LEFT&RIGHT
ウォヌ、23億持つ男を持つ男
ヘンガレでサイクロンが発生する前から、異変はあちこちで起こってた。すぐにウォヌはそれがウジのせいだと気づいたし、それが引き起こされた原因はホシだってことにも気づいた。
だから直接聞いたら、「こないだ寝込み襲って逆ギレされたから、今回は寝起き襲ったらマジギレされたみたい。はははは」とホシはバカみたいに普通に笑ってた。
「なぁ、今日がめでたくもヘンガレ初ログインって人もいるってのに、ログインした日にサイクロンに襲われるってどうよ。それになんでかログインボーナスで『七人殺しの呪いの仮面』とか出ちゃってるんだけど」
お遊び機能で本日の占いとかだってできるのに、なんでかそこで「今日の運勢：撲殺に注意」とかって出てる。いやどんな占いだよ............。
「ジフナ？ ジフナッ」
しょうがないとばかりに、ヘンガレの世界で呼びかける。
幼馴染なので、大抵のことは理解してる。機嫌が悪すぎてふる無視しようとしてるだろうけど、何を言えば反応するかだって。
「ホシのことは許さなくていいけど、ヘンガレの世界をかき回すのはそれぐらいにしとけって」
「あ？」
「八つ当たりだろって」
「ぁあ？」
どうやらウジは怒りマックスのようで、人の話を聞く余裕がないどころか、反撃に出るほどだった。
「なに？ 23億持つ男を持つ男は余裕だからいいよな」
「あ？」
「人の心配なんかしないで、せいぜい逃げられないようにしとけよ」
「ぁあ？」
幼馴染だから、お互いどこを突っつけばムカつくかも判ってる。
いつだって冷静みたいなウォヌと、いつだって的確なことしかしないようなウジなのに、ホシも含めた三人の中で、子どもの頃から数えると一番取っ組み合ってきた二人だったかもしれない。
当然そんなことは、ホシしか知らなかったけど。
確かに23億持つ男を持っている。まぁ23億はヘンガレの中のお金だけど。
リアルな世界のミンギュは大学に通ってる学生で、バイクのローンを払いながら生きている。バイトはちょっと豪華な客を選ぶようなネットカフェ。
まぁウォヌが運営してる店だけど。
大学の奨学金はウォヌの親の会社が出しているものを利用していたし、バイクを買った店もローンを組んだところも、ウォヌの家の系列だったはず。色んな便宜をはかったお礼に家の雑事をするって理由で一緒にも暮らしてる。
それでミンギュは家賃が浮くって喜んでもいて、きっとこのままいけば、大学卒業後はウォヌの親の会社のどこかに就職するかもしれない。
いつだったかウジに、「いやお前、囲い込みが過ぎるだろ。いつか逃げられるぞ」って言われた記憶もあるけれど............。
確かその時にもウジとは言い合いをしてたはずで、「いつまでもホシがお前のことを追いかけてくれると思うなよ」と自分も言い返したはずで............。
「とにかく、サイクロンは3つまでだからな」
そう言えば「3つまでは許すのかよ」ってウジが笑うから、ウォヌもちょっと笑った。
自分でも「3つまでって」って思えたから。
THE END
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