天気予報はそんなこと言ってなかったのに大雨だった日。
スタジオに入ればウジしかいなかった。
「あれ? お前だけ?」
「おぉ、あちこち道路が封鎖されてたり、浸水してたり、バスも電車も止まってるって」
それでも普段はもっと人がいるのにって言えば、「逆にチャンスだって言って、みんなで飲みに出たんだよ。どうせ仕事にはならないだろうって。帰れなくなったらそのままオールで飲むらしい」
ウジが笑ってた。
だからウジのようにスタジオに住んでるのかってごとく、日頃ならもっとわらわらと人がいるはずなのに、逆にいなかったらしい。
「お前は?」
「だって俺飲まないし、お前は絶対来そうだったから」
いつもならドギョムだって早く入って歌いまくってるのにいなくて、それも聞けば「カトクでハニヒョンが止めてただろ。どうせ今日は人が揃わないって」と言っていた。そういうところの見極めはユンジョンハンに適うものはいないかもしれない。
「え、じゃぁなんで俺のこと止めてくれなかったんだろ。それなら俺だって、家でのんびりドラマとか見るのに」
ホシがそう言えば、「文句ならハニヒョンに言えよ」とウジが言う。
いや別に、文句なんてないけど......。
それにウジと2人きりだ。こんなのなんでもありで、やりたい放題だ。きっと大チャンスだ。
と、勝手なことを言ってホシがウキウキになってる姿をウジは呆れて見てた。
何が大チャンスなんだ......って感じだったのかもしれないが、ニヤリと笑ってホシが「雨が似合う歌、作ろうぜ」と言えば、ボソリと「そっちかよ」と言ったけど、多分ホシは気づいてない。
「ジャンジャカジャンジャカって感じの、五月蝿い系からはじまるやつがいい」
スマホにはずっと緊急速報的なものが流れてくる。どこそこで川が危険水位を超えたとか。地下部屋の人は早めの避難をとか。
カトクにはメンバーからお互いの無事を確認するメッセージが届く。どこにいるのかとか、何をしてるのかとか。ウジはもはや曲作りに夢中になってて気にもとめてなかったけれど、ホシはウジが作業中の待ち時間を利用して、「俺とジフニは作業部屋。無事。誰もいないから2人きりだけど」とか、ちゃんと答えてた。
雷だって鳴り響き、とうとう停電した。さすがにそれじゃぁ曲作りなんて......って感じの中、病院でもないのに予備電源が動き出したらしく明かりが戻ってきた。
その時だけ、ウジがホシのことをふる無視してパソコンのデータが飛んでないか確認していたけれど、落ち着いてしまえばまた2人で曲作りに勤しんだ。
本当にこういう夜があると、出生率があがるらしい。カトクではそんな話題もあがってて、ホシは堂々と、「俺らも子作り中」と返して全員を沈黙させていたけれど、当然それは曲作りのことだった。
結局朝までに2曲できた。
それ以外にも方向性だけ決まったものは5曲もあった。
翌日「ウジヒョン大丈夫?」とスングァンが声をかけていた。ウジは普通に「全然寝れなかったけど、まぁいつも通り」と答えてた。
ホシのせいで色々誤解は生まれたかもしれないが、ウジはまだそれを知らない。
まぁホシだって悪気があった訳でも、わざとだった訳でもないから、ウジがその後にカトクを読んで周りの空気で誤解されてることを察してブチ切れるなんて、ホシだってまだ知らない............。
The END
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