スタジオの中で適当に寛いでいる時に、最近入ったばかりのマネヒョンがカメラ片手にやってきて、「ちょっといいですか?」とジョンハンにカメラを向けた。
なんのための映像を撮るのかは知らないが、「エスクプスさんを一言で、お願いします」と言われ、ジョンハンが真面目な顔して「エロイ」と言い切った。
「いや、チングとか、そういうので」
「え? なんで? 自分の思った奴じゃダメなの?」
「いや、エロイはちょっと」
どうやら「エロイ」はダメだったらしい。
ジョンハンが、うぅぅぅぅぅぅんって言いながら、「エロイ」以外を必死に考えているが、いやいやそこは軽く「頼りになる」とか「頼もしい」とかでも、全然いいはずなのに。
「絶妙にエロイ」
なんでか「エロイ」の前に「絶妙に」をつけたジョンハンだったけど、そもそも「エロイ」以外でと言われたってのに。
最近入ったばかりのマネヒョンじゃぁ、そこで諦めるしかなかったんだろう。
「ぁりがとうございました」
ちょっと小声でお礼を口にした、とっても残念そうなのが丸わかりのマネヒョンを、「わかった、わかったって」と復活させたのはジョンハンだったのに、じゃぁ......とばかりに言ったのが、なんでか「そこらの犬よりカワイイ」だった。
「いや、そこは少し譲ってもらって、ただのカワイイで」
「え? なんで? そこらの犬よりカワイイんだよ? プラスってんだよ?」
「いや、プラスらないでください」
なんでか微妙なところで言い合っているが、折り合いはつかなかったらしい。
マネヒョンがまたもや「あぁ、ぁりがとうございました」とか哀しそうに言うもんだから、ジョンハンが「わかったわかった」とまた引き留める。
そして次に口にしたのは、「極まれにカッコイイ」だったりして......。
「まれ」でも微妙なのに、そこに「極」までつけられちゃうと、そりゃほとんどカッコイイではない気がしてくるから言葉って不思議だ。
「カッコイイだけでお願いします」
「いや、言い切るには微妙なんだって。だってエロイとかわいいも混ざってるからさ、カッコイイがなかなか全面に押し出てくることがないんだって」
「いや、そこはどうか。ちょっとだけのところを心の中で増幅させてみてください」
ジョンハンも微妙なことを言うけれど、マネヒョンだって負けてない。
そこまできてようやく「で、なんでこれ撮ってるの?」と聞けば、会社からメンバーの良い感じの動画を撮ってくることが宿題として言い渡され、今回のお題は「エスクプスについて」だという。
マネヒョンとしても、仕事上のレベルアップやらスキルアップやらに繋がるのかもしれない。
「いや、それならさ。いきなりジョンハニのとこなんて来ないでさ。基本平和なボノニのとことか行きなよ」
そう言ったのは、最初から横で見ていたジョシュアだった。
ど正論だったけど、「エスクプスのこと」と言われて、それなら同ラインのジョンハンとジョシュアだろうとやって来たという。
ちなみにジョシュアの一言は、「エロかわカッコイイ」だった。
「おぉ、さすが。混ぜればいいのか」と、喜んでるのはジョンハンだけで、マネヒョンは「混ぜられても......」と凹み気味で、結局マネヒョンの考える、良い感じの動画は撮れなかったらしい。
その後マネヒョンは96ラインを攻めたらしいが、謎な行動ばかりするジュンに負け、カメラの前で「ガォ~」とかしか言わないホシに負け、普段通りなウォヌが勝手に不機嫌だと勘違いして話しかけられず、パソコンに向かって目を閉じてるウジが仕事中だと思って近づくこともできなかったとか。ただの昼寝中だったというのに......。
それなら優しい97ラインはどうだ......とも思ったらしいが、あっちにいた、こっちにいたっていう情報は多いのに、その場に向かっても「さっきまでいたのに」と言われるばかりで、どこにいるのか全然捕まらず。
最初からマンネラインにしとけば良かったとも思ったらしいが、スングァンとディノが本気でケンカをしててこれまたそんな雰囲気でもなく、ほわっとしたバーノンに最後の望みを賭けたというのに、「お? クプスヒョン? んん、ヒョンかな?」とほわっと笑顔で全然意味不明なことを答えられ、玉砕しきっていたマネヒョンだった。
そしてなんでか、ジョンハンとジョシュアのもとへと戻って来たマネヒョンが、最初と同じ質問を口にした。もうなんでもよくなったんだろう。
エスクプスさんを一言で......っていう質問に対して、ジョンハンが堂々と「エロかわカッコイイ」と答えたら、なんでか今度は一発オッケーだった。まぁ、疲れたんだろう。
ジョシュアが笑いながらもマネヒョンを慰めていた。
いやまぁきっとそうやって、セブチのマネヒョンも育っていくんだろう......。
The END
1967moji