妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

不思議の国のバーノン

 

空を真っ逆さまに落ちる夢を見た。
普通ならビクってなって目覚めるはずなのに、バーノンは落ちてるな~って思う程度で驚きもしなかったからか、目覚めることもなく、落ち続けた。

「お兄さん変わってますね。普通は落ちてたら驚いて暴れて起きちゃって、落ちてる途中でいなくなる人がほとんどなのに」

そう言って話しかけてきたのは、性格があまりよろしくなく見える、良く言えば個性的な、悪く言えば不細工な、話すネコだった。
ネコが話すと大抵の人は驚くし、そのネコはそれでなくてもニヤニヤ顏だし、やっぱりカワイイとは程遠かったからか、なかなか話しかけても返事なんて返ってこない。だから最初から返事なんか期待してなかったネコなのに、そこにいたのはどうしたってバーノンだったから。

「あ、カワイイ。話すネコだ」

一瞬ネコが、目を顰めた。
それはバーノンが眩しかったからだろう。
どうしたって顏は整っている。目潰しかのごとくキラキラとそりゃ輝いていたけれど、でもそれだけじゃなくて。ネコが思わず目を顰めたのは、見た目以上にバーノンの心がキラキラどころかギラギラと、輝いていたから。

だからネコはちょっと悲しくなった。
久しぶりの人間だったから、「二度と元の世界には帰れないんだよ」って怖がらせてやろうと思ってたのに、目の前にいる人間はまるであの、「北風と太陽」でいうところの太陽みたいな心を持った人間だったから。

「抱いていい?」

今度はネコが、目を見開く。
見る人によっては毒々しい紫色の縞模様にも見えるネコなのに、抱きたいだなんて、人間に言われたのは何万年ぶりか。目の前の人間には自分は何色に見えているんだろう......と、驚いたままのネコはちょっと固まっていた。

「お兄さんには、僕は何色に見えてるんです?」

案外ステキな色なのかもしれないとちょっとだけ期待したネコなのに、そこにいたのはどうしたってバーノンだったから。

「ギトギトした色?」

ちょっとショックそうに、ネコが口を開けていた。
まぁ、その言葉から想像する色合いも微妙なら、さらにネバネバ感も出たかもしれないような、色だったから。
でもバーノンは優しくネコを抱き上げて、嬉しそうに、しつこくない程度に撫でてくれて、思わずネコはグルグルと喉を鳴らしてしまったほど。
それこそ喉を鳴らしたなんて、十何万年ぶりか。
あぁでも太陽みたいな人だから、しょうがないかも。

それはバーノンが誰かに起こされて目覚めるまでの、ほんの一瞬の、出来事......のはずだったんだけど、あんまりにも気持ちいいもんだから、ずっとずっと一緒にいたいと思ってしまったネコだった。それこそ、落ちても落ちてもバーノンが目覚めないのなら、一緒にいたっていいんじゃないかって思ってしまったから。

でも.........。

「ボノナッ! ボノナッ!」
そう声がした。「あ、スングァニだ」とバーノンが嬉しそうに言う。

「ヒョンッ! 時間だよ! 起きてよヒョン!」
そう声もする。「あ、ディノだ」とバーノンがこれまた嬉しそうに言う。

「ハンソラッ! 起きろッ!」
そう聞こえれば、「あ、ミンギュヒョンだ」とバーノンが。

それからも次々と色んな声がして、そのたびにバーノンが嬉しそうにその声の主の名前を口にする。

チェ。ちょっとだけ舌打ちをしたネコだった。
やっぱり太陽みたいに心が輝いている人は、たくさんの人から好かれてるってことだろう。

「しょうがないから、帰してやるさ」

そう言って自分からバーノンの腕の中から飛び降りたネコだったけど、やっぱりそこにいたのはどうしたってバーノンだったから。

「話すネコ、またね」

やっぱり最後までネコは驚いてばかり。「またね」なんて、何十万年と生きてきたけれど、はじめて言われたから............。

真っ逆さまに落ちていたはずなのに、不思議とクルリ。気づけば空を上へ上へと昇ってる夢に変わってた。
起きた時にはほとんど覚えてなかったけれど、なんだか、楽しい夢を見たバーノンだった。

 

The END
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