世界に疫病が流行って、海外に出ることもなく、それこそカラットたちを目の前にすることもなく過ごした2年弱。
オンラインでの交流だって悪くなかったけど、久しぶりに観客を前にした時には全員が泣きそうになって、スングァンは号泣した。
耐えたから。セブチの面々も、カラットたちも。泣いたってしょうがない。
同じように、疫病のせいで色んなことが変わった。
ディノは成人を迎えてお酒を飲めるようになったけど、忙しさもあって、それからその頃はまだ芸能の世界に飲みに行くような友達もいなくて、チングとだけで飲みに行ったのは、今年に入ってからだった。
ただただディノは楽しそうだったけど、そんなディノを他所に心配しまくっていたのは12人もいるヒョンたちの方で。
「カード持ってるよな?」
スングァンから貰ったカバンの中身を、もう一度チェックしろと言っていたのはジョンハンで、電子マネーが使えないと困るから現金もある程度は持っておいた方がいいと言うホシがいたり、お金を持って歩くのは危ないと言うジュンがいたり、とりあえず俺のカードを持って行けと言うウジがいたり、あんまり遅くならないようにとか、もはや中学生の親みたいなことを言いだしたウォヌがいたり............。
「え? 俺が払うの?」
ディノが驚いている。
そこで全員がハタと止まる。自分なら払おうとするだろう。エスクプスはそう思うけど、だからってディノがチングから財布代わりとでも思われる訳にはいかないとか考えだすと、途端に悩みはじめる。
「とりあえず支払う時に「俺が払うよ」って言えばいいだろ。初めてなんだし記念にもなるし。でもみんなが払いたいって言うなら割り勘でも、ゲームで決めても、なんでもいいよ。チングなんだから」
ジョシュアがそう言えば、全員がホッとして頷く。
それからも、予約してんのは個室なんだろ? とミンギュが言えば、個室だからってお酒は飲み過ぎるなよとドギョムが。騒ぎすぎて迷惑かけるなよとディエイトが。
一緒にいたらフォローもできて面倒も見れて笑っていられるのに、さすがにバーノンはのほほんとしてそんなことは言わないだろうという予想を裏切って、「何かあったら誰でもいいから、ヒョンたちに連絡しろよ」とか言ったから、本気で心配だったんだろう。
「俺も行こうか?」
とうとうスングァンがそんなことまで言い出して、誰かが「なんでだよッ」とツッコむかと思いきや、全員なんだかそれがいいって言う空気を出していた。
もちろんディノから、「ククズの集まりなのに、ダメだよ」と断られていたけれど。
それからもミンギュとディエイトと一緒に着て行く服を選んだりとずっとヒョンたちに構われていたディノだったけど、とうとう出かけて行った。タクシーで行くというのに、心配だから事務所の移動車を出して送っていくというエスクプスとジョンハンによって、無事に送られて行った。
たった数時間だというのに、セブチの面々はそれぞれどれだけ落ち着かなかったことか。
チングたちと上手くいっているかも心配だし、事件に巻き込まれないかも心配だし、不意の出来事にディノがちゃんと対処できるかも心配だし、チングたちの中でもディノはなんだか頼りないというか、可愛すぎるというか、酔ってないとか言いつついつも酔ってることを知ってるヒョンたちにしてみれば、心配で心配で心配でって感じ。
95ラインの3人なんて、何かあったら迎えに行かなきゃいけないからと、酒も飲まずにご飯を食べるという、コンサート直前みたいな食事をしたほど。
でもディノからは特に電話なんてかかってこなかったけど。
ミンギュとウォヌなんて、無駄に夜の街をドライブしたほど。
でもそうやって、ディノがまた一つ、大人になった日。
The END
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