注意......
多分。続きモノです。
はじめて「天使が空に」を読まれる方は、contentsよりお進みくださいませ~
天使が空に JEONGHAN side story
あの日のことを、ジョンハンは思い出しても怖いとは思わなかった。
でもエスクプスは思い出すたび怖くなるのか、ジョンハンを抱きしめて離さないことがたびたびあったし、ジョシュアは珍しくも怒ってて誰よりも攻撃的だったかもしれない。
長かった髪が短くなったことで、しばらくはスングァン以外は微妙な顔をしてたけど、ただ1人スングァンだけは、「どっちも似合うなんてヒョン凄いね」って笑ってた。
弟たちが危険に晒される方が怖い。
それは舞台の上だとか、移動中だとか、撮影中だとか、どこでも。
ディノの声はどこにいたって絶対に耳に入ってくる。
それはもう癖みたいなもので、笑い声だろうと話し声だろうと、気まずそうな声でも落ち込んでる声でも張り切ってる声でも、いつだって聞き取って、その声に安心したり笑ったり、時には気になって振り返ったり。
最初のディエイトの言葉は聞き取れなかったのに、「ん? なんですか? どちら様ですか?」っていう声はしっかりと聞き取った。その瞬間には違和感に気づいたし、ディノが見知らぬ人に近づいていこうとするのに、ぞわっとした。
「イ・チャンッ」
だから名を呼んだ。ディノはジョンハンの声に絶対に止まる。それだけは確かで、名を強く呼ばれてるのにそのまま動き続けるようなことはディノは絶対にしないから。
強い口調だったからか、ディノが驚いてジョンハンを見てた。
そんな視線は気にした振りも見せずにジョンハンは行く。
きっと大丈夫。何事もなく終わるはず。そんなことを願ってる時点で、ダメなんじゃないかって気持ちも半分ぐらいはあったけど、気づいた時には自分の身体は叩きつけられた後で、頭を打った衝撃からか一瞬身体全てが動きを止めたような気がした。
エスクプスとジョシュアの叫ぶ声は聞こえてた。バカみたいに必死に叫ぶから、「なんで2人してそんなに必死になってんだよ」って笑って言いたかったのに、言葉が出なかった。そして視界が少しずつ狭まっていく。
ディノがまだ、男の近くにいたはずなのに。
早く逃げろと、せめて言わなきゃいけないのに。
薄っすらとしはじめた意識がハッキリしたのは、エスクプスが叫んだ声を聞いたから。
「イ・ソクミンッ! ダメだッ、下がれ!」
一瞬で現実に引き戻されて、次の瞬間にはドギョムを探してその身体を起こしたほど。
それでなくても血を流して血が足りないってのに、血の気はもっと引いた。
でもそこが限界だったのか、なんで俺こんな時に動けないんだって思いながらも、意識が遠のいていった。
自分も入れて13人もいる。
その誰1人として傷ついてほしくない。誰1人泣いてもほしくない。笑ってなきゃいけなくて、幸せでなきゃいけなくて。
なんでだよって言われても、それには当然だろとしか言えないけど、ジョンハンはそう信じてるしそれを強く願ってる。
ジュンとウォヌが戦ったことも、非常ベルが鳴らされたことも、現場が騒然としたことも救急車が来てそれに自分が乗ったことも、全然知らぬままだった。
きっとエスクプスは怖かっただろう。家ではマンネなくせに統括リーダーなんてやってる男は、いつだって頑張っているけれど、涙を溜めた目で、「なんでそんな酷いこと言うんだよ」とか言ってくる時の様子はどうしたってマンネにしか見えなくて。
弟たちを守らなきゃいけないのに、目の前でジョンハンが倒れたことの方に動揺したかもしれない。
俺たち13人もいるんだから、それこそ弟たちが育ってくるってって、よく95ラインが集まると言い合っていた。ウジのように才能豊かにセブチを支えるまではいかなくたって、いずれはディノだって普通に男として育つだろう。
その時には俺ら左団扇じゃねって言い合って、酒を舐めるように呑むのが時々の楽しみで。
