「ねぇ、なんでボノニはいつも、スングァニのこと見てるの?」
空気を読まないジュンですら聞かないような事を、ジョシュアがさらりとど直球で聞いてしまった。
多分聞いちゃいけないなんて思ってないからこその素直な質問なんだろう。
周りが固まる中、平気な顔してるのは聞いたジョシュアと聞かれたバーノンだけ。
そして次の瞬間には全員が驚かされた。
バーノンが普通に、「え? 別に見てないけど?」とか答えたから。
場所はニューヨーク。十二人で活動することになって、思った以上に寂しかった数日の出来事で、夜に全員で集まって、スングァンとテレビ電話をした後。
『あ、あんなにガッツリ、しかもたまに舐めるように見てたりするのに、まさかの無意識?』
『いやいや、照れてるだけとか?』
みんなの心の声が聞こえそうなぐらいなのに、言い出したジョシュアが「そうなんだ〜」と、どこに納得したのか軽く頷くものだから.........。
「ホンジス、交代」
謎な交代宣言のもと、ジョシュアを押しのけて前に出てきたジョンハンが、「いやいや、見てるよ。ものすごーーーーく、見てるって」と言い切っていた。
「でも俺、ヒョンのことも見てるよ」
そんな言葉とともにバーノンが真正面からジッと見つめてくるもんだから、顔面破壊力では全然負けてないというのに、ジョンハンが謎に照れて言葉を失っていた。
「ユンジョンハン、交代」
交代宣言をして次に前に出てきたのは、我等が統括リーダーのエスクプス。
「いや、ただ見てるってもんじゃないぐらいの、視線と表情と空気で見てる」
そう言って、どうだと言わんばかりのエスクプスに、おぉ〜〜って感じのメンバーたちだったのに、バーノンが「え? それって、クプスヒョンがハニヒョン見る時ぐらいの、視線の強さってこと?」と嫌味でもなんでもなく素で問い返されて、一瞬でヘナチョコリーダーとなっていた。
「い、いや、俺はそんな、見たりなんて、いつもはしてないし。と、時々は見てるかもだけど、べ、別に、へ、変な意味はないし......」
そしてホシが、「ヒョン交代」と言えば、すごすごと去っていった。
「俺のことを見る時の、10倍は優しいし100倍は愛がある感じで見てる」
ホシがそう言って、「な?」と全員に賛同を得ようとしてる間にも、バーノンが「ヒョンのこと、普段見てないかも」と衝撃的な返答。
もちろんバーノンには攻撃してるなんてつもりはさらさらないし、悪気もない。ダンス練習の時は鏡越しにイヤってほど見てるから、普段はあんまり見ないかも……って程度の気持ちだった。
しかしホシは泣きそうになっていたし、逆にウジは笑いすぎて泣きそうになっていた。
我慢の限界だったのか、ウジが腹を抱えて倒れ込んでいる。その横でウォヌが冷静に「ゼロにいくら掛けてもゼロのままだな」とか言うし、ウジはさらにヒーヒー言いだして死にそうだった。
「クォンスニョン交代」
そう言って出てきたのはジュンで、「見てる」と一言断言。バーノンは気負いもなく、「ふーん、そっかぁ」と一言。
肯定されたらそこで終わりな気がしないでもない。ジュンもそれ以上の言葉が出てこなかったらしく、おぉっ?て感じでキョドってた。
「ムンジュンフィ交代」
そんなジュンを押しのけたのがディエイトで、「愛があるんだよ。その視線に」と断言。今度も微妙な返答だろうと期待してなかったというのに、「愛はそりゃあるよ」とこれまたあっさり肯定されて、全員で「おぉ~」とどよめいたかもしれない。
でもバーノンにしてみれば、同じメンバーなんだから愛があって当然って程度なのかも。
「ハイハイハイハイ」
ディノが元気に手をあげる。
「メンバーだからとか、仲間だからとか、同じ年だからとか、そういうことじゃなくて、世界で一番ってぐらい、愛してるってことだよね?」
ちょっと壮大すぎて、そこまで行くと返答に困る感じ。なのにバーノンはあっさりと、「そうだね。世界で一番かも。でも俺、家族が一番大切だったけど、今ではみんなも当然、俺の一番大切の中に入ってるよ」とか言ってくれるから。
なんとなく全員が嬉しくなったかもしれない。
結局バーノンがスングァンを見てる......って話は埋もれた気がしないでもないけれど、全員が納得しかけた。
そこにミンギュが、「じゃぁスングァンに何かお土産買った人」とか言いながら手をあげれば、それぞれが、当然のように手をあげる。しかしバーノンだけが、手をあげなかった。
「ま、まだ買ってないだけだろ?」
ドギョムが慌てて聞けば、「写真はいっぱい撮ったよ」とバーノンが気にした風もなく笑ってる。
でもお土産はお金じゃないし、数でもないし、見た目でもないし、自己満足になってもいけない。そう思えば、写真でも良いかもしれない。
案外どこにいてもいつも通りなバーノンの存在が、一番かもしれないし......。
ニューヨークから帰った時、スングァンがざわざわした十三人分の雰囲気に、一番喜んでいた。思い出話にも、それぞれのお土産にも。「ただいま」も言わずに空港で買ったお土産を差し出してきた、いつも通りのちょっとトボけたバーノンにも、スングァンは当然のように喜んでいた。
お土産を買った空港は、帰りついた韓国の空港で、お土産はスングァンだって見知ったものだったけど。
でもニューヨークから帰ってきて一週間ほどした時に、スングァンが一番喜ぶことがあった。ニューヨークのバーノンから、絵葉書が届いたから。
そこによく見知った字で、「ただいま」と書いてあったから。
The END
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