妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

見上げる空は

テンションあがった原因はこれ......

ディノちゃんのせいで? せいで。
テンション上がり過ぎたので、とりあえず出してしまった。

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見上げる空は

横に続く穴にも見える入り口は、はじめて見るような場所だった。
もしかしたら今度こそ出口かもしれない。だけどディノはそのドアを開けなかった。
つい先日、「ドアだッ! 出口かもしれないッ!」と喜んで手にかけて、後ろから「バカッ! チャナッ! 開けるなッ!」って叫んだヒョンたちの声を聞きながら開けてしまったそこからは、ゾンビが驚くほどに出てきたから。
「なんで閉めてこないんだよッ!」とも言われたけれど、叫びながらも逃げるのに必死で、開け放ったままのドアのことなんて考えもしなかった。
怖がりなのに、自分はまだ生きている。
ゾンビと戦うことにも慣れてきた......と言いたいけれど、それはきっとヒョンたちに守られているからで............。
それでも「お前は怖がりだから、その分危険察知するのが早いんだよ」と言ってくれる。
形ばかりに握ったピストルは、連射しないタイプのものだった。
あんまりにも怖がり過ぎて、ゾンビが出てくると弾がなくなるまで打ち尽くしてしまうからだろう。
いつだってホシが囮になってくれて、ウジが力業でゾンビを押さえつけて、「ほら撃てッ」と言われてやっと撃てる。自分でも情けなくなるけれど、それでもヒョンたちはディノに良くやったと褒めてくれる。
バーノンは逃げ足が早くて、スングァンはディノと同じかそれ以上に怖がっている。
ジュンとディエイトがどこかから物干し竿みたいな長くしっかりとした棒を手に入れて来てからは、スングァンはそれを手放さなくなった。
ゾンビと一定の距離が取れることに安心したんだろう。
「邪魔じゃないか?」
そうジョシュアあたりに言われていたけれど、どうしたって近くでは戦えなくて、でも逃げてばかりはいられなくて。
「お前でも撃てるよ」
ジョンハンはそう言ったのに、スングァンは銃に手を伸ばそうとはしなかった。
撃てなくはないはず。慣れてしまえば扱いだって簡単で。
でももしヒョンたちの誰かがゾンビに噛まれてしまえば......。
「いい。撃て」
そう言ったのは、弟たちを守ってゾンビに噛まれたエスクプスで。
「クプスや。愛してる」
誰も動けなかったのに、ただそう言って銃爪に手をかけたのはジョンハンだった。
ディノは声も出せずに泣いて、スングァンは嘘だって言いながら泣いて。でも冷静に「泣いてもいいけど、次が来るぞ」って言ったのはホシで。
でもホシだって泣きながら銃を構えていたけど......。
逃げて、戦って、出口を探して。
無我夢中で走ってる間に全員でまとまっていたはずなのにバラけて。
気づけばミンギュの後ろに常に背中あわせにたって銃を構えてたウォヌがいなかった。
「ウォヌヒョンがいない......」
誰もが気づいてたけど何も言わなかったのに、哀しげに言ったスングァンがいた。
「これって、出口があるんだよきっと」
そう言ったのはディエイトだった。
鍵を守ってるゾンビたちがいて、鍵を解除する機械がある部屋を守ってるゾンビたちもいた。
きっと意味なんて理解してないだろう。
でも鍵を回せば閉じてた扉が開かれて......。
「ほら、やっぱり俺の言った通りじゃん」
そうディエイトは喜んでいたけれど、その扉を出ることはなかった。
ジョンハンのようにあっさりと、撃つと思ったのに......。「撃っていいよ、ヒョン」って本人が言ってるのに、ジュンはディエイトを抱きしめて離さなかった。
「ジュナ」
そう言ったのはウジで、ジョシュアもジョンハンもホシまでもが、抱き合う2人に銃口を向けていた。
撃たないでと叫んでたのはきっとスングァンで、ディノは何もできずに、ただ心臓を押さえてた。だってズキズキと痛む気がしたから。
2人とも失ってしまうのか。そう思った時、ミンギュが力任せに2人の間に割って入る。
