何がきっかけかを忘れたけど、ジョンハンとケンカして勢いで別れを口にした次の日、ジョンハンは何食わぬ顔でエスクプスの部屋にやって来て、ベッドの上で『謝っても口なんて聞いてやらねぇからな』って顔をしてるエスクプスの隣りに潜り込んできた。
「な、何やってんだよ。俺ら昨日別れただろ」
そうエスクプスが言ったのに、ジョンハンは今日もキレイな顔をしてるのにイヒヒヒみたいな顔で笑って、「うん。知ってる。だから俺ら、今日からセフレな」とか言い出して、着てた服を脱ぎだした。
「は?」
驚いてるエスクプスに、「え? しないの?」って聞いてくるジョンハンは、やっぱりとびきりキレイで。
昨日あんなにケンカしたけど、しないのって言われたら、そりゃしたいし......ってなるのは男なら誰だってそうだろうって、誰に言うでもなく言い訳をしてから、エスクプスは抱き慣れたその身体に手を伸ばした。
その日から、エスクプスとジョンハンはセフレになったけど、これまでと何が違うのかはいまいち判らなかった。
だってジョンハンはいつだって楽しそうに笑ってるし、時々はイヒヒヒって笑うけど、それでもエスクプスの横に居続けて、エスクプスが自分の不調に気づくよりも早く気づいて、そっと手に触れてきたり背中を叩いてくれたりもするから。
でもある日、たまたまマネヒョンの誘導が悪かったのかタイミングなのか、移動車が一緒になりかけた時、ジョンハンは「いや俺、この後ちょっと買い物して帰るから」って言いだした。
「じゃあ一緒に行くから乗ってけばいいだろ」って言えば微妙な顔をして笑う。
人の布団の中には笑いながら潜り込んでくるくせに、付き合ってないと買い物も一緒に行かないつもりなのか。あぁでもそんなところが、繊細で可愛くて愛おしいなと思ってしまえば、「じゃぁ俺らちゃんと付き合おう」って言葉はすんなりと出てくる。
「別にいいけど」
そう言いながらも、ジョンハンはエスクプスの隣りに乗ってくる。
それからイヒヒヒって笑いながら、手も繋いでくる。
付き合ってなくてもセックスはするくせに、付き合ってないと手は握ってくれないらしい。
The END
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