一番最初に被害にあったのはジョンハンだった。
「ヒョン、ヒョン、ヒョンッ。真剣に聞くから真剣に答えて」
勢いよくスングァンがやってきて、ジョンハンにそう言ったから。
「お、おぅ」
最初からスングァンの勢いにやられ気味ではあったけれど、質問の内容にもやられたかもしれない。
「やっぱり、絶対、ボノニが一番カッコイイと思うんだけど。ここだけの話しにするから、正直なこと、教えてよ」
「ぉ、ぉお?」
物凄い真剣な顔でスングァンが言う。いつも皆の前でバーノンがカッコイイと言うと笑われるし、からかわれるけれど、いややっぱり本当のところはバーノンが一番カッコイイと皆思っていて、でもネタ的に扱ってるから全員がいるところではそうやって笑うんだよね? ね? ね!ってことらしい。
ジョンハンは勢いに負けて、「そ、そうだな」と言ってしまった。
いやほんとは、顔だけならウォヌみたいなシュッとした顔が男前だと思うし、一番整ってるのはやっぱりミンギュかもしれないし、誰が一番かと言われたら色々個人的な諸事情からエスクプスだと言ってしまいそうになるんだけれど、ただただ勢いに負けたジョンハンだった。
「やっぱり、そうだよねッ」
嬉しそうに、鼻息荒くスングァンが去っていく。
次に被害にあったのはウジだった。
これがホシやディノあたりが「俺が一番カッコイイだろ?(でしょ?)」的に聞いてきたとしたら、一瞬で「いや。それだけはない」と否定してやったと思うけれど、「ヒョンッ。物凄い大事な話だから、今後のセブチがかかってるから」とまで言いつつ聞いてくるもんだから、勢いに負けて「お、おぉ。そう思う」と同意してしまったウジだった。
「やっぱり、そうだよねッ」
嬉しそうに、鼻息荒くスングァンが去っていく。
次に被害にあったのはドギョムだった。
しかもドギョムの場合は出会いがしらに「ボノニが一番カッコイイでしょ?」と聞かれ、「でしょ?」と念押しされ、驚いて頷いたら「やっぱりッ」とスングァンが去っていくという。ただただ事故的な感じだった。
しかし被害にあわなかった面々もいる。
ミンギュは瞬間「いや、ウォヌヒョンが一番だと思う」と言い切ったから。
ディエイトも「ムン・ジュンフィ」と一言。
ゲーム中のウォヌは話半分もちゃんと聞いていなかったから、ただただ「おぉ、おぉ」としか言わず、ジュンはただただ頷いていただけ。多分二人とも興味がなかったんだろう。
好敵手だったのはホシとディノかもしれない。
「ボノニかぁ......」と納得しそうでいて、「いやでも......」と煮え切らない態度でスングァンをイライラさせたホシ。結局は「もういいよ」と先に諦めたのはスングァンの方。
「またそんなこと言って~」と反論しようとしていたのはディノ。しかし日頃からよく言い争いをする二人だったから、「ディノはどうせ俺の言うことを全部否定するとこから入るから聞いても意味ないよ」とスングァン自身が言い出して、「お前には聞かないよ~」と逃げてった。
最後から二番目に被害にあったのはジョシュア。
そして一番最後がエスクプス。
優しい二人も、ジョンハンとウジとドギョムのように、勢いに負けて頷いたタイプ。
「聞いてきたッ」
そう言いながらバーノンのところに戻ってきたスングァンが、「キムミンギュとディエイシ以外はみんな、正直、ボノニが一番だって」と言う。どこが正直なんだか......て感じだけれど、きっとそれはバーノンが一番判っていただろう。
「どうせ、勢いで押し切ったんだろ」
「そ、そんなことないよ」
「だって全員のとこ行ってくる!って出ていってから、戻ってくるまでに時間かかってなさすぎだし。勢いで押し切ったのは確実だろ」
「............ちょっとだけだよッ」
バーノンが一番カッコイイのにと、スングァンはよく口にする。本当に不思議なぐらいカッコイイのに、それを皆が笑うのが、不思議でしょうがない。バーノン本人にもそう言えば、「お前だけだって」と言い返される。
でも正直なことを聞けば絶対、皆が賛同すると思ったから、「聞いてくる!」と全員をまわることにしたのだ。だってほんとに、ほんとにほんとに、ほんとにほんとにほんとに、カッコイイから。
昔は確かに可愛かったけど、いつからか気づけばカッコよくて、気づいてしまえばカッコよくない時なんてなくて。
笑ったって黙ってたって、立ってたって座ってたって、起きてたって寝てたって、歌ってたってラップしてたって、歩いてたって座ってたって、カッコイイのに。しかも声までいいし、優しく笑うその姿もステキだし、元気よく笑ってる姿は眩しいし。
結局、一番の被害者はバーノンかもしれない。
「If you are there it is eden.Please love me.because I love you」
スングァンからの突然の愛の告白。しかもなんだか壮大な感じで。
驚くバーノンの前で、スングァンは自慢げな顔でニコニコ笑ってる。たぶんただただ『俺、英語使ったぜ』と思ってるからだろうけれど、バーノンにしてみればそれはただただ、愛の告白だというのに。
カッコイイと褒めてくれるのは嬉しいけれど、それはもう完全に、惚れた欲目だと思わなくもない。
「ナド」
あんまりにもニコニコと幸せそうな笑顔を向けてくるものだから、バーノンが「俺も」と苦笑しながら返したら、一瞬でパァァァァっとニコニコ笑顔がキラキラ笑顔に変わった。
あぁでも多分その笑顔がカワイイと思うのも、惚れた欲目な気がしないでもないと思う、ちょっとだけ冷静なバーノンだった。
The END
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