流れ星ピンナダについて
続きものではないけれど、ディノちゃんからはじめたセンイルおはなしが溜まって来たので、contentsページを作りました。
流れ星ピンナダ8
俺たち、流れ星みたいだな......って最初に言ったのはエスクプスだったけど、最近は滅多と空を駆けない。
まぁあちこちケガをしたからだろう。
無理をして長距離を走ったりもしたし、事故りそうな弟たちを身体を張って守ったりもしたし、案外事務処理にも長けていて、配送の分配だったりもしてるから。
「でも俺、お前が走ってるとこ好きだけど」
ジョンハンは頻繁にそんなことを言う。
「別に俺、早い訳でもないじゃん」
「そうか? なんか、俺には一番カッコよく見えるけど」
そんなことを言われたら照れるし浮かれそうにもなるけれど、付き合いは長いから、すかさず次のジョンハンの荷物の届け先を確認する。
見ればあほほど遠い場所だった。
「なに? 変わってやろうか?」
そう言えばやっぱりだったらしく、「エヘヘへ」とジョンハンは笑ってた。
「別に、普通に走るなら俺にだってできるし」
そう言って手を出せば、荷物を渡されると思ってた手をジョンハンに握られる。
「なら一緒に行こうぜ」
荷物を2人で運ぶなんてことは、仕事をはじめる誰かのつきそいぐらいでしかしないのに。
「2人で行けばスピードもあがるだろうし、時々はのんびり話したいじゃん」
そうも言われたら断れない。
「わかった。じゃぁちょっと待って、ここを誰かに任すから」
そう言ったのにすでに後を任す誰かにもちゃんとジョンハンは声をかけていたようで、何もまだ説明してないのに「後はやっとく」とウジがエスクプスの椅子にあっさりと座った。
もしかしなくても、エスクプスよりもバリバリに全員を動かして、余裕綽々で仕事を回しまくるかもしれない......。まぁでもそれも悪くない。
空を駆ければどこかの星のどこかの国の誰かから、願いごとが飛んでくる。
無事に帰ってきますように......みたいな切実なものから、早く会えますように......みたいな恋心のようなものまで。
ディノには気にせず走れとかって教えるくせに、エスクプスは素知らぬ顔をしながらも全ての願いが叶いますようにと願いながら走る。
俺なんて、それぐらいしかしてやれないからなとか言いながら。
「自分の願いを一緒に願ってくれる人がいるってだけで、救われる人はきっといるだろ」
咎めもせず、肯定もせず、でもジョンハンはいつだってエスクプスが欲しいと思ってる言葉をくれる。
どんな小さな願いだって、叶えばいい。
幸せが積み重なっていけば、いずれその人たちがまた誰かの願いを叶える側になるはずだから。
エスクプスは結構本気でそう思ってる。そしてそれをジョンハンも知っている。
ただ知っていてくれる人がいる。やっぱりそれだけで、救われる人だっているから。
The END
1110moji