その話があった時に、母親の顔が浮かんだけれど、即決はできなかった。
今が簡単に移動できない時期だからってのもあるし、正直怖かったのもある。
当然頑張ってみたいとも思ったけれど、みんなの顔も浮かんだ。
最初に呼び出されたのはジュンと2人だけで、思わずお互い顔を見合わせたほど。
全員でも話し合うとも聞かされていたから、話が決まるにしてももう少し先だと思っていたのに、「向こうでの仕事のフォローも、当然ちゃんとしてくれるんですよね?」ってエスクプスが代表して尋ねれば、会社側からはまだ予定も大分含むけどって話だったけど、それなりなスケジュールが示された。
「賛成」
そう一番に言ったのはミンギュで、「やっと家族に会えるじゃん」って喜んでくれたのはドギョムで、「行っといで」って笑ってくれたのはジョシュアで。
反対なんて全然なく、悩む素振りもなく、「お前たちなら大丈夫だろ」ってユンジョンハンが言えば、ウジが当然のように「かましてこい」とか言うから、思わず笑ってしまった。
自分たちにだって少なからず影響が出るはずなのに、「俺ら、13人もいるんだから、半分減ってもまだそこらのグループよりも多いかもしれないんだから、2人分ぐらいはどうにかなるって」って大雑把なことを言ったホシの言葉に、全員で笑う。
少しでもチャレンジできるなら、それがジュンとディエイトのためになるならって、簡単ではないだろうに、そんな素振りも見せずに背中を押してくれる。
「お土産な」
ウォヌがそう言えば、当然のように弟たちも乗っかって来て、ワーワーワーワー皆で言ってたのに......。
旅立ちの朝、「ディエイヒョン.........」って言いながらやって来たのはマンネラインの3人で、「本当は空港まで送っていきたいぐらいだけど」って言いながらやって来た。
きっと泣かないようにしようと言い合っていたんだろうに、最初に涙腺が緩んだのはバーノンで「なんだよ、お前が俺に絶対泣くなって言ったのに」って文句を言いながらもスングァンも泣き出して、結局ディノも、「辛い訳じゃないよ。全然大丈夫なんだよ。でもごめん」って言いながら泣き出した。
わかってる。大丈夫。ありがとうって言って短い別れの時間を過ごしたけれど、泣かれる予想はすでについていたから、慌てたりはしなかった。
だって旅立ち前夜、チングな2人もバラバラにやって来たのに、情けないぐらい泣いてくれたから。ドギョムは舞台中だから、明日は朝から絶対泣けないからって言いながらやって来て、前夜だからって泣いていいってことはないだろうに、来た瞬間から顔は泣きそうだった。抱きしめあって、お互いがしばらくお互いにしがみついていたほど。
「さみしい。愛してる。コロナめ」
ずっとそう言ってたのはミンギュで、情けない顔と態度で、最後に手荷物の確認をしてる横で、「なんで俺、賛成なんて言っちゃったんだろ」って後悔もしてたほど。
でも2人とも、なんだかんだ言ったって「お前なら大丈夫。絶対大丈夫」って言って背中を叩いてくれる。
だからかもしれない。誰にも負ける気がしないのは。
何も知らない、誰も知らない場所に行かなきゃいけないにしても、その一歩を踏み出す勇気はもう十分に貰った気がするから。
そう考えると、ウジの「かましてこい」っていうのはあながちウソじゃなくて......。
どこだって行ける気がする。帰る場所があるから。
なんだってできる。いつだってできると信じてくれて、愛してるって、言葉も気持ちも涙も惜しまない仲間たちがいるから......。
The END
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