ジョシュアが笑う。ちょっとだけ困った時に見せるその笑い方は、弟たちがケンカしてたり、ホシが興奮しすぎて暴走してたり、撮影中なのに誰かが本気になって収拾がつかなくなった時に見せる笑い方だった。
部屋に戻ったら、ベッドの上にドギョムがいたからだろう。
ムスっとした顔を隠しもしないから、明らかに拗ねている。
「なに？ どうした？」
そう聞いても、ドギョムは足を抱えるだけで何も言わない。
でも怒ってる時に見せる表情もしてるから、ここで問いかけるのを辞めたら後が面倒そうだった。
「ほら、言えって」
そう言いながら隣りに座ってやったら、ドギョムはぷいって横を向く。
でも、「今言わないならもう聞いてやらないからな」とちょっと強気な発言をジョシュアがすると、すぐに動揺するから、やっぱりジョシュアは笑いそうになる。
「シュアヒョン酷いんだよ」
そしてドギョムは結構早めに陥落する。まぁジョシュアに対して怒ってる訳じゃないからだろう。
「何が？」
「クプスヒョンが、俺は参加しちゃダメだって」
「何に？」
「クオズの飲み会に」
ドギョムが必死に、「自分も参加したいって言ったのに、クオズの飲み会なんだから参加はダメに決まってる」と言われたことをジョシュアにチクってくる。
当然ドギョムはジョンハンのところに走って行って、「ハニヒョン酷いんだよ」とすぐにジョンハンにも訴えたらしいが、いつもはドギョムの側に立ってくれるジョンハンが、今回ばかりはなんでかクプスの味方で、「まぁ今回は我慢しろって」と逆に宥められて不貞腐れて、ジョシュアの部屋に来たらしい。
エスクプスとジョンハンからは、今回は絶対クオズで飲もうと確かに誘われていた。
いつも一緒にいるようで、3人で飲んだことはほとんどない。まぁいつだってドギョムだったりミンギュだったりが嬉しそうについてくるからだろう。
「97ラインだって、自分たちだけで飲むことがあるだろ？」
「あるよ。でも別に、一緒に飲みたいって言われたら全然どうぞって言うよ。ダメだなんて言わないよ。なんだよ。シュアヒョンも俺が来ちゃダメだって言うのかよ」
ムスっとした顔が、本格的に傷つくぞみたいな顔に変わっていく。
なにをそんなことで......みたいなことで、ドギョムは本気で傷つくことを知っているから、そんなドギョムを見て、ジョシュアが笑う。
「俺が、お前にそんなこと言う訳ないだろ。クプスには俺が聞いてみるよ」
頭をポンポンと叩いてやれば、「うん」って頷くドギョムはジョシュアのベッドから動こうとしないから、それはすなわち『待ってる』ってことなんだろう。
ジョシュアはやっぱり笑いながらもエスクプスの部屋を訪ねれば、そこにはジョンハンもいた。
「あぁほらもう、シュアが来ただろ」
来ることを予想していたかのようなエスクプスもまた、唇を尖らして怒ってる。
ジョンハンが笑って「そりゃ来るだろ。どうせドギョムがシュアんとこに行っただろうし」と言うから、こうなることは判っていたんだろう。
「アイツが拗ねてるだろ。別にいいだろ？ ドギョムが一緒だって」
そう言えばエスクプスが、「俺らそう言って、何年クオズだけで飲めてないと思ってんの？」と言ってくるけれど、本当に3人でっていうのはきっと片手で足りるだろう。
「なに？ 大切な話？ なら今言えよ」
そう言えばさらにエスクプスはムスってしてたけど、「譲ってやれよ」とジョンハンが言うから、ジョンハンは最初からそうなるだろうと思ってはいたんだろう。
もちろん大切な話なんてなくても、クオズで飲みたいっていうエスクプスの気持ちも判る。だけどそれ以上に、「ドギョムがあのまま拗ねたら、どうするんだよ」と言ってやればエスクプスだってセブチの統括リーダーの顔を覗かせる。
「アイツ、そんなに怒ってんの？」って。
まだ拗ねてる程度だって教えてやれば、エスクプスが少しだけホッとする。そこにジョンハンが畳みかけるようにして「別に、俺ら3人だけじゃなくたって、楽しいしいいじゃん」と説得しだす。
どう考えてもエスクプスが拗ねるのと、ドギョムが拗ねるのでは、ドギョムの方が長引くし落ち込み具合も深いから。
本当ならここで、『お前がクオズの飲み会を久しぶりだとか自慢するから悪いんだろ』と言ってやりたかったけれど、そこはグッと我慢する。それを言ってしまえばエスクプスのことを宥めてるジョンハンまでもが怒り出しそうだから。
ジョシュアは部屋に戻ってドギョムに、「全然大丈夫だったよ。エスクプスに揶揄われただけだろ」と言いつつ、食べたいものはなんだと聞いてやる。
参加しても良いと聞いて半分ぐらいは浮上しただろうが、あとは食べたいものや飲みたいものや行きたい店の話で浮上して、カトクでクオズの飲み会に参加するって自慢して、ミンギュあたりに「え？ 俺も行きたい」とか言われる頃にはいつも通りに笑ってるドギョムがいた。
多少は面倒ではあるが、そこも含めて可愛いからしょうがない。
店を予約する頃には念の為とカトクで聞けば、俺も行く俺も行くって手があがるから、結局ただの飲み会になる。
「お前らが行けるのは俺のおかげだからな」
ドギョムがそう言えば、「なんでそれがお前のおかげなんだよ」とミンギュがやり返して、またしてもケンカがはじまるけど。
とりあえずそれでも、95ラインは集まって乾杯をする。それぐらいはしておかないと、エスクプスが今度は本気で拗ねるから。
いつだってこうしてクオズの飲み会は賑やかで、結局3人で飲むのはまた今度ってことになる。
でもエスクプスもジョンハンもジョシュアも、弟たちが笑ってるのを見ながら飲む酒が一番美味いとも思っているから、別段問題はない。
The END
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