アイドルなのに全然派手じゃない。
でもエスクプスの願いは13人全員がいつまでも一緒に楽しく活動できることで、セブチに関わる人たち全てが幸せにいられることで。
時々バカみたいにブランドもので頭から足下まで揃えてきたりするくせに、大抵のものは弟たちにやってしまう。きっと金の使い方だって間違っている。
でもセブチを愛してやまない統括リーダーは、それが幸せってもんなんだよって笑ってるような男だった。
あぁ、俺のいないところで泣くなよって、そんなエスクプスの心ごと守りたいとジョンハンは真剣に思ってるから。
それからきっと、ジョシュアはいつになく動いてくれただろう。でもそれもジョンハンにしてみれば心配だった。
いつもは楽しそうに柔らかく弟たちを見ながら笑ってるだけなのに、そんなジョシュアが先頭に立つようなことは滅多にない。
でもそんな時はきっとエスクプスとジョンハンがいなくて、かなり切羽詰まった状態な時な気がする。
いつだって言わなきゃいけないことがあれば、それが自分たちに必要だと判断すれば、どんな嫌なことだろうと言いにくいことだろうと、絶対に譲ったりしないから。
あぁ見えてジョシュアはキツいし厳しいし油断しないし甘くもない。でもそんなものは、誰も知らなくていい。
ただ笑って一緒にいてくれるだけでいいのに。
3人でいつだって、弟たちを見て笑ってる。
96ラインはキセキみたいな奴らだって言いながら。97ラインは幸せしかなくて、マンネラインは可愛すぎて、同じ男なはずなのに、一体どういう作用が働いてるんだって真剣に悩みながら。
いつか弟たちが稼いだ金で、良い宿舎に引っ越そうとかバカみたいなことを話して笑ってる。
時々は小競り合いだってするけれど、大抵はそんな感じで。
ジョンハンが目覚めた時、そこはもう病室だった。
ずっと95ラインのことを考えてたような気がするのに、一番に目に入ったのは心配顔で今にも泣きそうなドギョムだった。
一瞬で起き上がって、気づけば手は勝手にドギョムに伸びていた。
「ドギョマッ! お前ケガは?!」
ドギョムの胸ぐらを掴んで問い質す。
必死すぎたのかその勢いにビビったのか、ドギョムは首を振るだけだった。
でもそれだけで、どれだけホッとしたことか。
「大丈夫。コイツはケガ一つしてないから」
そうエスクプスも言ってくれた。
ドギョムの胸ぐらを掴んでいたその手を頭に持って行ってクシャクシャとしてやれば、ドギョムは「なんで.........」って言ったかと思うと泣き始めた。
「お前なに泣いてんだよ」
そう言って笑ってやれば、ドギョムはさらに泣いた。もう「なんでなんで」とそればかりを繰り返しながら。
なんでなんて、ジョンハンだって判らない。でももう守りたいと思っちゃって、幸せになってくれないとジョンハンの方が困って、苦しくなるんだからしょうがない。
「ドギョマ。何があっても、お前だけは逃げろよ」
絶対にもっと泣くだろうなって思いながらもそう言えば、ドギョムは号泣しはじめた。
いつもならそんなドギョムの傍にはすぐにミンギュかディエイトが来るっていうのに、2人ともそこにはいなかった。
ミンギュは病室そのものにいなくて、ディエイトは少し離れたベッドの上で、心ここにあらずって感じだった。
何かあったなんて、誰に聞くまでもなく判った。
ハニヒョンが帰ってきたよって口にするバーノンの横で、スングァンは当然判ってるって顔で頷いてるのに、泣いてるドギョムを見て驚いてもいた。それからまたバーノンはスングァンに向かって、ハニヒョンが帰ってきたよって言うから。
ちょっと自分がいない間に、なんでこんなに全員でズタボロになってんだよって思いと、自分が血なんて流したせいだって思いと、でも俺が戻ったんだからもう大丈夫って思いと。
色んな思いがジョンハンの中にはあったけど、目の前では泣き過ぎて倒れそうになってるドギョムがいたから、「ほら、来いって」と手を引きながらベッドの半分を開けてやれば、いつもなら躊躇なんてしないドギョムが一瞬戸惑う。
