ジョンハンは、タイムマシンをその手に持って、使うかどうかを躊躇したりはしなかった。まぁホンモノだなんて微塵も信じてなかったからだろう。
日本に行った時に、1回3千円もするガチャガチャをやったら大当たりが出て、タイムマシンが当たった。
でも当然信じなかったから、大当たりなんて嘘じゃん。ハズレじゃんって思って随分放置してたそれを海外行く時ようのデッカいカバンから見つけたのはかれこれ2年以上は経過した後で、それが食べ物だったら賞味期限はとっくに過ぎていだろう。
注意書きには、行きたい場所、時を強く思い浮かべて利用することって書いてあった。思いが強くても15分が限度で引き戻されるとも。何があるか判らないので、水着を着てベッドに横になって利用することをお勧めしますっていう謎な文言に笑いつつ、それでも結構真剣に、『7年後、宿舎』って思いながらその片手に入ってしまうぐらいのタイムマシンの小さくゴーって書かれたボタンを押したら、一瞬後には見知らぬ家のリビングにいた。
そこには2階に続く広めの階段もあったけど、一軒家じゃなくてマンションなのは、窓から見える景色が結構な高さのものだったから判った。
いや、7年後の宿舎が驚くほどに豪華なことにも当然驚いたけど、なにより『タイムマシンホンモノじゃんすげぇ日本のガチャガチャ大当たりじゃん俺』ってことに驚いていて、リビング横のダイニングテーブルで飯の途中だったエスクプスが驚き過ぎて固まっていたことには、エスクプスが「嘘だろ」って言うまで気づかなかった。
「なに? 何食ってんの?」
7年後に来て気になったのは飯の内容って訳でもなかったけれど、近づいて覗き込んでみればそれは普通に出前したんだろうなっていうチキンとかで、宿舎の豪華さに反比例したそれを見て、思わずジョンハンは「ショボ」って呟いていた。
「お、お前。なんで、いつから」
驚いている割には、エスクプスは目の前にいるジョンハンが今とは違うことに気づいていた。
「なに? そんなに今の俺って、老いぼれてんの?」
そう聞けば、「いや、今のお前も当然キレイだけど、今は髪が長いから」とエスクプスが嬉しいことを言ってくれた。
「なに? 俺また髪の毛伸ばしてんの?」
「兵役終わってから、切ってないから」
「うへぇ。凄いな俺」
15分なんてあっという間。
驚いてるエスクプスにガチャガチャを当てたことを説明するのが精一杯だったかも。エスクプスは半信半疑なりにも「宿舎見てくか?」と言ってくれたけど、「いや、いつかの楽しみにとっとく」と言えば、「そうだな」って笑ってくれた。
「お前も変わらないじゃん」って言ったのが最後で時間切れ。
あの宿舎には何部屋あって、何人が住んでてなんて全く判らなかったけど、エスクプスが今と変わらず幸せそうだったから、きっと大丈夫だろう。
戻って来たらリビングにいたはずなのになんでかスングァンのシャワー中の場所に出たらしく、びしょ濡れになったしスングァンには変態呼ばわりされたけど、ちょうど頭を洗ってて目を閉じてたらしいスングァンは、ジョンハンが扉も開けずにそこに現れたなんて気づかなかった。
いやでも、次の時には水着来てベッドに寝てから試そうとは、真剣に思ったジョンハンだったけど。
あぁそれからもちろんエスクプスには、「お前1人の時にももっと良いもん食べろって」とも伝えたけれど、これは性格だから仕方ないかもしれない。
The END
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