妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

人魚あらわる

※人魚な彼らと、吸血鬼な彼らのおはなしです。特に続いてはいませんが、前のおはなしはこちらです。

sevmin.hateblo.jp

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ミンギュが見たもの

海釣りに行こうとは前から言ってて、ミンギュとエスクプスは結構しっかりとその日のために準備をしていた。
当然ウォヌもバーノンも誘ったけれど、「大漁だったら考える」とウォヌは言った。絶対何も釣れないと思ってるんだろう。バーノンは「お土産はマグロ?」とか、トボけたことを言う。
いや、マグロ漁に行くわけではないから、無理だろう。
岸壁とかで海釣りを楽しむ方法もあるけれど、ミンギュとエスクプスは吸血鬼で、飛べたりする。
だから力業で船ごと海の上を飛び、良い感じの場所で釣りをすることにした。
本当なら先に船舶免許でも取らなきゃいけないんだろうが、それは面倒だったから。
きっとホンモノの海の男なんかがいたら、海を舐めるなと言われたかもしれないが、ミンギュとエスクプスは舐めていた。舐め切っていた。
その結果、バチが当たったんだと思う。
まだ一匹も釣れてないっていうのに、海から飛び出てきたナニカに、エスクプスの身体が一瞬で押し倒されたというか、押さえつけられたというか、なぎ倒されたというか。
目の前でそれを見てたミンギュは、「怖ッ」って言いながら物凄い早さで船の端まで逃げたほど。
早すぎて真っ白いものにしか見えなかったそれは、海の中に棲む幽霊みたいに見えた。お伽話に出てくるような。
でも吸血鬼だっている世界だから、幽霊だっていないとは限らない。
だから余計にビビったミンギュだったけど、「クプスヒョン、ヒョンッ!」と叫びはしても、助けに行く勇気はなかったかもしれない。
デカイ図体はしているが、何気にビビリだったから。
いや、暴漢とかになら強いとは思ってる。幽霊が苦手なだけで。
誰に言うでもなく言い訳をしたけれど、それがミンギュがはじめて見た人魚だった。

 

エスクプスが見たもの

気づけば押し倒されていた。海釣りに来て一匹も釣れなかったけど、しかしドデカイ何かを釣れたのかもしれない。
「人間じゃねぇの?」
突然海から飛び出して来たと思ったら物凄い力で人のことを押し倒してそのまま押さえつけたソレは、物凄い整った顔にキラキラした目でエスクプスを見下ろしていた。
「吸血鬼だけど」
そう言えば、ソレは物凄い嬉しそうに笑った。
「じゃぁ俺と一緒に生きられるじゃん」って。
綺麗すぎて眩しすぎて、なのに気取ってないその話し方は異質で、ミンギュじゃないけど海の精霊か何かだと思った。
「お前が俺の運命だろ?」なんて、そんなことまで言うソレに、エスクプスは簡単に押し倒されたように心だって鷲掴みにされてしまったのかもしれない。
「運命?」
「おん。今夜俺の運命に遭えるって、ハルモニが言ってた」
それを信じて疑ってないのか。事実だとでも思ってるのか。あぁでも本当にそれは、運命だったのかもしれない。
「名前は?」
そう聞いたのはエスクプスの方だった。ソレの名を知りたいと思ってしまったから。
「ジョンハン」
魔物の一種なら、自分の名前を教えたりはしないはずなのに。
綺麗すぎる男は、真っ裸でエスクプスの上にいた。
「お前、なんで裸なの?」
「だって元から服なんて来て泳がないもん。俺ら」
まさか自分の運命が人魚だとは、エスクプスだって思っていなかった。
でも、出会いは衝撃的で、遠くから「ヒョン、ヒョン」と煩いミンギュの声すら聞こえないほど、目の前の綺麗な男に一瞬で夢中になったエスクプスだった。

 

ジョンハンが見たもの

その日、預言者のごとき人魚のハルモニにそそのかされたジョンハンは、今夜運命に出会うと言われて、海の中を優雅に泳いでいた。
途中マンボー兄さんとかに、「変な奴らが夜釣りに出てるから気をつけろ」と言われて興味を抱いた。
船で海の中を進んでいくる人間はたまにいるが、そいつらは空を飛んで来たという。
それから船の上でピクニックでも楽しむかのごとく、焚火までしてるという。
どんな奴らだと思って近づけば、海を覗き込むようにしてクリクリした目をした男を見つけた。
あぁ俺の運命だってジョンハンはすぐに気づいた。
だから勢いよく水の上に向かって泳いで、そのままの勢いで飛び出して、当然ながらそのまま押し倒した。
水の上に出た瞬間には真っ裸になっていたけど、運命を前に些末に拘ってる場合じゃない。
間近で見ればその目は不思議な光を放ってた。真っ黒にも見えるのに、深い青にも見えて。
だから「人間じゃねぇの?」って聞けば「吸血鬼だけど」って返される。
それを聞いて凄く嬉しくなったのは、長く生きる人魚とともに歩んでいけると思ったからで、運命を見つけた喜びにテンションが上がっていた。
自分にとってそうであるように、相手にとってもそうであるはずと、信じて疑ってなかったから。
名前を聞かれたから答えた。
だから名前を聞いたら、「エスクプス」って言われてちょっとだけ口ごもる。なかなかに呼びにくそうな名前だったから。
でもそれが顔に出ていたのか、「クプスでいいけど」って言われれ、嬉しくなったジョンハンだった。
近くにはミンギュもいたというが、全然目に入っていなかったし気づいてもいなかった。ジョンハンにはただ目の前にいるエスクプスだけが全てだったからかもしれない。

 

The END
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