ミンギュは何か言ったんだろう。声は聞こえなかったし、ディノからは見えなかったけど、ディエイトがミンギュに向かって頷いたから。
「ハオ、ハオッ」と叫ぶジュンの声がする。
引き離されて三歩ほど自分から遠ざかったディエイトは、そこで止まった。それから、少しだけ身体を震わせた。それは人でなくなる瞬間だったのかもしれない。でもそれが最期だった。
ミンギュが放った弾丸が終わらせたから......。
哀しいのに、立ち止まる暇もない。逃げて戦って、その扉を目指さなきゃいけないから。
でも闇雲に走る訳にもいかなくて、残りの弾数を数えながらも進んだ。
柱の影から、廊下の暗がりから、部屋の奥から。ゾンビたちは次々と出てくる。だから慌てずにいられることの方が少なくて、きっかけは恐怖に誰かが叫んだことだった。
横から大量に出てきたゾンビたちにホシが囲まれた。それを救おうとしてジュンがすべての弾を打ち切った。
「ジフナ」
ホシが最期に言った言葉がそれだった。
ガブリって音がしそうなほど、ホシがしっかりと噛まれた瞬間を見てた。ディノは思わずウジを見てしまった。だってウジは手に銃など持っていなかったから。
「スニョア」って、ウジが言った気がする。
でもそれな聞き間違いだったかもしれない。
ジョンハンがその手にあった銃を構えたのに、ホシは撃たれなかった。それはホシが「撃たないでよヒョン」って言ったから。
そんなこと言われたら、ジョンハンに撃てるはずがない。
打ち尽くした銃を手にゾンビと戦っていたジュンも噛まれた。増えに増えてくるゾンビたちをその身体で押し留めながらジュンが「ギリギリまで引いて撃てッ」って叫んでた。
誰かに身体を引かれて下がる。もうその場はごちゃごちゃで、誰が助かっていて、誰がいなくなろうとしてるのか、ディノには判らなくなりかけていた。
多分冷静だったのはミンギュぐらいで、「バラけるなッ」って叫びながら後退しながら、それから本当にギリギリまでゾンビたちと距離をとってから、ジュンのことを撃っていたから。
でも気づけばジョンハンもいなかった。そしてスングァンの手にはいつのまにか、ジョンハンが持ってた銃があった。
「まだ弾があるからって。ハニヒョンが......。自分を守れって......」
撃つ自信もないのにと、スングァンが自分の手にある銃を見ていた。
「なんで俺たち、生き残ってるんだろう」
ドギョムが言った。誰よりもビビって叫んでる自覚があるんだろう。
スングァンだって、怖い怖いとしか言わない。
ディノもこんな暗がり、1人じゃ絶対に歩けない。
それから、バーノンもいた。
怖がりで、マンネラインの自分たちと、ドギョムと、ミンギュとウジとジョシュアと。
「俺が後ろから行く」
ジョシュアは当然のようにそう言って、ミンギュが先頭を行く。
守られたからだろう。やっぱりどうしたってヒョンたちが、守ってくれたからだろう。
泣きそうになったけど、まだ泣くな、まだ泣くなってディノは自分に言い聞かせた。
薄暗かった場所から出たら、空が見えた。
久しぶりに見上げた気もするし、いつだって見えてた気もするし。
助かったって誰かが言った。そして誰かが、空に向かって銃を撃った。もう誰かに向かって銃を撃つことなんてない。そういう意思表示だったのかもしれない。
でも今度も、どんな異変に気づくよりも早く、ドギョムの叫び声が聞こえた。もうほんとに耳をつんざくようなその声が先で、その後に、こちらに向かって走ってくるゾンビたちに気がついた。
ウジは当たり前のように戦う意志を見せた。素手だというのに。
オットケ......って言ったのはスングァンで、ケンチャナって言いながら抱きしめてたのはミンギュで。
逃げる場所なんてどこにもないのに、バーノンはやっと出てきたはずの場所へと駆け込んで行った。
「ディノや」
最期にジョシュアが名を呼んでくれた。その手に持った銃口をディノに向けた状態で。
あぁさすがに慎重派のヒョンだから、軽はずみに銃を撃ったりはしなかったんだろう。
そして最後までディノを守ってくれるんだろう............。
ゾンビが迫る中、銃声が響いた。
曇ってるのか、もう世界中がそんな色合いの世界になってしまったのかは判らない。
傷みも苦しみもなかった。
ただ、ディノは最後までヒョンたちに愛された記憶だけ持って逝った。