ジョンハンが怪我人だったからだろう。
でも堪らなかったのか、悩んだのは一瞬で、ドギョムは素直に横に来る。
「泣き過ぎだバカ」
そう言えば、やっぱりドギョムは泣いたけど。
ドギョムはずっと、「なんで俺のこと、なんでそんなに」ってそればかりを口にしていた。
そんなの当然で当たり前なのに。
これが出会ったばかりの頃なら全然違っただろう。でも、いつからだろう。必死に練習するその姿が愛おしい存在になったのは。
ジョンハンだって人見知りだったけど、ドギョムも負けずと人見知りで。練習生としては先輩だって言ってきたのだって、誰かに言われたんだろうなってのが丸わかりで。もうその頃からドギョムの歌は凄かったのに、誰に褒められたってドギョムだけは納得せずにいつだって悔しそうだった。
上手く歌えなかったと泣いてる姿をはじめて見た時には、じゃぁ自分はどうしたらいいんだって真剣に思ったほど。
もしも自分がドギョムぐらいに歌が力強く歌えたら、もっと鼻高々でもっと強気でもっともっと傲慢に振る舞ってたはず。そう言えばみんな、「今以上に傲慢になんてなれるの?」とか言ったけど。
謙虚を通り越して弱気にしか見えないドギョムは、ジョンハンにしてみれば歯痒いことが多かった。
「ヒョンごめん、もうちょっとだけ俺、ここにいていい?」
泣きながらドギョムが言う。
自分が何もできなかったって言いながら、それなのに皆んなが自分を大切にしてくれるって本気で言いながら。
「すぐにどくから」
そう言いながら、ドギョムはそのまま寝てしまった。それだって、スングァンが悲痛な叫び声をあげるまでの間だったけど。
「スングァナ、スングァナ、もう大丈夫。もう終わった。ほら、ハニヒョンだって戻ってる」
はじめてスングァンが叫ぶのを聞いた時、ジョンハンは物凄くポカンとしてしまった。だってスングァンは、「ハニヒョン逃げて」と言ったから。
ジュンがスングァンのことを抱きしめながら、何度も大丈夫と口にする。
ずっと横にいてスングァンの手を握り続けてるってのに、バーノンは何も言えずにいる。
病室の中は凍り付いたかのようになって、ジュン以外は喋らない。
ずっとベッドの横にいたエスクプスが、ジョンハンの手を握ってくる。見ればバーノンと同じように今にも泣きそうな顔をしてた。
ジョンハンはその手を握り返した。結構強く、ギュッと。
不安な気持ちはそこだけに込めた。
「俺が戻ったんだから、もう少ししたら落ち着くだろ」
そうエスクプスに言った言葉は、きっと病室内にいた全員に届いているはず。
「そうだな。うん、そうだな」
エスクプスが力強く頷くけれど、ジョンハンの手を握ってるその手は震えてた。
本当ならスングァンのところに駆けつけて声をかけて抱きしめたかったけれど、いつだってスングァンは自分が叫んだことすら忘れたかのように、次の瞬間には1人だけ何もなかったかのような顔をして、いつもと違ってずっとバーノンがいてくれることに照れながらも喜んでいた。
何もできずに時間ばかりが過ぎて、何度目かにスングァンが叫んだ時、戻ってきていたウジが怒鳴りつけて、全員をビビらせた。
でもスングァンがいつも通りだったなら、95ラインのヒョンたちだって誰かは怒っただろうし、誰かは全員で集まって話そうって言ったはずで、でも自分たちが何もできなかったと後悔する気持ちよりも、ジョンハンはできる弟がいたことが嬉しかった。
スングァンはそれから朝まで一度も起きなかったし、見知らぬ人がくればソワソワはしてたけど、やっぱり叫ぶことはなかった。
ジョンハンの横には最初ドギョムがいて、次にはシュアが来て、それからエスクプスも来た。
2日目の夜には「俺もいい?」ってディノが聞いてきたから、「当然だろ」と横にズレてやった。
