妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

指輪物語

指輪を2つ、してた人

それは映像に残ってる。
別に狙った訳でもなかったし、当然わざとでもない。
だけど今にして思えば、過去の自分をちょっとだけ誉めたくなる。だってやっぱり、面映いけどその時のことを思い出せば嬉しいし、自慢だし、強気の自分も嫌いじゃない。

でもあの日の前日、ジョンハンは思いっきり泣いたけど......。

それはちょっとふざけたエスクプスのせいで、指輪を外してシャワーをしたはずなのに、置いてた場所にそれがなくて、一瞬時が止まったんじゃないかってぐらいに驚いて、それから思った以上にショックで、泣きそうになって。でも外したつもりになって実は嵌めてたんじゃないかって気にもなって。

自分の行動を必死に思い出しながらも狭い空間をウロウロとしてたジョンハンが、とうとう諦めてリビングに戻ってきたら、楽しそうに笑ってこっちを見てるエスクプスがいて、「ヤーッ!」って一瞬で沸点に到達したのに、その手の中に自分の指輪を見つけて、安心しすぎてその場に座り込んだジョンハンは、そのまま泣いた。

慌てたのはエスクプスで、「な、泣かなくたっていいだろ」って言いながらも駆け寄ってきて指輪を返してくれて謝ってきたけれど、許すとか許さないとか以前に、あんまりにもホッとして、無くしたかもって思った瞬間には怖くて。自分の足元の不安定さに改めて気づかされて。

きっと今なら、「あ、俺失くしたわ」ぐらいで笑ってられるかもしれない。
でもまだまだ自分がちゃんとやっていけるかどうかも判らなくて、13人の1人で居続ける自信もなかった頃で。

「な、なんでお前、そんなひどいことすんだよ」

落ち着いてからもしばらく泣いてたら、エスクプスが水を持ってきてくれた。
当時は毎日必死に踊ってるのに、それでも毎日体重計を気にしながら水すら満足に飲めなかったはず。

「泣いた分は補給しろって」

そうエスクプスは言ったけど、首を振って拒否した。
でも結局何がどうなって、自分の指に指輪が2つあったのかは、正直忘れてしまった。
謝り続けたエスクプスが、差し出してきたはず。

「いいよ。俺の分もしてても」

って言われたのだけは覚えてるから......。
次の日目覚める前に、誰かが「映像撮ってるから」って言ってまわってた時には、『あ、やべ』って思ったけれど、全部の映像が使われる訳もないし......と開き直ったら、思いっきり使われていた。

その当時の映像スタッフたちが、今ほど真剣じゃなかったのかもしれない。
こんなに長く、続くグループとも思われてなかったんだろうし。
今はちょっとでも匂わそうものなら、すぐにチェックが入って指摘されるってのに。

 

 

指輪を1つも、してなかった人

時々一緒のベッドを使う時、ジョンハンが人の手から勝手に指輪を外していく。
それを自分の指にして、「指輪2つ。今ならもう絶対映像スタッフにNGくらうよな」って笑う。

よっぽどあの時、指輪2つした状態で映像に残ってるのが、良い思い出なんだろう。
あんまり、エスクプスにとっては良い思い出ではないというのに......。

だってジョンハンが、泣いたから。
ダイエットを頑張りすぎていて、「痩せすぎだって」と言っても水すら飲まなかったジョンハンは、指輪だってゆるゆるで、だからこそシャワーするにもそれを外してたほどだから。

ふざけてそれを手に取って、リビングで待っていた。
そんなに必死に探してたなんて気づかずに、目があった瞬間には「ヤーッ!」って一瞬で怒ったくせに、すぐにその場に座り込んでしまって、ボロボロボロボロ泣いたから。

指輪がすぐに外れそうになるのが怖いって、ジョンハンが言うから、「だから痩せすぎなんだって」って言ったのに、ジョンハンは普通に「でももう少し痩せたら、ほら、薬指に入りそうだから」って言う。

