妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

戀の骸

 

たまたま、エスクプスが一番年上で、二番目が自分だっただけ。
髪を伸ばすように勧められた時だって、強制された訳じゃない。同じようにエスクプスと並ぶようにと言われた時だって、従わなきゃいけなかった訳じゃない。

ただ、お互いにそれが一番判りやすいと思ってもいて。
デビュー前からそれと判るほど、一緒に歩いて、時には手を繋いで。
誰かが喜んでくれて、それが自分たちの人気にも繋がるなら......ってはじめたはずなのに、不意に掴まれる腕に、腰に回されるその手に、視線を交わした数秒に、バカみたいにドキドキして、こんなのまるで恋みたいじゃん......って思ってたのは、多分自分だけで。

クパンの二人が見つめ合っててドキドキした......ってSNSに流れてたとスタッフヌナが言っていたけれど、そりゃそうだろう。だって自分だって本当にドキドキしてたんだから。

もしもクプスが統括リーダーじゃなければ、セブチのことを心の底から愛してたりしなけりゃ、目の前にいたジョンハンの思いに、もっと早く気づいていたかもしれないけれど、二人の恋はセブチが生き残るための手段の一つであって、スタッフやマネヒョンたちもそれを戦略の一つと捉えていたから......。

派手な見た目を裏切って、その恋が初戀だったというのに、ジョンハンの小さな戀は移動車のドアが閉まった瞬間に離れていくクプスの手に、誰もいないスタジオでは遠く離れて座るクプスの姿に、誰かの目がある場所でだけ引き寄せられるその行動すべてに、苦しめられて痛めつけられて、気づけば自分でも助けられないぐらいの瀕死の状態で。

そこには、自分でもどうしようもない、戀の骸が転がっていた。
たぶんそれは小さな小さな骨みたいなもの。
喉に引っかかると苦しい魚の骨よりも、まだまだもっと小さいぐらいの骨。
ただそれが、毎日毎日、積みあがっていったけど。

楽しそうに笑ってても、バカみたいに泣きたくなって。
一緒に必死に練習してても、ふとした時に苦しくなって。
こんなのもう、ただの恋でしかなくて。

ただの学生なら、クラスが変われば、進学すれば、それで終わりだったかもしれない。
だけどデビューが決まってしまえば、後は必死にこの世界で足掻くだけ。少なくとも7年はこのままで。
忙しかったけど、それでも日々、楽しくて嬉しいことも多くて、人気が出ればできることが増えて。弟たちを心配しながら、暮らすこともまた日常となって。

もうどれだけ、小さな小さな骨みたいなものが積みあがったのかも、自分では判らなくなっていた。伸ばされたその手を、握り返すことすら普通にできる。日常。
楽しくなくても楽しそうに笑えてたのに。

手を繋いだ。
誰もいないはずの場所で、手を繋ぐ必要なんてない場所で、自分に向かってまっすぐ伸ばされたその手を、掴んでしまった。
たったそれだけだったのに。

クプスにとっての一番はどうしたってセブチで、その次に弟たちがきて、ジョンハンなんて三番目もいいとこで、仕事が入ってしまえばその順番はさらに後ろにまわされるっていうのに、それでもいいと思ってしまってる自分がいて。
目の前にはようやく、自分のことに気づいてくれたクプスがいて。

たくさんたくさん積みあがった小さな骨の一つ一つを、クプスが一つずつ拾い集めていくように。
移動車の中でも繋いだままの手が、誰もいないスタジオで二人で寄り添って座ってる瞬間が、辛い時には頼ってきてくれるその姿が、これまでと何も変わらない日常を送ってるはずなのに、バカみたいに幸せで、堪えてた時には零さなかった涙が、零れちゃうぐらいに幸せで。

こんなのもう、ただの恋でしかなくて。

 

The END
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