The END?

 

BAD ENDが嫌いな方は、続きをどうぞ......

 

ただ、ディノは最後までヒョンたちに愛された記憶だけ持って逝った。
...............。
13秒ぐらいは耐えた。でも結局我慢できなくて、ぶはって笑ったのはディノのせいじゃないと思う。
だって、襲ってきたゾンビの中に、ゾンビメイクをしたホシがいたから。
「カットッ」と、遅れて監督さんの声が響くけど、ミンギュに抱きつくようにして耐えてたスングァンだって、「なんだよそれヒョン」って言いながら、ホシのことを指さしていた。
「ヤー、お前な。どうりでゾンビに噛まれた後にそそくさと消えたと思ったら」
ウジがものすごく楽しそうに笑うホシに、呆れたように言う。
「だって俺、ゾンビに噛まれたんだも〜ん」
ゾンビに噛まれてそんなに嬉しそうにしてる人を、ディノははじめて見たかもしれない。
「え? じゃぁもしかして、ハニヒョンとかウォヌヒョンも?」
スングァンの言葉にミンギュはちょっとだけゾンビになったウォヌも見てみたいと思ったのか、「え? ほんとに? どこ? ゾンビウォヌどこ?」とワクワクしてたけど、「そんなの、みんながするわけないじゃん。俺以外はさっさと着替えて休憩してる」とホシが笑ってた。
まぁそうかも。
エスクプスなんて1番に着替えて、撮影の様子をモニターしながらくつろいでいたらしい。まぁまだ足が本調子じゃないから、最初に離脱することは決まってた。
GOING SEVENTEENでゾンビを撮った時には全員はいなかった。それに、ショートムービー的な映像を残したいって声もスタッフたちからもあがってて、やりたいと言ったセブチがいて、はなしはトントン拍子に進んだし、撮影だって早かった。
最初にあった面白シーンはカットされていたからかもしれない。
カラットたちしか喜んでくれないかもしれないけれど、ショートムービーとしてのデキだって凄い良いだろうって、全員が結構真剣だったのに、そんな中ホシだけは密かに、ゾンビになることを狙っていたらしい。
「俺噛まれたもん。噛まれた後に撃たれてないし」と、引き上げてきた楽屋でメイクヌナたちに必死にアピールしたとか。
撮影は無事に終わって撤収の準備も進む中、何故かホシは「カメラ回して、お願い、俺、ちょっと踊るから」と、ゾンビ姿で踊りだしていた。
いつかのように、勝手に自分だけのMVを撮ろうとしてるんだろう。
みんながお疲れと言い合っている中、ホシだけはゾンビを存分に楽しんでいた。
「あぁ俺もゾンビやりたかったかも」
ディノはそう呟いた。別に深い意味なんてなかったし、あんまりにもホシが楽しそうだったから。
でもスングァンに不思議そうな顔で見られて、ん? となる。
「なに? 俺、変なこと言った?」
「いや、お前はゾンビになれないけど」
そう言われて思い出す。
「あぁそっか。俺、シュアヒョンに撃たれたんだった」
ホシみたいにゾンビに噛まれた後に撃たれなかったらゾンビになれるんだったと納得したというのに、さらに続けて衝撃的なことを言われた。
「いや、まぁそれもあるけど、お前だけゾンビに噛まれる前に撃たれたから、お前だけただの殺人事件だし」って......。
え? ちょっと驚きながらもジョシュアの方を見れば、ジョシュアはいつものように優しそうな笑顔を見せていたけれど「ごめんごめん。ちょっと撃つの早かったかも」とか言っていた。
エスクプスには指をさされて笑われた。
「せっかくのゾンビ映画なのにな」
って物凄く残念そうに言ったのはドギョムだった。
「いや、バレないって」
慰めてくれたのはジュンだった。
「バレるに決まってるじゃん。カラットたち、そういうの絶対見過ごさないじゃん」
ジュンの慰めを一瞬でぶち壊したのはディエイトで。
ちょっとだけ『撮り直したい』と言いかけたけど、あちこちでやった、終わったと喜んでるスタッフさんや監督さんたちを見ると、そんなことも言い出せなかった。
だけど「撮り直しだよ、撮り直しッ」とスングァンが怒ってた。
あぁやっぱり、仲悪く見せてるけど1番自分のことを見ててくれるのはスングァンだなってディノが思いかけたっていうのに。
「やー、ボノナッ、なんでお前、自分だけ逃げてんの? そこはほら、俺んとこ来なきゃ。映画の最後に、愛の昇華とかしなきゃ」
プリプリ怒ってる理由はそれだった。自分はミンギュに抱きしめられてたくせに、何をそんなに怒ってるんだか。
言われたバーノンは「しょうがないよ。本能だもん」と笑ってたけど。
そして当然、撮り直しはなかった。
ディノだけ一人、ジョシュアに殺されたけど......。

The END