「大丈夫。まだ頑張れるから」

食べたって吐いてる時があることも知ってて。
あぁだから咄嗟に自分の指輪をジョンハンの薬指に嵌めたのに、そんなことは、今のジョンハンは覚えていない。

「泣いた分は補給しろって、お前が水を飲ませようとしてきてさ」って、覚えてるところもあるっていうのに。

ずっと一緒にいるから大丈夫。俺たち、ずっと一緒だから。
そう何度も言ったはずなのに、そんなことは忘れさられてた。

自分がしんどい時にはジョンハンが支えてくれて、ジョンハンが苦しい時には自分が支えて。そこにジョシュアも参加して、三人で支え合ってきたけれど、さすがにまだまだ各自が必死だった時だったから、支えきれなかったんだろう。

それでも指輪を2つしたジョンハンは、安心したのか嬉しそうに笑ってた。
返せとも言えなくて、撮影前には取り返せばいいかと思っていたら、朝からカメラがまわってた。

きっと今なら怒られたかもしれないけれど、当時だって管理はされていたけれど手厚くはなかった。今ほど事務所にとっては、大切な存在でもなかったんだろう。

全然大した話でもなくて、そこには愛だとか、恋だとか、駆け引きだとか。そんなものは一切存在してなくて。当然のように何か約束があった訳でもない。未来をともにすると、誓ったりもしてない。

それでもいつの間にかジョンハンにとっては、特別な思い出になっていたけど。

 

 

指輪の存在に、気づいちゃった人

ウォヌは多分、布団からジョンハンの手が見えた瞬間ぐらいには、それに気づいた自信がある。

楽しそうにカメラの前にいて、ジョンハンやエスクプスのことを起こしてまわってたスングァンは全然そんなこと気づいてもいなかったっていうのに。

ウォヌは思わずホシとジュンと視線で会話してしまったほど。1人ウジだけが『だから?』みたいな顔をしてたから、もしかしたら二人の関係を、ずっと前から知っていたのかもしれない。

ジョンハンの右手には、小指と薬指に指輪があって、結果は判ってたけど思わず誰の指に指輪がないのか気になって、ウォヌはジョシュアの手を掴んで見てしまったほど。

すぐにその意味を察したジョシュアは笑って「俺はしてるって」と言ったから、やっぱりジョシュアもそのことには気づいていたんだろう。

ホシは凄く羨ましそうに、指輪を2つしてるジョンハンの手を見ていて、その後ウジに何かを話しかけていたけれど、ウジにはあっさりそでにされていた。

「ヲヌヨン見た?」

そう言って話しかけてきたのはミンギュで、なんのこと?って顔をして誤魔化した。だってミンギュに俺たちもとか言われても困るから。まだ自分にはそこまでの覚悟はないから。

そう考えたところで、あぁ、覚悟か............とちょっとしみじみした出来事。
大人になるって、そういうことか............なんてことまで思ったりもして。
まさか全然そんな色恋的な話じゃなかったなんて、後から聞いて逆に驚いたほど。

たぶんあの日のあの指輪に気づいちゃった人にしてみれば、結構な衝撃だったというのに。

それにホシはウジに大分長いことお願いしていたはず。向こう十年の誕生日プレゼントを諦めるとも口にしていたけれど、「俺、お前にプレゼントやる気なんて元からないけど?」っていうウジの言葉に泣いていたはず。

でもその後もずっとしつこくしつこく頑張ったせいか、ホシは指輪を2つすることもなかったし、ウジに2つさせることもなかったけれど、どうやらお互いの指輪を交換することには成功したらしい。

タニタしながら自分の指輪を見てたから、すぐに気づいたけれど......。

 

 

指輪のあれこれに、全く気づかなかった人

 

「あれ? ハニヒョンなんで指輪2つしてるの?」

その日、全然、まったく、指輪のあれこれに気づかなかったからこそ、ディノは真正面からジョンハンに、そんなことを聞いていた。

寝て起きて思いのほかスッキリしたからか、前日に泣いたことなんて滲ませもせずに、ジョンハンは慌てることもなく、ニッコリ笑って「あぁコレな。いつもはちゃんとしまってるのに、昨日はしまい忘れてさ」ってさも普通のことのように答えてた。

