近くにお店もないから、買ってくるか出前かって言ってたじゃないですか」
さすが。ジョンハンが言ったはずの言葉をマネヒョンの方がしっかりと覚えてる。
あぁ......。そうだったっけと思い出しながらも、「適当に出前取るよ」と言えば、「初日から高額なものとか、いつもの調子で多めにとか、ダメですからね」とも言われた。
もちろんそれにも「わかった」と答えたジョンハンだったけど、幾らからが高額なのか......についても聞いとけば良かったと思った時には、もう昼前で、側には誰もいなかった。
気を使って限りなく質素なものを頼んだら、逆に目立っていたかもしれない。
「え、それしか食べないんですか?」と、年下の新しくできた上司からは言われたから。
帰りはまたマネヒョンが迎えに来てくれた。タクシー呼ぶからいいのにと言ったら、職場にタクシー呼ぶ人はいないと思いますけどと窘められた。
社会人はなかなかにハードルが高い。だけどそんな暮らしにもすぐに慣れるだろう。
「大丈夫だった?」って心配するカトクが山のように届いてる。
メンバーからも、スタッフヌナたちからも。
「友達できた?」
学校じゃあるまいし......みたいな質問も来る。
「何時ぐらいに終わる?」
なんでかセブチのメンバーたちが、ジョンハンの仕事終わりに集まろうとするもんだから、マネヒョンたちは当然のように悲鳴をあげていた。
ジョンハンが笑って定時を教えたら、「え、定時に帰る気なんですか?」と、ちゃんと働いたことのあるスタッフヌナたちに聞かれた。帰る気満々でいたけれど、社会人だとそうはいかないらしい。
やっぱりハードルは高い。
でもほとんど眠らずに、睡眠時間は移動時間と待ち時間だった日常に比べれば、きっと大丈夫だろう。
とりあえず明日こそはと目覚まし時計をセットする。
もう少ししてセブチがワールドツアーに出てしまえば、コッソリと迎えにきてくれるマネヒョンだってついて行ってしまうはずだから。
ちょっとだけ不安な、でも新しい世界がジョンハンの前には広がっていた......はずなのに、なんでか定時になると車で迎えに来る男がいた。
「いやお前、仕事は? 練習抜けて来てんの?」
さすがに連日だと気になるわとジョンハンが言えば、戻る時間に併せて弁当やらちょっと高級なお菓子やら、とにかく大量の差し入れをして許して貰ってるらしかった。
「それに俺ケガしたから、ちょっと多めに休憩あるし」
エスクプスは嬉しそうに笑ってケンチャナとか言うけれど、ジョンハンの方が大丈夫ではない。定時に帰って良い訳ではないはずなのに、年下の先輩が「お迎えの方来てるんで、そろそろ」とか、定時前に帰る準備を促されるから。しかも連日。同じ部署の先輩ヌナたちにはドラマみたいだと羨ましがられるが、社会人としてはどうだろう。
「俺、今は一般人なんだからな」
社会人なんだから毎日定時で帰れる訳もないんだしとまともな感じでそう言えば、「もうすぐ俺らワールドツアーはじまるもん。まともに会えなくなるもん」とエスクプスはお前は寂しくないのかよと拗ねそうになる。
思わずため息を零しかけたのは、その似たような言葉を聞いたばかりだからだろうか。
「ハニヒョン俺、泊まりに来た」と言ってやって来たのはドギョムとバーノンで、その前日からすでにホシはいる。
みんな言うことは一緒で、「だって俺ら、もうすぐワールドツアー出ちゃうもん」だった。
こりゃすぐにエスクプスにもバレるなと思ったのに、珍しく誰も言わないらしい。言ってしまえばエスクプスが俺もと言い出すか、逆にジョンハンを連れ出すかして独り占めしてしまうから......ってことだったけど、いつかはバレるだろう。
どうせホシあたりがカトクに、お泊り写真とかを後日あげるだろうから......。
「なぁ、せめてお前、会社のど真ん前に車停めるなって。普通はもう少し離れた場所とかで待つもんなんだって」
「え、そうなの?」
どこの世界に恋人が会社のど真ん前まで車で迎えに来るやつがいるんだよ......と言えば、「こないだドラマで俺見たもん」と言う。どうやら先輩ヌナと同じドラマを見ているらしい。
「ドラマの世界だろ。そんなの」
と言ったのに、「俺とお前なのに?」と言い返された。
まぁ確かに、顔面の強さで言えばドラマの世界の人間の方に偏ってはいる。
「俺が一般人やってる間は、お前も一般人の彼氏やれよ」
そう言えば、なんだか楽しくなったのか、エスクプスは嬉しそうにしてたけど......。
ちゃんと、「ドラマの中に出てくる一般人は、絶対一般人じゃないからダメだぞ」と釘をさしておいた。
セブチがワールドツアーに出てしまえば、少しは寂しくなるかもしれない......と思ったのに、まだ飛行場にも着いてないはずの時間帯から、セブチのカトクは荒れに荒れていた。
ホシがジョンハンの家にお泊りしたことを自慢して、ドギョムとバーノンも当然のように俺等も行ったと自慢して、それを知ったエスクプスが「完全犯罪かよ」と怒り出し、ウジは「俺は誘われたけど断った」とか、ウォヌは「俺とミンギュは遊びにだけ行ったよな」とか、ジュンは「俺中国〜」とか。
ジュンがタイミングよく参加したから、マンネラインは喜んでそっちに食いついていたけれど、「俺、ジョンハンの家に一泊してから、飛行機に乗ったらダメ?」とか、ダメに決まってることをエスクプスが言い出してたり。
それでもジョンハンの日常は落ち着いたはずなのに、「あの......、お迎えの方が来られたみたいで......」とか、いつまでたってもジョンハンにビクついた感じの年下の先輩が言う。
エスクプスは異国なはずなのに......。
それにエスクプス以外なら、どうしてそれがジョンハンの迎えだと判るんだ......とか思ったら、会社のど真ん前に車を停めていたのは、モネクのヒョンウォンだった。
「よ」
いや、「よ」じゃねぇわ......って感じ。
でも聞けばエスクプスから頼まれたらしい。自分はワールドツアーに行ってしまうからって。
結構あちこちに頼んでいたのか、次の日にはまた別の人がきた。やっぱりジョンハンの迎えと一発で気付かれたのは、自称一般人だが韓国の8割以上が絶対知ってるであろうナPDだったから。
「いや、俺も結構忙しいんだけど」
と言いつつも、エスクプスに頼まれたから後1回は来るという。
ワールドツアーから戻ってきたら、当然エスクプスはまた来るだろう。
ヤバイな......。
だいたい2年弱。長いかもしれないと覚悟してたのに、案外短いかもしれない。
そしてそのほとんどに、エスクプスはいる気がする。
遠い異国の地で、「俺も泊まりたい」と言いつつスングァンにヘコヘコしてるエスクプスがいるだなんて知らなかったジョンハンは、新しい日常のはずなのに......とちょっと首を傾げてた。

The END
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