「お菓子代は俺が出すよ」と言ったのはジュンだった。
途中のサービスエリアで甘いものとか買うとドギョムが言って、その時スングァンが「多めに買おうよ」とも言ったけれど、まさか箱を抱えるほど買うとは思ってなかったジュンだった。
まぁ別に、ケチケチしてる訳でもないから、あれもこれもと言い始めた時点で「好きなだけ買いな」って感じだったけど............。
ドギョムとスングァンと同じ車で3人だけだと知った時、ウジがジュンの肩を無言で叩いた。ホシはジュンのことを指さしてカカカと笑ってた。ウォヌは一応「車の中で爆睡するって言ってたのにな」とちゃんと同情してくれた。
まぁしょうがないだろう。
「ジュニヒョンは寝てていいよ」とスングァンは言ったけど、「無事に辿り着きますように」とか言って運転をはじめるもんだから、熟睡なんて無理だろう。
ドギョムは助手席に座って「俺がこっち見てるよ」と言ったけど、「どのタイミングで声かければいい?」とか謎なことを言いだしたし......。
そりゃ危なそうなら常に声はかけて欲しいとジュンがまともなことを思ってるのに、「急にはダメだよ。逆に驚くから」とスングァンが真剣な顔で言う。
危険なことは常に急に起こるっていうのに、「わかる」とドギョムは納得していた。
それでも「俺でも運転慣れてきたよ」とスングァンは言うし、スピードを出し過ぎるってこともないし、働き過ぎてるジュンはちょっとウトウトしかけたことだってあった。
でもスングァンは運転しながら「スピードのがここに出ないのがさ」と今さらなことを言い、ドギョムはそれを横から治してあげてスングァンに物凄く褒められていたけれど、そんなの運転できない子どもでも判ってそうな場所だった。だからやっぱりドキドキして安眠なんてできない。
寝ていいよというのにスングァンとドギョムはあほほど歌う。しかも大声で。まぁ2人とも下手ではないから聞きごたえはあるけれど、安眠妨害なのは間違いない。
クユズの面子からのカトクも届く。
「いざとなればお前が出張れよ」とウジが言う。
言われなくてもそのつもりだが、どんないざが来るのかは判らない。
「こっちも途中から俺が運転するみたい」とウォヌが言う。
疲れた絵文字も送ってきたけれど、ジョンハンとジョシュアがいる車なら、それまではゆっくり休めただろう。
「ファイティン」とホシが他人事のように言う。
まぁ他人事なんだろう......。
「サービスエリアって、急すぎない?」
クユズとのカトクに意識を奪われてたら、スングァンがまた謎なことを言いだした。でもドギョムは「わかる」と納得してるけど。
2人して、「あ、サービスエリアだってなった時、大抵は今は無理無理無理無理って感じだよな」とか言いあっていたけれど、そこは「あ、サービスエリアだ」となったらウィンカーを出したりすればいいだけだと思うのに、それから一度、本当に入れずに通り過ぎたから、スングァンにはまだ難しいんだろう。
「いいいい、無理はするな」とドギョムが言う。
サービスエリアには入れなくても、「順調に来てるから大丈夫」とも言う。
まぁそういう意味ではドギョムとスングァンは似た者同士で上手くいってるのかもしれない。ジュンはドキドキしすぎて全然眠れなかったけど......。
ようやく入れたサービスエリアで、トイレ休憩をして欲しい物
を買って、さらりと車に戻るのかと思ったら2人の買い物は全然終わりそうになかった。
「お菓子代は俺が出すよ」とジュンは言った。確かに言った。
ありがとうと、ドギョムもスングァンも言った。確かに言った。
でも「ジュニヒョンは寝てたもんね」とスングァンが言い、「次は俺が運転するけど、ジュニヒョンはまだまだ寝てていいからね」とドギョムが言い、ちょっとだけ微妙な気持ちにさせられたけど............。
そして何故か袋じゃなくて箱に入れられるほどの量だったけど............。
それでもそこからはドギョムの運転で、少しは眠れるかもって思ったジュンだったけれど、「なんか、ブレーキってさ。時々思った感じと、実際に停まるまでの距離って違うくない? 車によって違うのかな?」とかドギョムが言い出して、「あ、それ俺もあるかも」とかスングァンが言い出して............。
思わず「車間距離ッ」とだけ言ったジュンがいた。そしてそんなことを聞いてしまえば熟睡なんてできるはずもなく、後部座席にいただけで寝てもないのにお菓子だけ大量に買わされただけのジュンだった............。
The END
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