意味が判らないって顔のディノに、「いつもしてるのはレプリカじゃん。ホンモノは滅多に出してこないけど、時々はつけてやらないとな」と、物凄いさらりと嘘をついていた。

「嘘だぁ。俺持ってないよ。2個も」

騙されないよとディノが言うのに、「あぁ、マンネラインは無くしそうだからだろ? ガキにそんな高いの渡せないだろうし、お前らはレプリカに決まってるじゃん」と言われ、素直なディノは結構簡単に騙されていた。

ディノはジョシュアを捕まえて、指輪見せてって頼んでた。それからジュンを捕まえて。ディエイトを捕まえて。

「今、どっちの指輪してるの?」

たぶん最初にドギョム当たりを捕まえていれば、問題はすぐに解決したかもしれないが、ジョシュアはさらりと「大切な方」とか答えるし、ジュンは「あっちの方の」とかって答えるし。ディノがますます騙されたってしょうがなかった。

当然ディノはマネヒョンのところに行って、「俺もほんものが欲しい」ってお願いしたけれど、頼まれたマネヒョンだって困るだろう。だってニセモノもホンモノもないんだから。

当然ながらほんものの指輪なんて出てくることもなかったから、ディノはマンネラインなバーノンのところに言って、「俺たちのレプリカなんだよ」って言ったのに、バーノンは「へ~」って話を聞いてるんだかいないんだかっていう感じ。多分意識が全然こっちを向いてないからだろう。

当然ディノはスングァンのもとに走る。小競り合いを毎日繰り返してはいるけれど、マンネラインで結束すれば、なかなかどうして、結構なタッグを組めるから。
だからスングァンにも「俺たちのレプリカなんだよ」って言ったっていうのに、「俺はこれが気に入ってるから、これでいいや」とスングァンは言う。

ホンモノとかニセモノとか以前に、自分のものを大切にする......。スングァンはそう、そんな性格だったから......。

それからも大分長い間、ディノは一人で「ホンモノの指輪を手に入れるぞ」と頑張っていたけれど、当然そんなことは、誰も知らなかった。だって嘘をついたジョンハンですら、忘れていたほどだから......。

 

 

指輪を失くしてしまった人

「ガーン」

と。言ったのはバーノンだった。
指輪を失くしたことに気づいたから。

「あ、やべ。スングァニにまた怒られる」

はじめて指輪を失くした時、「あ、どこ行ったんだろ?」っていう程度だったバーノンの横で、真っ青な顔して卒倒しそうだったのはスングァンで、「俺の指輪誰か知らない?」って言いながらもまだ探し始めてもいなかったバーノンを捨て置いて、スングァンが部屋中を探しまくったことは言うまでもない。

 

 

根性でスングァンが見つけること数度。
後から見つかること数度。
そして見つからなかったこと、一度。

そのたびにスングァンは怒ったり、泣いたり、バーノン以上にショックを受けたり凹んだりと忙しい。

「お前また失くしたの?」

ってジョンハンは笑って、怒りすぎて震えてきてるスングァンに対して「たかだか指輪だろ? 俺たちの絆は、指輪があるからって訳じゃないだろ」って宥めてくれるからありがたい。

「俺だってショックなんだよ。いつも気持ちは慌ててるけど、それ以前に横でスングァニが物凄いショックを受けて大慌てしてるから俺のが目立たないだけで」

必死にそう言えば、メンバーたちが「判る」って笑ってる。
でもそんなメンバーの笑いなんて全然聞こえてないのか、スングァンは勝手にバーノンのスマホを弄りはじめ、歩いた場所をトレースできるアプリを起動して、バーノンの動いた場所を逆に辿っていくという、気の長いようなことをはじめようとしてた。

でも止めたって、スングァンは納得するまでは諦めないから。
世界で13個しかない指輪だけれど、バーノンがよく失くすから、撮影用にと予備がつくられていたりして......。
だから慌てる必要はないんだけれど、スングァンはいつだって、最後まで諦めない。
そうしてやらないと、指輪が可哀想だからって真剣に思っているから。

いやでも最近は「ボノニの指輪にはGPSを埋め込んでくれ」とか、物凄く真剣な顔でスタッフヌナたちに訴えていたりするんだけれど............。
さすがにそれはバーノンが嫌がるだろうと相手にしてくれないらしいが、実はそれでも別にいっか......と思っているバーノンだったりして............。

 

The END
5039mji