「俺らデートしよう」
そう言ったのはホシで、ウジはまた何を突然言い出したんだって顔をしただけだった。
ウジが自ら酒を飲んで泣いた夜、ホシもバカみたいに泣いた。
その時に、もっともっとたくさん楽しい思い出を増やさなきゃと思っただけのことだと、ホシは熱く語った。
もうガキでもなくて、金も持ってて、2人で夜景の綺麗な店とかに食事に行ったって、コソコソもせずに笑ってやり過ごせる自信だってある。
そう言ってホシが真剣な顔で「夜景が綺麗な店とか、バカ高い店、半年先まで予約で埋まってるようなとこ。俺頑張るから」と言えば、ウジが「全部お前持ち?」って聞いてきたから。
「タヨナジ」
自信満々に答えたホシがいた。
半年どころか1年ぐらいはかかりそうだけど、この店を予約するとホシがウジに見せたのは、とびきりの夜景が見える店。
結構高額で、どうやらプロボーズとかにカップルが使ったりもするらしいって話だった。
ホシなりに気合いを入れたっていうのに、その日の僅か3時間後ぐらいにはウジから、「予約取れた、今日だけど、お前行けるよな?」ってカトクが入ってビビリ散らす羽目になった。
「な、な、な、なんでだよッ」
慌てて電話でウジに聞けば、「キャンセル待ちがないか電話した。その時に、料理も価格も全部キャンセルになった分をスライドしてもらって構わないって伝えたら、すぐに連絡入ったから」となんでもないことのように言う。
その日以来、結構な頻度で2人は出かけてる。
なんでかウジは食べたい店(全部結構高額)を見つけては、予約したとか言ってくる。時には最初の時のように、明日予約取れたとかって突然カトクを送ってくる。
本当にバカ高いけど、ウジは当然のような顔で食べて、支払いをホシに丸投げしてくるけれど、ちゃんと2人で楽しんだ認証ショットは撮ってるからホシ的にも何も問題ない。
それは長らくメンバーのみしか知らなかったのに、とうとうカラットたちにもバラして良いっていうお許しも出た。
いつかいつかいつか、食べたいものができたその日に飛行機に乗って食べに行って、食べたらあっさり帰ってくるような、そんなこともしてみたい。とか思ってるけど、ホシはそれは言わなかった。
なんだかウジに言ったらそれが、簡単に叶ってしまいそうだから。
食べた後にも仕事をしにウジは作業室に戻り、ホシは踊りに行くこともあれば、2人揃って運動場に行くこともある。
でも、美味い飯を2人で喰う。
それがどれだけ幸せなことか。
ホシは噛み締める。ウジもきっと、噛み締めている。
The END
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