一応そこは『小動物cafe』だったけど、訪れた誰もが猫カフェと言う。まぁ猫しか見当たらないからだろう。
お触り禁止なので、別段楽しいこともないはずなのに、案外客はくる。
お触り禁止にしたのは、「あ、子猫がいるッ」って今日もまた誰かが嬉しそうに叫んでるけど、ただただ小さいだけで決して子猫ではない猫が、触られたり撫でられたりするのが嫌いで、ブチギレるから。
「子猫じゃないですよ。あれでもう成猫なんです。触らないでくださいね」
ミンギュはそう言いながら客の相手をする。
錆色の子猫に見える猫の名前はウジで、愛嬌があったら良いのに、まったくもってして愛想なしだった。
銀色に見える時もあるけど鼠色の猫はジュンで、男前でカッコいいけど、謎にテンション高く走り回ってることが多い。
それから黒猫で落ち着いた猫はウォヌで、あと1年もすれば妖怪になるんじゃないかってぐらいの落ち着きがある。全く動かない。
ちなみにここにはハムスターもいる。ご機嫌な時には走り回ってる。名前はホシで、大抵ジュンに捕獲されている。まぁ食べられたりはしないから、慣れた客は気にしたりしない。
お触りは禁止なくせに、おやつは有料だけどあげられるという、なんとなく納得できない店ではあるが、それでもおやつをあげるのは人気だった。
普段はまったく動かないウォヌだって、チュールだったら動いてくるから。
ウジだって貰ってやってもいいけど? みたいな顔で近づいてくる。
ジュンはなんでかお高めな鰹節にだけ反応するけど。
そしてホシはおやつを貰うとそれを頰袋に詰め込めるだけ詰め込んで、お気に入りの場所に隠しに行く。
まぁそれがウジの寝床とかだから、またウジがブチギレるけど。
朝から晩まで、愛想なんて全然振り撒きもしないけど、それでも店に出て稼いでくれるのは、この猫3匹とハムスター1匹で、4匹はいつだって稼ぎ頭だ。
普段はてんでバラバラ好きな場所で好きに過ごしてるのに、なんでか時折4匹で固まっていたりして、そんな時は奇跡みたいに可愛いと評判で、おやつがまた売れたりする。
普段は低い声でしか鳴かないウジなんて、時折どこから声を出してるのか「な」とだけ泣いて、あほほど可愛い時がある。
その声が聞こえると、ミンギュは注文が入る前から客の分だけおやつを用意してしまう時があるほど。
普段は落ち着いてるウォヌだって、謎にテンションがあがる時には二足歩行を見せてくれたりする。大抵笑われるだけで、猫だけど「うそ〜ん」みたいな顔をしている。
そんな時はしょうがないからミンギュがウォヌだけにおやつをあげる。
ジュンはいつだってテンションが高いから、跳んで跳ねてジャンプして回転してどこかに潜り込んで無駄に威嚇してと忙しい。落ち着いたらもっと可愛いのにと言われているけれど、本人はカッコいいを目指してそうだから、いいのかもしれない。
昼を過ぎる頃には、みんな寝てる。猫は寝る子だから猫と言うらしいから、しょうがない。
ウジは大抵ヘソ天で寝ていてカワイイでしかないし、ウォヌは丸まってどこが頭かお尻かも判らない。ジュンはいつだって片手や片足をあげていたり立てていたり、何かの途中で寝てしまったかのよう。それからホシはいつだってウジの身体の下敷きになっている。最初は助けていたけれど何度も潜り込んでいくから、まぁそこがイイっぽい。
そうなるともはやただのカフェのごとく。それでも動かない猫たちは人気だった。
夕方頃になると遊びたくなるのか、ジュンとホシで大運動会がはじまって、それはもうまんまトムジュリな感じ。
ウジはお腹が空くと起きてきて、ご飯のお皿に突っ込む勢いでご飯を食べている。
そしてウォヌはずっと寝てる。時々心配になってミンギュが無理やり動かすほど。そうしたらウォヌは「なに?」って感じで視線を寄こすけど、やっぱりまた寝てしまう。
夜になってみんながご飯を食べる頃、なんでかウジはまた一緒に食べる。
のんびりしてるウォヌのご飯がよく狙われるけれど、なんでかケンカにはならない。
ミンギュが店じまいをしてる頃になると、猫たちは折り重なるようにして固まって寝てる。
猫たちは、ほぼ毎日そんな感じ。
その「たち」の中にハムスターも含まれている。なんで猫と一緒にハムスターが寝てるのかは、見るたびに不思議になるけれど............。まぁだいたい、そんな感じ。
The END
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