「誕生日プレゼントは何がいい?」
スングァンが堂々と、誕生日当日に聞いてきた。背中に何か隠してるのは丸わかりで、欲しいものは絶対当たってるっていう自信があるんだろう。
でも絶対当てられない自信はバーノンにだってあった。だって本当は『お前』って言いたかったのに、グッと我慢して「時計」って言ったから。
エスクプスの高い時計を見て、カッコイイなって言ったのを見られていたのも知ってるし、自分が時計をプレゼントするから皆はそれ以外にしてって、スングァンがメンバーにもマネヒョンにもスタッフヌナたちにも頼みまくってたのを知ってる。
「そんな高い時計をプレゼントしようなんて、簡単に思うかよ」
って、ウジが言ってたことすらバーノンは知ってる。
いつだってボーッとしてて、人とは違う時間軸を生きてて、天然で。
自分のイメージはちゃんと理解してるけど、ボーッとしてても見てるし聞いてるし。物事を理解するのは遅いけど、最終的にはちゃんと理解する。
「やっぱりね」
嬉しそうに目の前のスングァンが笑う。それから自分の身体の後ろから、誰もが知るロゴの紙袋を出してくる。
「バカじゃん。誕生日プレゼントに、高すぎるだろ」
「そんなことないよ。特別だもん。誕生日だし」
たくさん稼いでる。それだけの努力もしてるから、気にすることはない。といっても、そんなスングァンがちゃんとお小遣い帳をつけてるのを知ってる。きっとその時計を買うために、自分の欲しいものは我慢したんだろうことも。
「こんな高いプレゼント、今回で最後だからな」
そう言ってスングァンは笑うけど、きっとバーノンが何かを欲しがってると知ればいつだって頑張ってくれるだろう。
「お返しに困るだろ」
「喜んでくれるだけでいいんだよ」
その言葉通り、時計をつければ早速スングァンは写真を撮りまくっていた。
「何が欲しい?」
そう聞いても笑ってばかりで、「来年の誕生日までに考える」って言う。
バーノンが金銭面にシビアな生活を送ってることを知ってるからだろう。
「来年は遠いじゃん」
そう言えばスングァンが冗談ぽく、「じゃぁポッポしてよ」って左頬を差し出すから......。
覗き込むようにして口に触れるだけのキスをしたら、物凄い驚いて飛びのいて、口を両手で抑えて慌ててた。
「全然足りないだろ? 今みたいなポッポじゃ」
そう言えば、スングァンが顔を真っ赤にして逃げてった。
でも時計を返せとは言われなかったし、怒られもしなかった。それでもしばらくは何を警戒してるのか、近づいてはくれなかったけど。
The END
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