あちこちのベッドで同じことが行われているからか、人数を数えながらも誰がどこにいると確認するのにも大変だった。
誰が持ち込んだのかも判らない寝袋はなんでか人気だったから、ベッドの下まで覗き込まなきゃ行けなかったし。
ウジが最初に呼ばれて、全部をヒョンたちにと投げて寄こしたと知ったのは後からだったけど、ジョンハンも呼ばれて小難しい話がはじまろうとした時、それをわざわざ押し留めて言ったのは「エスクプスとジョシュアを呼んでください」だった。
最初はあまり良い顔はされなかったけど、どうせ何を言われたって、1人で判断することはない。それなら最初から3人で聞きたいと言えば納得されて、3人揃ってはなしを聞いた。
話は複雑なようで簡単で、でも簡単に見えて裏があって、ジョンハンは話を一度聞いただけじゃ理解できてなくて、やっぱり3人一緒で話を聞いて良かったと素直に思ったほど。見抜いたのは普段はぽやぽやなのに、なんでか時々キレキレになるジョシュアだった。
「なに? なに言ってんの? 俺らがそれで、わかったって言うと思ってんの? ふざけんなよ」
「俺たちの、メリットとデメリットはなんですか?」
話を聞いて、エスクプスは怒った。当然のように。
でも話を最後まで聞いて、ジョシュアは自分たちにとって何が有利なのかをちゃんと聞いた。これまた、当然のように。
自分のためには怒らないくせに、メンバーのためには当然のように怒るエスクプスにはいつだって胸が締め付けられる。普段はぽやぽやしてるくせに、いざとなったら絶対に引かないジョシュアの目線はいつだって鋭くて、いつだって尊敬してしまう。
そんな2人のそれぞれの態度と言葉に思わず笑いそうになって、でもジョンハンはそれを我慢した。
ジョシュアの言葉に対しての回答が、「デメリットは、全てを飲み込んで忘れることで、メリットは移動車が1台増えて、当然運転手も必要だから専任のマネージャーが1人増える」だったから。
驚いてる場合でもなくて、物凄い一瞬で色々考えた。
条件は悪くない。
もしも傷を負ったのが自分以外の誰かで、それがマンネなディノだったりケガなんて絶対させられないドギョムだったりしたら、きっと許せなくてどんな条件だって飲めなかったかもしれない。
ケガをしたのが自分で良かったと、聞けばエスクプスやジョシュアが怒りそうなことを一瞬言いかけたけど我慢した。
自分たちがそれを良しとすれば、話し合いは簡単に終わるはずだったのに、ジョシュアは「じゃぁ、会社のメリットは?」とも口にして、今度こそジョンハンは本気で驚いた。
まだ何かあると思っていたから聞いたのか、そんな条件じゃ納得できないと思って聞いたのかは判らない。
でも驚くことはまだまだあって、移動車が増えるだけでもテレビ局の提案で色んな番組にも出して貰えると聞いて思わず嬉しそうな顔をしたエスクプスとジョンハンの前で、ジョシュアは冷静に「それはセブチだけが?」とも聞いたから。
「どうするかを決める権利は俺たちにあるってことでいいですか? それとも事実を捻じ曲げる今後の予定を伝えただけですか?」
とうとうそんなことまで口にして、黙って見守っていた副社長にまで口を開かせた。
「決める権利はお前らにある。だけど会社としてはこのチャンスを逃したくない」
副社長の言葉に、ジョンハンは思わずエスクプスのことを見た。それは会社としては当然の判断だっただろうけど、エスクプスは副社長のことをほんとの兄のように慕ってたから。
ジョシュアは怒り過ぎてるからかどこまでも冷静で、「3人で話し合う時間をください」とちゃんと言って、時間がないという会社側からそれでも1時間っていう猶予をもぎ取っていた。
ジョンハンはその時からもう、楽しくなっていた気がする。だってテレビに出られるんだから。チャンスさえあれば絶対に結果を出せる自信がある。それは自分だけじゃなくて、セブチ全体でも。
どこに出したって自慢の弟たちは、絶対にチャンスをモノにする。
