妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

ぼろぼろ

 

全員満身創痍なのは、今日がはじめての団体練習だったから。
フォーメーションをはじめてあわせる時は、音に乗って数歩下がるってだけでも危険で、ぶつかりそうになって、時にはぶつかって、結構本気で痛いけど、それ以上にぼろぼろになるのはメンタルだろうか。

毎回「いやできるこれ?」って誰かが呟く。
それでも「俺らならできるっしょ」って、やっぱり誰かが呟く。
95ラインのヒョンたちは、「俺ら、今日が命日かもよ」と言いあって、それでも重い腰をあげる。
こんな時96ラインはいつだって飄々としてて、大変さは滲ませもしないけど、それでもやっぱり疲れてるしヘトヘトなのは、休憩の時には全員がへたってるからよく判る。
それに比べてマンネラインはなにやら騒がしい。ディノはまだまだ体力があるのか笑ってるし、踊ってるし、揶揄われれば受けてたってと忙しい。そんなディノの失敗した時のマネをして休憩中にも踊ってるスングァンだって元気だ。バーノンは何かが気になるのか、考えながら歩いてる。途中スングァンに捕まって絡まれて「やめろよ」って怒ってもいたけど。最終的には一緒に笑ってる。
そんなマンネラインや、ヒョンたちを見ながらも、鏡前に並んで座って大人しくしてた97ラインの3人だったけど、疲れたから大人しかったかというとそうではなくて、ちょっと不穏な空気が流れていたから。

「なんで? 約束したじゃん」と言ったのはディエイトで。
「約束はしてたけど......」と言ったのはドギョムで。
「でも、今日のこれの後って、あり得なくない?」と言ったのはミンギュで。

3人は、次に3人が揃った時に時間が空く時があれば、一緒にご飯と買い物に行こうと前から約束をしてた。
当然ながら3人揃うことはよくあっても、まとまった時間が空く時は案外少ない。
だけどはじめての団体練習はメンタル的にも体力的にもヤバイことが判ってるから、半日ほどの空き時間が設けられていた。普段なら、十分にご飯を食べて買い物に行ける時間ではあるけれど、多分今日は全員倒れてるはずで............。

「なんで? 約束したじゃん」と、また言ったのはディエイトで。
「うん、約束はしたよ。でもさ」と言ったのはドギョムで。
「いやでも絶対無理だと思う」と言ったのはミンギュで。

ヒョンたちや、逆にマンネラインが相手だと、ディエイトは優しく笑って「しょうがないよね。そういうこともあるよ」とか言うことが多いのに、なんでか97ラインだけになると、ディエイトは結構な確率で頑固になる。
きっとチングってそういうものって思っているんだろう。

チングには何を言ったっていいんだってと教えた気がするドギョムも、チングには全部ぶつけたっていいんだってと確実に教えたミンギュも、ちょっと後悔するのはこんな時かもしれない。

「なんで? 約束したじゃん」

もはやそれしか言わないつもりなのか......って感じのディエイトの横で、ドギョムがちょっと緊張してる。絶対コレ、ケンカになるパターンじゃんと思ってるから。
そう思ってたらちょっとムッとなったミンギュが、「だから、時と場合だって」と言い出して、空気は確実に悪くなる。

楽しい雰囲気だと寄って来るマンネラインは、空気を確実に読むのかこうなると絶対に寄ってこない。だけど気にはなるのか、遠くからチラチラとは見てくる。
絶対に気づいてるだろう96ラインは、面倒ごとには関わらないとでも思ってるのか、全然気づいてませんって顔をしてこっちを見ようともしない。
それこそ昔はどんな時でもジュンだけはディエイトを気にして心配顔をしてたってのに、最近では97ラインのことは97ラインでどうにかするだろって感じでどこ吹く風。

ドギョムの頼りは、いざとなったら絶対に助けてくれるはずの95ラインのヒョンたちだというのに、見れば95ラインは死にかけている。
全員ぼろぼろなんだからしょうがないけど、ドギョムは必死にジョンハンに視線を送るのに、もはや水分補給すら体力が尽きかけて大変そうだった......。

「............なんで? 約束したじゃん」

やっぱり同じ言葉しか口にしてないディエイトだったけど、雰囲気はちょっと変わったかもしれない。小声になったし、強気な口調が控えめになったし、なにより普通に座ってた状態から、膝を抱えて小さくなってるから。
どうやら強気モードを押し殺して、哀しみとか切なさを表現しているらしい。

チングなんだからそんな儚さをアピールしたって意味ないじゃん......と言えればいいが、言葉がまだ拙かったころからの付き合いで、誰よりも強くなった今だってチングだけどカワイイと思ってしまうディエイトだから、そうなるとドギョムだってミンギュだって勝ち目はない。

「じゃぁとりあえず、次の休憩の時にもう一度話し合おうよ」とドギョムが言う。
「自力で歩けないとか、立てなかったら、諦めろよ」とミンギュが言う。

そう言えばディエイトはニヤリと笑って、「そんなの大丈夫に決まってるじゃん。俺ら、セブチなのに」と言う......。
もう確実にディエイトの作戦勝ちだったけど、ちょうど休憩も終わりでそれ以上は文句も言えなかったドギョムとミンギュだった......。

そして当然次の休憩にはさらに全員がぼろぼろになってたっていうのに、ディエイトは楽しそうだった。当然練習後に出かけるつもり満々だったからだろう。
ぼろぼろ過ぎて起き上れないドギョムの肩をジョンハンが叩いていく。
四つん這いになって起き上がれないミンギュの横にはジュンが来て、「悪いな」って声をかけていく。

2人とも、いやいや、どうせならディエイトの方に声をかけてくれよ............と思っていただろうが............。
そして練習終了後、ぼろぼろを通り越してずたぼろになったドギョムとミンギュを連れて、ディエイトは楽しそうに出かけて行った。

「とりあえず食事しよう。それから、行きたかったセレクトショップをハシゴしよう」

ディエイトの声は物凄い楽しそうだったけど、その後から「食事だけで限界かも」ってドギョムの声と、「セレクトショップは1つだけでどうにか」っていうミンギュの声が聞こえてきて、それはそれは物悲しそうだったとか............。
いやでも結局、ディエイトの願いは全て叶いそうだけど。

 

The END
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