妄想heaven

SEVENTEEN全員でのドラマか映画が見たいな......

台風の夜のキムミンギュ

 

台風が来ると聞いてはいたけれど、史上最強とは知らなかった。滅多なことでは中止になることがないコンサートの中止が早々に決まったのだから、相当な脅威なんだろう。

カラットたちに申し訳ないと言いつつも、ポッカリ空いた時間に、当然のように仕事に取り掛かったウジ以外はみな、テンション上がっていただろう。

ひどく現実的に動いたのは、ミンギュだけだった。

自画自讃になるけれど、そんな自分がミンギュは嫌いじゃない。さすがに関係者全員、スタッフ全員のことまでは考えられないけれど、メンバー13人分は自分がしっかりしなきゃ……と思ってる。

懐中電灯が手に入る場所を聞きにフロントまでスタッフ達とおりたら、その場で貸してくれた。しかも、高層階は揺れるからと、下にセブチのための部屋まで用意してくれるという。

ただし、13人もいるのに、用意できるのはツインの部屋だけなんですと、物凄く申し訳なさそうに言ってくれた。普段はスタッフ用の部屋として使ってるところで、客室でもないという。

でも一般客にはジムのスペースを開放すると言うのだから、部屋を用意してくれるだけでもありがたい。

それに見せてくれた部屋はシングルベッドが二つに、小さいけれど二人座れそうな長イスがあって、ユニットバスに小さめのテレビと冷蔵庫もあった。そこに簡易ベッドを一つ入れてくれて、さらには床に布団を敷き詰めてくれるという。

懐かしの宿舎のリビングで13人で寝てたことを考えれば、十分だった。

お礼を言って、部屋のカギを受け取って、スタッフが持ってたクーラーボックスに氷も貰って、ペットボトルの水を詰められるだけ詰めた。

準備して来いと言ったって忘れるだろうから、寝るための服と、スマホの充電器を事前に用意して、途中布団を敷くために来てくれた親切なホテルの人に手伝ってもらってベッドを部屋の隅に押しやって、簡易ベッドのスペースを作り、入り口には13人分の靴を脱ぐスペースも確保した。

至れり尽くせり。
一人で完璧じゃん♪って感じ。

それから、事情説明と13人で眠る部屋の場所を伝えに全員のところを回った。

エスクプスの部屋にはジョンハンも一緒にいて、話はすぐに通った。ま、早く出て行って欲しそうでもあったからかも。

ジョシュアは一人で映画を楽しんでいた。とりあえずは今見てるのを見終わるまでは動かないという。それでもジョシュアは案外しっかりしてるから問題はないだろう。

ジュンはゲームをしてたらしく、話半分ぐらいで聞いていたけれど、ディエイトがその分ちゃんと聞いていたから問題ないだろう。

ただ、そのディエイトも揺れるってとこに、目をキラキラさせていたから、逆に降りてこないかもしれない。

いつもテンション高めなホシは、何故かさらにテンションが上がりまくっていて、ドギョムと買い出しに出ていた。

ウォヌは読みかけの本を読んでしまいたいと言っていたけれど、どこで読んでも一緒だと思ったのか、さっさと移動してくれて、手がかからなかった。

それはウジも一緒で、ノートパソコンがあれば、案外どこでも大丈夫なんだろう。最悪停電になってパソコンが使えなくても、ウジの頭の中で勝手に音がなり、それに合わせて言葉が生まれて、曲ができていくらしいので何もなくても大丈夫らしい。

ノートパソコンとスマホだけを手に、さっさと移動してくれたウジだった。

スングァンとディノが、何故か音楽ガンガンかけながら歌って踊ってて、そんななか、バーノンが驚くことに熟睡してた。

部屋を移動しろって言っても、「大丈夫大丈夫! 俺たちが逆に揺らしちゃうかもだし」とスングァンが言えば、「それにそれなら、夜中まで騒いでも怒られないってことだね!」とディノが言い、二人してオォ~と言い合っていた。

