愛なんて、目に見えないものは信じない。
そんな不確かなものに人生なんてかけられない。
遥か昔の電子化されてる本だとか、裏切りと愛憎ごちゃまぜの展開早すぎる謎なドラマとか。
昔の人は大変だったんだなって感じの愛だけど、なんでか今では愛は目に見える形で側にある。不思議。
しかもお金ってもので愛が換金できる世の中だから、誰かにとってはウハウハで、また誰かにとっては理不尽で、はたまた誰かにとっては真実で、でも結局どうでもいいけど愛は大事で......。
それを愛と呼ぶなら
ホシは今日も、使っても使っても一向に減らない残額を確認して、ため息をつく。いや、世間ではこれを贅沢な悩みと言うんだろう。
豪邸だって買った。親にマンションだって。在庫さえあるなら欲しいと思うものは全て買える。食べたいものを食べて、行きたい場所に行く。
そんな自由な生き方をしてたって、ホシの新しい家にまだウジは一度も来てくれない。
愛し愛されてなくたって、お金はどんどん増えていく。お金は確かにないよりあった方がいいけれど、大きな家の大きなベットでの一人暮らしはちょっとどころか、大分寂しい。
「その点いいよね。ウォヌはミンギュともう一緒に住んでるんだから。貧乏そうだけど」
新しく作った衣装部屋の半分払ってくれとかミンギュが言ってたからだろう。
「いや、貧乏じゃないけど」
一応ウォヌはそう否定しておいた。大抵のものはミンギュが買ってくれるしやってくれるし整えてくれるし、時々鬱陶しいけれど幸せは幸せで、きっと愛が目に見えなくたって気にならないほど愛されている。
でも時々ミンギュは不安になるのか、勝手にウォヌの残高を確認してはニヤついているけど。
「いやでもさ、そのお金の愛分が、全部1人に向けての愛だとは、限らなくない?」
普段はとぼけてるくせに、時折ドキリとすることをジュンは言う。
でも確かにそうかも......と、ホシも思わなくもない。
だって両親を愛してる。姉のことだって、義兄のことだって、姉の子どもたちだって愛してる。昔からの友達や、少なからずホシのことを導いてくれた先生たちや、母校そのものだって。あぁそれからたくさんのスタッフヌナにマネヒョンたちに、それからカラットたちに。愛は尽きない。
「どうしよう。俺、じゃぁウジ分の愛はどれぐらいなんだろう?」
ホシのその疑問に、「半分ぐらいじゃない?」と適当なことを言ったのはウォヌで、「案外なかったりして」と酷いことを言ったのはジュンで。
でもしみじみとウォヌが「でも確実に言えるのはさ、ウジの資産のほとんどは、ウジが稼いだ金だってことだよな」とか言えば、ホシもジュンも頷いてしまった。
そりゃそうだろう。
ウジには愛なんて必要ないぐらいの稼ぎがある。それでいて散財してる風でもない。
そこの何割かは確かに両親に向けた愛や、メンバーに向けた愛分があるだろう。
「ジフナッ」
作業部屋から出てきたウジのことをホシが呼び止める。
「なぁ、俺の愛、ちゃんと届いてるよな?」
「あ? 真面目な顔してふざけてんのか?」
ウジは止まらない。まぁ結構前からトイレに行きたいのにキリが良いところまで......とか思いながら働いていたから、止まる訳もない。
きっとそれでも、ホシのお金は増えていくんだろう。
「愛がなくても、ミンギュは金持ちそうだから」なんて、ウォヌは言う。
「俺は世界を愛してるもん」とか、ジュンは壮大なことを言う。
俺だって、俺だって......。
ホシが考えてる間にも、ウジがトイレから戻って、また素気無く通り過ぎていく。
「でも俺、曲が売れる前から金はあったよ。腐りそうなほど」とか、ウジが言う。
愛してると言われてる訳でもないのに、部屋にだってまだ一度も来てくれないのに、それでもホシが一瞬で浮くんじゃないかってぐらいに幸せになったのは言うまでもなくて、きっとまたホシの残高は増えただろう。
ウジは一瞬で消えてしまって、愛想もくそもなかったって言うのに......。
The END
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それを愛と呼ぶなら byUru