全員でご飯に繰り出して、ひとしきりおめでとうって口にして、ディノの誕生日を全員で祝って......。ご飯もあらかた食べたから、それこそディノの誕生日だから、ディノとの思い出を語ろう......的な話になったはずだったのに、「じゃぁ俺から」とホシが元気に手をあげたと思ったら、なんでか「学校からの帰り道にさ」って話しはじめたもんだから、全員の頭の中には当然ながら?マークが浮かんでた。
「ヒョン、ヒョンちょっと待って。ディノとの思い出話だよ?」
慌ててスングァンが一旦ホシを止めるも、「そうだけど?」ってホシが言うから、「まぁまぁ話をもうちょっと聞いてみよう」ってことになって............。
ホシは、学校からの帰り道。道端に置かれた段ボール箱の前で固まっていた。
捨て猫とか、捨て犬とかならまだ判るけど、そこで哀しそうに「ガロンガロン」と鳴いていたのは、捨てディノだったから。
「捨てディノッ!」
驚いているというよりは、もはやその単語に「キヨ~」と悶えてるのはウォヌだった。
全員から、それこそあちこちから「作り話かよ」「幻見たのかよ」「夢かよ」とか、色んなツッコみが入ったけれど、それはホシの夢の中の話だったようで、でも俺、結構真剣に悩んだんだよ......とホシが言う。
「いやヒョン。当然拾ったよね? 俺のこと」
夢の話だと知ってはいても、そこは譲れないとディノが言うのに、ホシが「いやだって、マンションなのに、ガロンガロン鳴くのは無理じゃん」とか言うもんだから、「ヒョン、そこは拾わなきゃ。絶対拾わなきゃダメじゃん」とディノがムキになっている。
いやもはや最初のホシの段階で、ディノとの思い出話でもなんでもなかったけれど、それが有なら......と、次に手をあげたのはウジだった。なかなかに自分から率先して手をあげるなんて珍しいから、全員から「おぉ!」って声があがる。
「いや、そんな大したことじゃないけど、俺もこないだ、ディノのための曲が浮かんでさ、なんでか勢いにのって瞬殺で一曲できあがって、すっげぇいい曲できた~って、夢を見たわ。なんか壮大な曲だったんだよなぁ。忘れたけど」
あちこちから「そりゃ残念」「どんな曲だったのか覚えてないのかよ」「また夢かよ」って声があがるけど、今度も唯一ディノだけが、「ウジヒョン、ダメじゃん。ちゃんと覚えとかないと。起きた瞬間に何かメモった? 印象とか、タイトルとか、リズムとか、歌詞とか。そういうの」って必死だったけど、「いや、今思えば俺もガロンガロンって感じだったかも」とか適当なことを言われてた。
当然全員でなんだか面白くて大爆笑。
ガロンガロンにハマったのか、ウォヌが一人で「ガロンガロン」とモノマネをして喜んでたけれど、全員からは放置されていた。
「じゃぁ次俺~」
そう言って手をあげたのはジョンハンで、すかさずジョシュアから「夢見た系はもう無しだからな」とけん制されて、「なんでだよ」とムッとしていたけれど、「まぁ俺のは夢の話じゃないけど」とも言っていた。
ここでようやく、ディノとの良き思い出話的なものが出てくるんだと全員が思ったのに、結果、全員で大爆笑する系だった。
ジョンハンが先日「ぴえん」を覚えた時に、ディノがひどく羨ましがって、それならと「ぴえん」の進化系があるんだとジョンハンがディノに教えたのが、何を間違ったのか「ぱおん」じゃなくて「ばふん」だったってはなし。
ディノは当然ながらカワイイんだと信じて「ばふん」って使ってみたけれど、「馬糞?」って日本語の先生に聞き返されて、微妙な沈黙の後に大爆笑され、意味も教えてもらって恥ずかしすぎる経験をしたってはなし。
当然ながら、「ヒョンなんで俺に嘘教えたんだよッ」って顔を真っ赤にしながら怒ってきて、ほんとに地団駄を踏んでいた。
それもまたウォヌに見られて「ノムキョ~」って言われていたけれど。
なんでか「馬糞」にハマったのか、ウジがヒーヒー言って笑って崩れ落ちていた。
ジョンハンが「ミヤネ」と謝りつつも、「だってぱおんもばふんも似てるじゃん」と笑ってる。
もちろん全員で大爆笑して、なんだか思い出話というよりは、ディノでネタ祭り的な話になってきて。
「はいはいはいはい」
負けたくないとばかりにスングァンが元気に手をあげるけれど、「ヒョンはダメッ」とディノから発言を禁止されていた。
やっぱりマンネラインだから、色んなことを知られてるからだろう。
ほぼ家族なセブチの中でしか語れないこととかばかり。
しかも毎回全員で大爆笑して、ウジはヒーヒー言い過ぎて弱ってくし。ウォヌは悶えすぎて死にそうだし。スングァンはあちこち叩きまくってるし、ミンギュは腰砕けてるし、エスクプスは笑い過ぎて泣き始めてるし。
全員でギャーギャー言って、最後の方ではあちこちでみんなが「ガロンガロン」って鳴いた日。それは、マンネなディノが、生まれた日。
The END
2013moji