もちろんホシとドギョムに電話をするのも忘れない。今どこにいて、いつ帰ってくるのか。事情も話したし、早く帰ってこいとも言った。

仕事としたら、完璧だろう。
やっぱり一人で完璧じゃん♪って感じ。

一時間もしないうちにホシとドギョムは帰ってきた。
一旦は自分たちの部屋に戻ったらしいが、映画を見終わったジョシュアが引き連れてきてくれた。眠ってたバーノンも起こして。
ということで、後は各自が勝手に降りてくるのを待つばかりって感じで、ミンギュだって気楽な感じでみんなと一緒に休んでいて、もう少しで眠りそうだったというのに、電話が鳴った。

出たら「ヒョッ!」って微妙な声。多分ビビって声が出ないんだろう。

どうやらテンション高く歌って踊ってとしていたスングァンとディノの部屋に、風で飛ばされてきた何かがぶつかったらしい。さすがに窓ガラスが割れることはなかっただろうが、一瞬でビビって。ビビってしまえば揺れてる状態にも怖くて耐えられなくなって、二人で部屋の中でしゃがみ込んでいるという。

電話の向こう側から、情けない声で「ヒョンッ。ヒョンッ」と呼ぶ声がする。

「だから言ったのに」

呟いて立ち上がれば、「いってらっしゃ~い」と全員が手を振る。誰一人一緒に行こうと言い出さないのは、ミンギュを信じてるからと信じたい。

エレベーターは使わず、ホテルの階段を地味にあがっていく。

スングァンとディノのもとに行く前にジュンとディエイトの部屋を訪れたら、揺れてるのも承知で「気にならないけど」とジュンが言う。ディエイトも「何もなくて揺れてるなら怖いけど、風が原因だって判ってるし」と気にしてない。

それでも二人とも、腰を抜かしかけてるスングァンとディノを助けながら今から階段をおりなきゃいけない話をしたら、「じゃぁ俺たちも行くよ」とあっさりついてきてくれた。おかげで本気で怖がってる二人を一辺に救出できたかも。

ホテルそのものが揺れてるんだから、そら階段だって揺れる。

ディノはジュンが支えてくれて、ミンギュがスングァンを支えて、階段をおりていく横で、ディエイトは「揺れてるね~」と言いながら手摺も持たずに普通に階段をおりていく。

繊細に見えて大雑把なのはお国柄なのか、それともたまたま、二人して豪胆なだけなのかは謎。スングァンは泣きかけているし、ディノも怯えてるし、「だからさっき一緒に降りれば良かっただろ」と文句を言ったけど、階段の中を突風が吹いて、スングァンが叫んだ声にかき消された。

多分どこかの階の階段へと続く扉が開けられたんだろう。

かなり大変な思いをしたのに、狭い部屋に辿りついた途端に、二人は元気になった。
狭い部屋に全員で寝れるっていうことが、急に楽しくなりはじめたんだろう。

まだエスクプスとジョンハンが来ていなかったけれど、それについては誰も何も言わなかった。

大分遅くなって二人が合流して、十三人で寝た。

ベッドを使ってるのはウジとホシ。それからジョンハンとドギョム。簡易ベッドに寝てたのはディノ。長イスにはジョシュア。後の七人は雑魚寝。

ウジ以外の全員がデカイというのに、どう頑張っても多少は重なって寝ることになる。でもそれも、懐かしいと言えば懐かしい。

一人で大変だったけど、全然大変だとは思えない。自分でも不思議。
スングァンとディノを助けるのも地味に大変だったけど、それでも怒る気にもなれないのが不思議。

いつもは張り合ってくる友達のような弟のスングァンが、頼り切ってくるのもカワイイからかもしれない。

完全に弟なディノが、困ってる時は助けるのが当然と思えるからかもしれない。

ミンギュが頑張ってることを、ウォヌが全部知ってるって顔で見てくるからかもしれない。

キムミンギュがいれば何も怖いものはないと、常日頃からエスクプスが口にしてくれるからかもしれない。

どんなに驚くべき失敗をしたって、ドギョムとディエイトが、笑ってくれるからかもしれない。

全員が寝た頃、停電になったのか電気が消えた。用意してた懐中電灯をつけて、それにもなんだか、完璧じゃん♪っとなったミンギュだった。

 

The END

 

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