3人の話し合いは10分もかからなかった。
共通してたのは、この話は悪くないってことだったから。
調子に乗った訳ではないけれど、思わず「どうせなら3台新車で揃えてくれって言ってみようぜ」と言ってしまった。イヒヒヒと笑いそうな悪い顔をしてたのかもしれないけれど、エスクプスだってすぐに乗ってきた。「ダメもとだけど、案外いけるかもな」って。
「移動車3台全部新車で揃えてくれれば、全てを飲み込んで忘れます」
結局それを代表して言ったのもジョシュアで、許せないけど、それでもギリギリんとこまで譲った......みたいな雰囲気を醸し出していたからか、その願いはあっさりと承諾された。
それは3人だけの秘密ではあったけど、きっとウジは察するだろう。でも出来すぎる弟は、何も言わないはず。
ジョンハン的にはスングァンも叫ばなくなって、移動車は新車で3台ゲットして、マネヒョンが1人増えて、色んな番組に出られるってだけでルンルン気分だったっていうのに、ジョシュアは「移動車3台じゃ、全然足りなかった」って言った。
その声は震えてて泣きそうで、『いやもうお前の気持ちだけで、俺は十分だよ』と思わず言いそうになったほど。
「でもスングァニが笑ってる。それだけで十分だろ。俺たちは絶対無くせないものは、取り戻したんだから」
ジョンハンがそう言えば、ジョシュアは頷いた。その後は悔しそうな素振りは一切見せず、いつだっていつもと同じように柔らかく笑ってた。
盛大に巻かれてた包帯が取れてみれば、傷口周りの髪が短くなっていた。それを見てジョンハンは「およ」って変な声を出しただけ。
言葉を失ってたのはエスクプスで、撫でたら髪の毛が伸びるんじゃないかと信じてるのか、その後しばらくジョンハンの頭を撫で続けてた。
「お前、俺の髪が短くなったら、俺のこと好きじゃなくなるの?」
でもそう聞いてみれば、「そんな訳あるかよ」と言ったけど、「でもあんなに似合ってて、綺麗なのはお前だけだった」とも言っていたけど。
多少の長さは残ったけれど、結局その後、髪は短く切ってしまった。楽だったし、髪は短くても男前だったし、やっぱり綺麗なままだったし。
自分でそう言ったら、チングも弟たちもスタッフヌナたちにも呆れられたけど。
だけど失ったものなんて、何もない。
逆に得たものはたくさんあった。
絶対に失えないものは再確認できたし、上を目指したいっていう気持ちや、チャンスを確実に掴もうとする自分たちの気持ちは、決して嫌なものじゃなかった。
バカみたいに自分のことを思ってるエスクプスの気持ちも、怒ってるのに冷静でいざとなると頭の回転率をあげまくるジョシュアのことも、惚れなおしたり見直したし。
96ラインの弟たちはやっぱりバカみたいに出来がいいのに、それぞれ何かは考えたんだろう。ジュンにもウォヌにも、それからウジにもホシも。こんなに自慢の弟なのに。
97ラインは結局のところ、落ち込んでてもイラついてても最終的には3人で乗り越えていく。
マンネラインだけは唯一、今回のことを上手く消化できていなかった。それはきっとスングァンのことがあって、そのことを吐き出す場所がなかったからかもしれない。
でも傷ついてくれるなという願いは通じたと信じてる。
お前らだけは絶対に守りたいと、ヒョンたち全員が思ってることは。
退院が決まった日は雨だった。
ウジとスングァン以外が集められた場所で、事情が説明されて、誰もが何を言っていいかって顔をしてる中でディノはかなりの瞬発力を見せて、「納得できない」って口にした。
それがバカみたいに嬉しくて、「ウリマンネが............」って思わずそう言いながら、泣きそうになったほど。
あぁでも最後にはクプスが「俺が決めた」と言って、全部ひとりで背負ってた。
それにも泣きそうになった。
The END
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